■ホントにこんなの知らん



さらに怪しいのが出てきました(笑)。
自由航空研究所のJHX-3だそうな。
…自由航空ってなんだ?

萩原久雄さんという人の開発による、
ローターを先端分のジェットエンジンで回転させるタイプのヘリコプター。

この手の機体は1950年代にアメリカでブームになったもので、
日本でもいくつか、似たような機体が造られてますね。
展示の機体は1955年「完成」とだけされてますので(笑)、
まあ、そういったブームに乗って造られたものの一つでしょう。
とりあえず、飛行にまで成功した、とされているようです。

ただし何せ資料がないので断言できませんが、
後で述べるように、どうもキチンと飛んだとは思えないものがあります。



ちなみに、これはアメリカ空軍博物館に展示されていた
アメリカンヘリコプター社のXH-26ジェット ジープ。
ごらんのように、本体にエンジンはなく、ローターの先に
パルスジェットエンジンを搭載して、これを回転させています。

この機体は1952年初飛行で、
アメリカ軍に売り込んだものの、不採用に終わりました。
似たようなヘリを空飛ぶプラットホームで有名な(笑)ヒラー社も造っており、
こちらも1950年代前半の開発でした。
ただし、アメリカンヘリコプター社がパルスジェットエンジンなのに対し、
ヒラー社のはラムジェット(ただし怪しい)です。
この点は後述。

どういったものかよくわからん、という人は宮崎駿監督の劇場用アニメ
「ルパンIII世 カリオストロの城」を見てください。
カリオストロ伯爵の乗ってるオートジャイロがこの方式です。

ローターの先のジェットエンジンに
パルスジェット、あるいは超音速のラムジェット(笑)を使えば、
構造的にはほとんど単なる筒ですから、極めて軽量化できるわけです。
当然、機体側にエンジンは不要ですから、
非常に小型のヘリコプターを造ることができます。

あれま、いいことだらけじゃん!
という事でブームとなったわけですが、全く普及せずに終わります。
その理由をせっかくだから見ておきましょう。

まずタービンだろうがピストンだろうが、現代のエンジンは圧縮した空気に
燃料を噴射し、その爆発的な燃焼の膨張力をつかって力を得ています。
でもって、その空気の圧縮作業がエンジンの構造の
多くを占めているので、ここを簡素化できれば、大幅な小型化が可能です。

では、そんな都合のいいエンジンがあるのか。
上でみたジェットジープは、その答えとしてドイツの飛行爆弾、
V-1と同じパルスジェットエンジンを採用しました。

これは中央部がくびれたシャッターつきの筒状のエンジンです。
逆に言えば、シャッターとくびれが付いただけの、ただの筒です(笑)。

このくびれとシャッター(閉)の間で一度気化した燃料を爆発させると、
衝撃波の内部反射によって以後、次々と空気が圧縮されてゆきます。
後は一定のテンポでシャッターを開いて空気を取り入れ、
さらに燃料を噴射して爆発させれば、その噴流によってジェットエンジンとなります。

つまり、ちょっと形を工夫した筒であればよく、極めて軽量です。
ただし、燃費が極めて悪く、さらにかなりのターボジェットどころではない、
すさまじい音量の排気音を伴うため、
アメリカ軍は実用に適さない、と採用を見送りました。



もう一つの答えが、ヒラーやこの展示機で採用された
…とされる(笑)ラムジェットです。

写真は、展示のJHX-3のラムジェット部。
が、正直、これでラムジェットになったとは考えにくいものがあります。
ついでながら、このデザインはヒラーのラムジェットエンジン、そのまんまです。
おそらく写真を見てコピーしたのでないかと思います。

ラムジェットは超音速移動中の物体に生じる衝撃波、
その背後にある高温、高圧縮の空気を筒の内部に取り込み、
そこに燃料を噴射して自然発火させれば、
あとは自動的にジェットエンジンになるよね、というものです。
(ただしフランス式というべき超音速衝撃波による圧縮ではなく
ベルヌーイの定理を利用したラムジェットもある。
ただし、これも高速が必須で、さらに空気の導き方が意外に複雑となる)

これまた構造は極めて単純なのですが、当然ながら、
エンジンが超音速まで加速される必要があります(笑)。
よって実際に量産、運用された機体で、これが採用されていたのは
SR-71ブラックバードとそこから運用される
無人偵察機、D21くらいじゃないでしょうか。

ヘリコプターで超音速というと、なんだそりゃ、と思いますが、
長いローターが高速回転するため、
翼端を音速にするのは、不可能ではありません。

が、当然、超音速となると衝撃波によって
翼面上の空気の流れがメチャクチャになりますから、
ローターの外部は全く、揚力を生まなくなります。
さらに翼面の上の衝撃波は音速到達前から生じるので、
エンジン周辺だけでなく、かなりの範囲で揚力が無くなると思われます。

これはかなり危険です。
ついでに、当然、衝撃波(ソニックブーム)が周辺に向って発生しますから、
ホバリングなどをされた日にはエライ騒音となります。

が、現在残ってる映像記録を見る限り、ヒラーのヘリコプターは
どうもソニックブームを伴ってませんし、
あきらかに超低速の段階からエンジンに着火してます。
どうも、極めて怪しいような…。

実はパルスジェット、あるいは単なるロケット、といったのが実態で、
あれがラムジェットとは思えないものがあります。
特にこの時代の衝撃波背後の高圧空気はまだよく解明されておらず、
Mig-21やイギリスのライトニング、あるいはF-104のように、
円錐型のコーンを空気取り入れ口の前に置くと、
極めて効率よく圧縮空気が作られる、という発見がされる前です。
(F-104の初飛行が1958年)

超音速と衝撃波は恐ろしく奥が深い世界で、
1950年代前半では世界的にもまだ研究がそれほど進んでなかったはずです。
当然、日本の技術者がそこら辺りを見抜くには
相当な知識が必要だったはずで、アメリカではやってる、という事で、
あっさり皆ダマされちゃったんじゃないかな、という感じがしますね…。



お次はまともなヘリコプター(笑)、
富士ベル 204B。

1956年初飛行の、ヘリコプターのベストセラー機ですね。
富士重工がライセンス生産してたとは知りませんでした。

軍用ヘリコプターのUH-1の原型としても有名な機体。
よって、まあ、私が書くようなことは何もありません(笑)。



例の東洋フレッチャーFD25の2機のうちの1機、こちらは複座練習型のAらしいです。
練習機といっても、パイロンは付いたまま、これもまあ、軍用機ですね。

ただし、こちらは一度も飛行してないんだとか。
当然、これも航空遺産。



これもチョー有名機、川崎 ベル47D-1。
ただし後にG型に改修された機体とのこと。

1945年に初飛行、最終的には5500機を超える生産数の大ベストセラーとなり、
ヘリコプターのベル社の基礎を造った機体ですね。

よってこれまた特に書くことはございませぬ。


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