■竜を滅ぼした流星



こちらはカットされてない状態の隕鉄のみなさん。
こんな鉄の塊が時たま地球に落っこちてきてる、と考えると結構怖いですね。



そんな隕石の恐怖の最たる例がこれ。
約6500万年前、恐竜を滅ぼしてしまったとされる
隕石衝突の証拠となった地層(K-T boundary/K-T境界)
の実物を掘り出して展示してありました。

約6500万年を境に、恐竜を含む多くの生物が絶滅したのは
以前から知られていたのですが、その境界となる薄い地層がK-T境界で、
1980年ごろ、この地層には大量のイリジウムが含まれる事が発見されます。

これは隕石衝突によって、地殻深くにあるイリジウムが掘り出され、
大量に地上に撒き散らされたのではないか、と考えられます。
となると恐竜が絶滅するほどの気候の変化も、この隕石衝突が
大きな原因ではないか、と想像されるわけです。
とりあえず、この仮説が認められるまでいろいろあったのですが、
現在はほぼ間違いない、と見なされてるようです。

となると後はその隕石衝突の場所がどこだったのかです。
この点は当初はヨーロッパでしか見つかってなかったK-T境界の地層が、
カリブ海周辺、特にメキシコ周辺でも確認され始めた事で急展開を見せます。
ヨーロッパでは1cm前後だったK-T境界の地層が
この地域では10cm以上の厚さで見つかったからです。

ここから、メキシコのユカタン半島にあった
直径160qを超えるクレーターの隕石が原因だ、と特定されたのでした。
ちなみにこのチクシュルーブクレータ(Chicxulub crater)は現在半分が海に水没、
残り半分はジャングルに埋まっており、クレーターとしての形状はほとんど残ってません。
これが発見されたのもたまたまで、元々は油田開発のための
重力データの解析をしていた中で見つかったものでした。
(下の地殻に含まれる物質によって地表の重力(=物質の引力)の強さが変わるので、
液体の油田を探すのに重力調査は有力な手段となる)

ここに展示されているのは、ユカタン半島から見てカリブ海の反対側、
アメリカのニューメキシコ州で見つかった地層の現物で、
矢印の辺りに見えているのが、数cmの厚さを持つK-T境界層なのだとか。

その下にはガラス質のテクタイトからなる薄い層があるそうで、
これは隕石の衝突による高熱で溶けた地表の物質が硬化し、
ガラス状の物質になって降ってきたものと考えられてるそうな。
つまり、最初に溶解した地表部分が吹き飛ばされてアメリカ側まで飛んできて、
その後から地殻から溶け出したイリジウムを含む物質までが降ってきた、
と言う形になるわけです。



さて、お次は月やら太陽系やらの構成物質の展示。
とはいっても、2013年現在、月と一部小惑星以外から
人類が地球に持ち込んだ物質は何もありませんから、
実はこれも隕石が絡んできます。



まずはこれ。
これも隕石なのですが、例によって(笑)一部で有名な
アラン・ヒルズ84001でした。

最初、番号で言われても全く気が付かなかったのですが、
解説を読んでビックリ、これ火星にも生物の痕跡があった、
とNASAが発表するに至った、あの隕石じゃないですか。
ホンモノか?と思ったんですが、特に複製品の表記はなし。
いやはや、こんなにあっさり展示していいものなのか、これ(笑)。

先に見たアミノ酸が発見されたマーチンソン隕石と言い、
トンでもないものを、えらく地味に展示してますね、この博物館…。

1984年に南極で発見されたこの隕石は、
約41億年近く昔に形成された火星の地殻の一部とされます。
(解説板だと45億年、日本に出回ってる資料では36億年前とエラク差があるが、
2010年にNASAが発表したレポートによると40億9100万年前とされている)
その岩盤が隕石の衝突、あるいは火山の噴火などで大気圏外に放り出され、
地球まで飛んできた、と考えられているようです。

実際、火星から来たと見られる隕石は意外に多く、
ロンドンの自然史博物館にもありましたね。

で、この隕石、その古さからも貴重なのですが、
1996年にNASAの研究者が表面の電子顕微鏡写真や
含まれていた炭素化合物の組成などから、
火星に微生物が居た痕跡が認められる、と発表、
一気に注目を集める事になったわけです。
この点は当時のクリントン大統領がそのための声明を出すほどの
ちょっとした大騒ぎになります。

ただし、当然その後に膨大な反論がなされ、証拠とされた4つの根拠のうち、
3つまでが否定的に見られるようになった、というのが数年前までの状況でした。
少なくとも5年位前(2008年)の段階では否定敵要素3:未決着要素1という感じで、
どうも火星の生物の存在に対して、肯定的とはいえない状況になっており、
最後の一つがどうなるか、が問題になっていたわけです。

が、その後興味を失ってしまい、どうなったかの情報を追いかけてませんでした。
とりあえず改めて調べて見たところ、2010年以降にもNASAが
いくつかの論文を追加してるようなのですが、
要約などが見つからず、かといってオリジナルの論文を
とても調べる気力が無いので、詳細は謎のままとしておきます…。
私の英語力で専門的な論文読むのって、エライ大変なんですよ…。



さて、その次は月が主題の展示。

ここにもアポロの月の石があった他、例の回収用トランクも展示されてました。
上に見えてるホウキ見たいなのは、石を摘み上げる道具だそうで、
これは航空宇宙館の展示には無かったような。


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