■圧力はすごかった



さて、お次は圧力の世界へ。
しんかい6500が潜る水深6500mの水圧は1平方センチメートルあたり
680kgf だそうで、まあ普通の人間なら確実にペシャンコです。
そんな世界でやって行くための装置の開発に使われる高圧実験装置がこれだそうな。

高圧実験水槽と呼ばれるもので、深さ3m、内径1.4mで水深15000mの水圧まで再現可能、
という事は地球上のあらゆる場所の水圧が再現可能なわけですが、
そもそもチャレンジャー海淵を超える11000m以上は外惑星探査でもない限り使い道が無いような…。
まあ、安全マージンの確保を考えると、そのくらい必要なのかもしれませんが、
私は構造力学は全く判らないので、なんとも言えませぬ。



これはしんかい6500の開発実験で使われたチタン耐圧殻で、
実物の耐圧殻の1/2.88という妙な数字のもの。
高圧実験水槽で使える最大サイズにしたのでしょうか。

試験は水深6500mの水圧、680kgfの力を1500回ほど加えて安全を確認、
その後、どこまで持つかを試験したところ、水深13200mに相当する圧力で圧壊したそうな。
結構大きな安全マージンが取られてる、という感じですかね。



こちらはガラス製の耐圧殻で、脆そうに見えますが水深8000m近くまで耐えるんだとか。
現在はこれに地震計などを入れて、深海の地震観測に使ってる、との事。
ただし、2011年の東日本大震災では、水深8000m以上のより深い場所で
より大きな地殻変動が確認されたんだとか。

なので、より深い震度まで耐えられるセラミック製耐圧殻が開発されたらしいのですが、
コスト的にはガラス製に比べて相当いいお値段らしいです。



ちょっと面白かったのがこれ。
タイヤのような印象ですが、これは巨大な鋼球で、水圧で上部が圧壊したもの。
元は外周1m、鉄の厚みは4cm、重量約1トンの鋼球だったそうな。



でもってこちらも同じ大きさの鋼球なのですが、ご覧のように上が少し凹んだだけ。

実は上の破断してる鉄球は高張力鋼製で、下の凹んでる鉄球は普通鋼材製です。
あれ、高張力鋼の方が破壊のされ方が大きいじゃないの、と思ったんですが、
実は高張力鋼は水深11600mの水圧まで耐えた後、
大爆破音とともに、上の写真のように破断してしまったのだとか。
対して下の普通鋼では、水深5600mの段階で凹んでしまったため、
そこで破壊されたと判断されて実験中止になったもの。

つまり高張力鋼は倍以上(圧力だと560kg/cm2 :1160kg/cm2)の水圧に耐えた後、
爆発的に破断した、という事になります。
ここら辺り、強度はあるけど粘性が低いと言われる
高張力鋼の特徴が出ているような気がして、ちょっと興味深いです。

ちなみに同じ条件で倍の水圧に耐えた、と言うことは
単純に考えると、同じ耐久性を持たせるなら半分の質量で足りるはずで
(実際はそう簡単ではないでしょうが)
なるほど、高張力鋼が近年の自動車軽量化のカギなんだ、と納得したり。


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