■第一次大戦の夢



お次は1920年代のアメリカの街中&映画館の建物の再現と、
その上にぶら下げられた
妙に派手な塗装をした、ドイツの複葉戦闘機。

ファルツ(Pfalz) D.XII(12)という機体らしいですが、全く知りません(笑)。
戦争末期に登場した、そこそこの性能の機体だったようですが、
同時期に登場していたフォッカーの傑作機、D.VII(7)に押され、
イマイチ、影が薄い機体だったようです。

ただしこの機体、映画館のセットの上に
ぶら下げられてるのには意味があります。
この機体はドイツによる賠償金の一部を物納とし、
アメリカに引き渡されたものらしいのですが、
後に1928年ごろ、民間に払い下げられます。
その後、ハリウッドの第一次大戦映画に登場する
ドイツ戦闘機として、かなり利用されたのだとか。

ちなみに大金持ち変態飛行士、
あのハワード・ヒューズ閣下が一時所有しており、
彼の航空映画(撮影中に墜落して大怪我をする)
Hell's Angels にも登場してるそうな。
その後も1938年ごろまで、さまざまな映画に登場、
最終的にスミソニアン協会に流れ着いたようです。



そして、ここら辺りから、実際の悲惨な戦争の展示へ。

まずは有名なイギリスのイギリスは君が欲しい、のポスター。
BRITONSは文語的表現のイギリス人民のこと。

ヒゲを生やしたコワモテのオッちゃんは、
当時のイギリスの国家戦争大臣(Secretary of State for War)キッチナーです。
そんなことおっしゃる前に、貴殿が最初に戦場で死んでらっしゃい、
と私なんかは思っちゃうんですが、
当時のイギリス人はこれでオレも戦争に行くぜ、と思っちゃうんですかね。

その右側のはイギリスの女性に呼びかけるポスターで、
女性にも出来ることがありますよ、
戦争必需品の生産に協力しましょう、という内容のもの。
ただし、第二次大戦期のアメリカのように、
第一次大戦でイギリス女性の社会進出が進んだ、
という話はあまり聞いたことがないので、
それほど大きなキャンペーンではなかったのかもしれません。

余談ですが、戦争による社会進出、というと、
朝鮮戦争と日本が意外な形で黒人の公民権運動に
貢献している可能性があります。

当時、福岡に居て通訳をやっていた人によれば、
(後に英語教師となって、その教え子の人から聞いた話)
日本では黒人だろうが白人だろうが同じ店に入って飲食をし、
同じバスに乗る、という事に衝撃を受けた黒人兵が多かったそうな。

言われてるみると、朝鮮戦争の終結、黒人兵のアメリカへの帰還と、
戦後の黒人の公民権運動の盛り上がりは、時期的に一致するんですよね。
(公民権運のきっかけとなったモントゴメリー バス事件の発生が1955年12月)



でもって、悲惨な戦争の現実、という展示へ。

実はよく見るとこの兵隊さん、キルトのスカートを履いており、
ああスコットランド兵だ、と妙にマニアックな展示になっております。

もっとも、そんな事ばかり気にしてる段階で、
自分が人間失格と言う気もします。



そんな悲惨な戦争の中で行われた航空戦、という事で航空機の展示がスタート。

まずはフランスを代表するスパッドのXIII(13)。
傑作機と言われたVII(7)の発展型で、両者あわせて15000機前後が
造られたと見られ、日本にも輸出されたそうな。

XIII(13)はフランスのエースパイロット、ウーデットとの一騎打ちで有名な
ギンメール(Guynemer)の愛機でもあり、それはフランスの航空宇宙博物館で見ましたね。
(Guynemer の発音はギンミー、ギンナメール等いろいろあるが、
フランスのテレビ番組を見るとギンメー、ギンメールが近い感じなので、
今回はこの発音を採用しておきます)

展示の機体はオリジナルで、1918年に機体をライセンス生産していた
ピアノ工場(笑)で造られたものだだとか。
まあこの時代の航空機は木製品ですから、ピアノ生産の技術が生かせたのでしょう。

で、この機体はアメリカ陸軍航空部隊に引き渡されたもので、
終戦までに6機のドイツ機撃墜を記録している、とのこと。



中身が見える状態で展示されたイギリスの機体、
ロイヤル エアクラフト ファクトリーのF.E.8。
偵察機のようですね。

当時流行っていプロペラが胴体後部にある推進式の機体で、
P-38のような左右のアームで尾翼を支えていたようです。
でもって全く知らない機体なので、後はよくわからず。

とりあえず、展示の機体はオリジナルではなく、
1970年代に造られたレプリカのようです。

NEXT