■幕末に絵を描いて
妖怪の絵でそこそこ有名な人だけに、その展示がありにけり。
まあ、下手ではないのですが、器用だなあ、
というレベルでそれ以上でもそれ以下でもないでしょう。
例えば河鍋暁斎とかと比べちゃうと、児戯にも等しい、というレベル。
お手本があれば、キレイにまねることができるけど、そこまで、
というよく見かけるタイプの絵描きさんです。
自分で何かを生み出すことはなし、人の心を動かすこともない。
ついでに、この絵は本人のじゃないような気も。
さらについでに、私は、この人の子孫の中の一人です。
よって、情け容赦無用。
中で公開されてる建物に、弦が一本の琴が展示されてました。
明治期に流行ったやつで、たしか漱石の「道草」にこれの話が出てたような。
現物は、初めて見ました。
この記念館でちょっと驚いたのが、これ。
先にも書いたように、鴻山は北斎に師事したんですが、
そのとき渡された、とされる“お手本帳”がほぼ完全に残ってるんですよ。
浮世絵画家などに弟子入り、という場合は、お師匠さんが、
“みなさ〜ん、アン、ドゥ、トロゥ、さあ、筆を滑らかに走らせて〜”
とかやるんではなく、基本的には習字のように絵の見本をもらってこれを模写します。
(全員が全員ではないでしょうが、それが一般的)
なので、どんどん似たような絵を描く人が大量生産されてゆくわけですが、
それでも、時々、天才がポン、と生まれてくるわけです。
鴻山は残念ながら天才ではなかったのですが、その代わり、
もらった画帳を後世に残したのでした。
その画帳から、おしどりの描き方指示書(笑)。
細かい指示の中には、色指定などもあり、なんかアニメの設定画みたいな。
これが果たして北斎の直筆なのか、あるいは北斎一門の高弟のような人物が、
入門者用に造ったものなのか、私には判断がつきませんが、
どっちにしても、かなりの画力の持ち主です。
北斎は、晩年、かなりの数の“絵の描き方”の本を残してるんですが、
それらとは、明らかにタッチが異なるので、他人のような気もします。
しかし、これだけの絵が描ける人間がそういるか、という気もします。
まあ、真相は不明、本人じゃないが7割、本人かもしれないが3割り、ってとこでしょうか。
で、この画帳、ここの売店で買えるのですが、3分冊で全部買うと6600円。
悩んだんですが、とりあえず、面白そうな1冊だけ買う。
帰宅してから読むと、やはりスゴイですよ、これ。
…うーむ、無理してでも全冊買っておけばよかったか。
最後に余談ながら、この縁で、小布施に晩年の北斎が来た、という事になっており、
それにちなんださまざまな遺構がこの辺りにはあるんですが、
そっちは、まあ、話半分で聞いておいた方がいいんあじゃないかなあ…、と。
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