■刀犬
後ろを向くとこんな感じ。
168cmしかない私の身長にも問題がある気がしますが、
それでも後方視界はほとんどないと思います。
まあ、先に書いたような運用をされる機体ですから、問題ないのでしょう。
上のキャノピー(天蓋)に線が入ってますが、あれは電線で、
自動方向探知機、ADFからの電波を受けて方位を探るセンスアンテナです。
ただし、これだけではダメで、この下、コクピット後部に
回転しながら受信するループアンテナがあり、
両者のデータをつき合わせて方位を確定します。
ついでにクッション部にうっすらと8117の文字が見えます。
おそらく米軍が使用してた時のシリアルナンバーか何かでしょうか。
そのステキロケット弾、2.75インチ マイティマウスのランチャー部。
セイバードッグ(Saber dog
刀犬)に
マイティ マウス(Mighty mouse
力持ちネズミ)とはこれいかに。
ちなみに、マイティ マウスは1942年産まれのミッキーマウスのパチモン、
というかスーパーマンみたいなネズミのキャラクターです。
これ、空も飛べるし、すさまじいパワーの持ち主なんですが、
狼に襲われた羊を助けたりとか、妙に貧乏臭い活躍が印象的なキャラでした…。
ついでに鉄腕アトムのデザイン、元ネタはマイティマウスのような気が
昔からしてるんですが(足からジェット吹くし)、確証はありませぬ。
飛行中は胴体内に収納されており、発射の時にガコンと下に飛び出して作動します。
ここにも117の数字が見えますね。
F-86Dはノースアメリカンが単座として設計してしまったため、
本来専用のオペレーターの搭乗が必要だった当時の
機載FCS(火器管制装置)が搭載できませんでした。
パイロット一人ですべてをやる必要があったのです。
このため当時FCSの製造を独占していたヒューズ社がF-86D用に
開発したのがE-4火器管制装置で、レーダーも完全に新型とされます。
でもって、そのレーダー部がこれ。
この時代のレーダーは、初めて見ました。
レーダー電波をお椀型のパラボラアンテナで反射して方向性を整え、
さらに戻って来た電波を反射して中央のアンテナ部に収束させることで、
極めて感度のいい構造となっています。
このパラボラアンテナの原理を最初に考え付いたのはおそらくドイツなんですが、
さらにコニカルスキャン、円錐型に電波を打ち出すと、
1点からの観測でも2点観測に近いくらい、
正確に目標の方位がわかる、と発見したのもドイツ人でした。
でもって、このアンテナ、受信部のアンテナがワイングラスのような形で、
おそらくコニカルスキャン方式です。
戦後にドイツのヴルツブルグレーダーを接収して
手に入れた技術じゃないでしょうかね、これ。
ついでに奥に見えてる117の数字が入った
空気取り入れ口のカバーも当時のオリジナルのもの。
前脚回りとか。
脚に取り付けられた赤い棒は、
牽引車で引くときのもので、これもオリジナルでしょう。
が、一番驚いたのは、「く」の字型になってる脚カバーにある注意書きです。
矢印の先のものですが、これは牽引棒の繋ぎ方と、
牽引時の注意が書き込まれたシールで、
F-86シリーズには、ほぼ全ての機体に貼られていました。
朝鮮戦争時の米軍のF-86Fから航空自衛隊のF-86F、
そしてこのF-86Dまで、多くの機体に見られるものです。
ところが、先にも書いたように、
現存機の多くはこの手のものを全て剥がしてから
レストアを行なっているので、まず見る事ができないものの一つです。
私は現物を初めて見ました。
非常に貴重だと思うので、模型を造る人とかは、
これを撮影して、デカールにする、という目的のためだけに、
ここを訪問する価値があると思いますよ(笑)。
とても目立つものなのに、大抵無視されてますから。
ついでにタイヤもオリジナルのようで、キチンと溝ありのものになってます。
ちなみに、現在私認定で(笑)世界で2番目に状態がいいアメリカ空軍博物館のF-86D。
ご覧のように、牽引に関する注意書きのシールは失われています。
(というかレストア時に無視された)
ついでに空気取り入れ口下の黒い帯状のパーツ、
これ今回の科学展示技術館の機体では失われてる…と思ったんですが、
帰宅後に写真を見たら、色がハゲてしまっただけで、キチンと残ってますね。
さらについでに、このアメリカ空軍博物館の機体でも、
タイヤは溝なしになってしまっています。
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