■来たぜアメリア あいつがイアハート



前回に続いて登場、ロッキードの高速機、ヴェガ5、ただしこちらはB型。

シャア専用か共産主義者向けとしか思えない真っ赤な塗装のヴェガは、
手前の等身大写真の女性飛行士、これも前回登場していた
アメリア・イアハートの愛機でした。
愛称は小さな赤いバス(Little Red Bus)で、
燃料タンクが増設されてるほか、一部構造の強化も行なわれてるようです。

イアハートは1932年にこのヴェガ5Bで大西洋横断、
アメリカ大陸無着陸横断を女性としては初めて成功させました。
(ただし大西洋横断はパリではなくアイルランドまで)
この結果、戦前のアメリカではかなりの有名人であり、
リンドバーグとならぶ空の人気者だったと言っていいと思います。

イアハートは1937年にアメリカ側からの太平洋横断飛行中に行方不明になる、
というある意味、劇的な最後を遂げた事もあり、現在でも人気が高いようですね。

この機体はホンモノで、彼女が新たな愛機として、
同じヴェガのC型を1933年に購入する際に売却したもの。
ちなみに最後の遭難時には双発のロッキード エレクトラに乗ってました。



これもロッキードの機体でシリウス8。

胴体部分の基本設計はヴェガの構造設計を流用、
低翼単葉とした機体らしいですが、
元々はあのリンドバーグが夫婦で極東訪問飛行をするために
ロッキードに発注したものらしいです。
その時のお値段は22825ドルだそうですから、パイパー カブ16機分(笑)、
スピリット オブ セントルイス号2機分となります。
パリまでの飛行後、リンドバーグがいかに稼いだか、が何となくわかりますね。

このリンドバーグ専用機は太平洋横断に備えて水上機ですが、
後に車輪をつけた陸上型が少数造られ、軍などで使われたようです。

ちなみに設計はこれも“ジャック”ノースロップと、
後にコンソリレーテッド、そしてコンベア社となる
ヴァルティー社を設立するヴァルティーが当たっています。

でもってリンドバーグ夫妻はこの機体に
Tingmissartoq という名をつけてるのですが、
エスキモー語で鳥のように飛ぶもの、という意味らしいです。
発音は全くわかりませぬ(笑)…。

彼は、この機体で太平洋周辺を何度も飛んでおり、
1931年には太平洋横断飛行を兼ねて日本を訪問、
根室、霞ヶ浦、大阪、福岡を訪問してます。

ちなみにリンドバーグは戦争直前にドイツを訪問、この時ナチスに買収された、
と言われており、後にルーズベルトに対して
ナチスドイツと仲良くして有色人種(日本だろう)をぶっ潰そうぜ、
という発言をした、とされています。

…まあ、変態ですから(笑)。

でもって、このウワサは日本にも伝わりました。

それに対する日本側の対応は(外交協会文章による)
「白人が提携して有色人種の世界を頼みもせぬのに幸福にしてやらうと
乗出して来さうになった場合、その最悪の事態に處して
やはり最も睨みの利く発言権を日本に持たせるものは、
海軍力を措いて他に無いと申しませんが、
海軍力を以て最大とする、とういふ気持でございます」

と書いてたりします。
最後のどっちつかずの表現が官僚的でステキです…。

この“頼みもせぬのに幸福にしてやろう”はアメリカの得意技なんですが(笑)、
こうして見ると、戦前からベトナム、イラク戦争まで、
アメリカの外交は進化してないなあ、とも思います。

まあ連中には悪気は無いので、そういった意味では立派なのですが、
それだけにタチが悪い、という部分もあるのは事実ですね。



こちらは成層圏到達を目指した気球、
これも陸軍によるエクスプロラーII。
ただし、この計画にはナショナル ジオグラフィック社もからんでるようです。

1935年の11月に2人の乗組員が搭乗し、
22066mの高度記録を立てているそうな。
ちなみにこの時代で安全性の観点からすでに水素の代わりに
ヘリウムを使っていたのだとか。
(ヒンデンブルグ号のアメリカにおける爆発事故が1937年)
先見の明がある、というのと同時に、
ガス田から噴出するヘリウムを自由に使えた
アメリカならではの気球とも言えます。



もはや誰も覚えてないでしょうが(笑)、
展示されてるリンドバーグのスピリット オブ セントルイス号の
プロペラスピナーカバーはレプリカだよ、と説明した理由がこれ。
これがオリジナルのスピナーカバーです。

飛行時のスピナーの裏には、関係者によるこういった応援メッセージと
名前の寄せ書きが、びっしりと書き込まれていたのです。

ちなみに彼とナチスの関係を考えると、中央の卍マークが気になるところ。
1927年の段階でアメリカ人がハーケンクロイツを知っていたかは微妙ですが、
既に大量生産バカ一代、ヘンリー・フォードによる
反ユダヤキャンペーンは始まっており、ここら辺りは微妙なところです。

普通に考える限り、ヨーロッパでも使われていた、
オマジナイとしての卍マークだと思いますが…。



唐突に展示してあった、モンゴルフィエの気球。
人類初の有人飛行装置ですが、なんとなく、置く場所がなくて
タライまわしにされてる感じが…。


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