■ノースロップ式のステルスはいろいろだ
真正面から。 既に説明したように機体上面に主な構造をまとめ、下側に出っ張る部分を最低限に抑えてます。その上で機体上部側面を傾け横から来るレーダー波を安全な上方向に弾き、同時にコクピットが高い位置に置かれる形になって視界を確保してます。機体下面もステルスの基本に忠実に可能な限り平面に整形されてます。よく考えられた構造と言っていいでしょう。
ついでにタシットブルーと同じ上下バスタブ構造の接合部にあるフチ部分も見といてください。これが角ばった構造なのは薄い板にして反射を無くしてる以上、もはや形状に気を使う必要が無いからだと思いますが、確証は無し。
主翼下にあるのは先に説明した空気取り入れ口。これもステルス対策のため、独特な形状です。
言うまでもなく、空気取り入れ口がこの位置にあるのは高迎角時の空気流入対策でもあり、主翼下面が気流を流し込む板になるわけです。
もう一つ注意して欲しい点は、YF-23では主脚が空気取り入れ口の後方に位置してる事。この機体の主翼がやけにデカいのは空気取り入れ口をここに置いて、さらに主脚収納しなくてはならないから、という面もあったと思われます。
空気取り入れ口前部上面にある変な模様はゴウジン パネル(Gauzing
panels)と呼ばれる部分で、その名の通り、Gauzing
、ガーゼ状の板です。ここに機体上部の排気口に繋がる細かい穴が無数に開けられており、これで機体表面を流れる境界層を強制的に排除しています。
当サイトを読んでる皆さんはご存知のように、物体表面を流れる気流には境界層があり、これは乱流化すると大きな振動源になります。このため従来の機体では機体表面から少し浮いた位置に空気取り入れ口を設けていました。
F-16ではこうして機体表面から浮いた場所に空気取り入れ口を置き、乱流化した境界層を避けていたわけです。
が、とにかく機体全体を単純な面構成にしたかったノースロップの技術陣はこの持ち上げ式空気取り入れ口に代わる技術を求めたのでした。その結果がこのパネルで、境界層を強制的に空気取り入れ口の前で吸い取って消滅させています。
ちなみに似たような工夫をすでにF-4ファントムIIがやってまして、空気取り入れ口前の整流板に無数の細かい穴を開けてます。
これも同じ効果を狙ったものです。なのでYF-23のこの辺りの技術はマクダネルダグラス社の提案かもしれません。
ちなみにF-22では従来通り機体表面から離れた位置に空気取り入れ口を設けたロッキードですが(ただしこれも境界層抜きの穴がある)、F-35では密着型に変更しました。これはDSIと呼ばれる技術を採用した結果で、あの変な形の空気取り入れ口はこのためのモノです。その結果、高迎え角時の空気流入対策が取れなくなったので、大失敗技術じゃないか、と個人的には思ってますが…。
少しだけ上から。
ヌメッとした構造と、胴体上下接合部にあるフチがよく判るかと。
その胴体のフチ部、主翼の前で切り欠きが入ってるような構造になってるのですが、これが何を目的にしてるのか、ちょっと判りません。ついでに主翼が滑らかに盛り上がってエンジン部に繋がる線も見て置いて下さい。この辺り実に美しいなあ、と思います。
ちなみにこの機首周辺のフチはLERXのような高揚力発生装置としての効果を狙っていたはずです。上から見るとYF-23の機首部は楔型なので、このフチ部分は強い角度を持ったデルタ翼に近い構造になります(LERXはフチの部分で渦を発生されてるので、フチ部だけでも一定の効果がある)。F-22の場合は飛行中の映像からその効果を狙ってるとほぼ断言できるんですが、YF-23では限られた映像しかなく、残念ながら断言まではできませんが、ノースロップなら狙ってやってるはずです。
F-22に比べると鼻づらが長いのもYF-23の特徴の一つですが、これもLERX効果を狙った結果かもしれません。ちなみにこの形状、微妙にF-5の面影を感じるのは私だけですかね。余談ですが、YF-23とYF-22の評価試験飛行の段階でレーダーを始めとする電子機器、火器管制装置(FCS)は影も形もまだない、という状況だったので、おそらく中には想定されていた重量のオモリか、仮設の電子機器を積んでいたはずです。F-22の機首部がYF-22から大きく変わった理由の一つがこの電子装置の迷走なんですが、より容積に余裕があるように見えるYF-23だったらこのまま行けたのかなあ、と思ったり。
機首部を下から見上げる。この角度から見るとちょっとSR-71に似てます。 先に見たように機体周辺部のフチは角ばっているため全く滑らかさが無く、まるで別の機体のように感じます。ほとんど接合部が見えない滑らかな表面も注目。これは工作精度もありますが、どうも塗料で塗りこめてしまってる、という面もあるようです。 また、コクピットの位置が極めて高く十分な視界が確保されているのにも注意してください。
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