■F4Fの秘密
これも第二次大戦機の、特に長距離を飛ぶ
海軍機などによく見られるループアンテナ。
ゼロ戦のコクピット後部にもあるはずなんですが、
写真を見ると、外されてしまってる機体も多いようです。
無線方位探知機(Radio
Direction
Finder)のアンテナで、
本来はさらにセンスアンテナと呼ばれる
棒状のアンテナがセットで必要なはずですが、
ひょっとして右上の棒がそれでしょうか。
とりあえず、これで電波の到来方向を探知でき、
母艦や空港から打ち出される特定周波数の電波をたどってゆけば、
キチンと帰り着ける、という装置でした。
ちなみに奥のパネルでアンテナから顔を覗かせているのは、
戦前、アメリカで有名だった女性飛行士、
アメリア・イアハートですから、ふくやまけいこさん尽くし、
という展示だなあ、と個人的には思ったり。
第二次大戦機の大型機には、必ず航法士が乗り込んでおり、
機体の現在位置と、進行方向の確認を常に行なっていました。
でないと数百qも先の目的地にキチンとたどりつくのは困難だからです。
例え一直線の飛行コースでも風で流されてしまって下が海や雲だと、
そのまま遭難へと一直線になります。
なので、上で見た電波誘導やコンパスと地図を使った
現在位置の確認と、向うべき方向の決定は極めて重要だったわけです。
これはそれに関連する展示でした。
でもって右上の機体は航法士専門の訓練機、
その名もビーチAT-7ナヴィゲーター。
ビーチクラフトのモデル18からの改造ですが、
戦略爆撃と長距離航空輸送が命のアメリカ陸軍航空軍らしく、
577機も生産して、平均100時間の訓練を行なってから
航法士は次々と実戦へと投入されたそうな。
ついでに同じ機体を海軍もUC-45Jの名前で使っていたようです。
航法士専用の訓練機で、それを577機(紫電改、五式戦より多い…)
も生産、配備するとは、いやはや
アメリカはホントに贅沢な戦争やってるなあ、と思ったり。
が、当然、一人乗りの機体でも長距離飛行はやらないとなりません。
特にアメリカ海軍機なんて、2000q前後の航続距離を誇る
恐るべき長距離戦闘機のオンパレードでしたから、パイロットは
自ら航法まで行なわないと、生きて帰る事すらままならないのです。
ついでに空母の場合、母艦も移動してますから、
帰りは来た方向に向えばいいという単純な話にはなりません。
大変なのですよ、海軍機は(笑)。
なので、こういった航法用の引き出しシートがコクピットに搭載されており、
必要な時に手前に引っ張り出して確認できるようになってました。
この透明なシートの下に地図や海図を挟んで使います。
右下のはメーター読みの速度(IAS)から
実際の真対気速度(TAS)を求めるための換算表らしく、
高度の修正要素の説明も入ってました。
気流の圧力から速度を読み取る航空機の計器には
どうしても誤差が伴うため、正確な移動距離を知るには、
キチンと真対気速度(TAS)と時間を掛け算する必要があるわけです。
(追記:単純な換算表ではなく、汎用性のある計算尺になってる、
という指摘を掲示板にて受けました。
一種のアナログ計算機で、速度以外の計算もこれでできるようです)
展示されてるのは先に海軍の部屋で見た
FM-1ワイルドキャットのもので、
展示の下の写真のように手前に引き出して使いました。
通常は、机の引き出しのように、コクピットのパネルの下に
収納されています。
これ、現物は私も初めて見ました。
マッハ3で飛ぶSR-71ブラックバード偵察機のために開発された
航法装置…と説明されてましたが、
光速で飛ぶ電磁波の無線誘導が使えるなら
マッハ3だろうが100だろうが問題ないはず。
おそらくソ連や中国上空に不法侵入する以上、電波航法装置が使なくなっても、
自分の位置を確認できるように、という前提で開発されたものでしょう。
そういう機体ですから、SR-71。
それがこのコンピュータ制御の航法装置NAS-14V2で、
ブラックバードのコクピットの後ろに搭載されていたもの。
解説によると場所といい役割といい、
X-ウィングのR2D2を連想させるので、通称はR2D2だったのだとか。
となると、スターウォーズの公開はSR-71の配備後10年以上経った
1977年ですからですから、この装置も1980年代頃のものかも。
先に書いたように電波航法は期待できないので、
上にあるレンズで自分で星を探し、その角度を計算、
(おそらくジャイロが内蔵されてるので水平線の観測は不要らしい)
誤差90m以内で現在地を割り出せたそうな。
うーむ、今から見てもスゴイ装置ですね。
ちなみに、これの発展型が現在もGPSの故障時用の予備として、
一部の機体や巡航ミサイルに積まれてるとのこと。
ついでに、こういった白い箱に入っているのは、
許可された人間以外、触れるのを禁止する、という
意味を持った塗装なのだとか。
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