■次は宇宙だ
さて、いよいよ最後、3つ目の吹き抜けホール、東端にある「宇宙の間」です。
ただし、ここは天井からのぶら下げ展示は少なめなので、チャッチャと片付けましょう。
旅行記では、もはや御馴染み感のあるドイツの飛行爆弾、V-1。
宇宙関係ないじゃん、という感じですが、となりにV-2ミサイルが置いてあるので、
それのつながりなのでしょうね。
第二次大戦機にドイツが開発したミサイルというか、
無人機というか、飛行爆弾というか…。
機体上に積まれたパルスジェットエンジンで
とにかく指定された距離を飛んだ後に落下して爆発する、という兵器です。
機首部に850kg前後の炸薬が積まれています。
ちなみに航空機としての名称はフィゼラー社のFi-103で、
この機体部分の開発には、Me109やMe110の設計で活躍した
ローベルト・ルッサーが参加してました。
お次はNASAのM2-F3実験機。
1967年から72年まで主翼のないリフティングボディ機の試験に使われた機体だそうな。
どうも元々はM2-F2という機体だったらしいのですが、
途中で事故を起こして大破、これを修復、改良したのがこのF3型らしいです。
当たり前ですが、この形状ではまともに飛ぶことは不可能で、
大気圏突入後、効率よく落下の位置エネルギーを
揚力に変えるにはどうするか、
というのを確認するために造られた実験機でしょう。
1960年代、あのX-15などを含めて検討されていた
飛行機型の宇宙船の試験機の一種だと思われます。
なので、この機体も自力で離陸はできず、
X-15のように母機に抱えられた状態で離陸、
上空で切り離されてからロケット推力で飛びます。
マッハ5を超える大気圏突入後の速度から生じる衝撃波を
機体下に流しこんで、それに乗っかる波乗り(Wave
rider)構造にも
見えるのですが、詳しいことはわかりません。
とりあえず、この実験データはスペースシャトルにも生かされたらしいです。
これも宇宙関係ない気がしますが、なぜかここにあったトマホーク巡航ミサイル。
海軍の開発した長距離巡航ミサイルですね。
1983年頃から配備がはじまった長距離巡航ミサイルで、
ある意味、V-1飛行爆弾の子孫かもしれません。
湾岸戦争で、第二次大戦時に建造された戦艦から、
バンバン発射されてたのがこれです。
長距離飛行するには、通常のロケット推進は向いてませんから、
ジェットエンジン駆動で、ご覧のように空気取り入れ口があります。
さて、最後は吹き抜けホールとホールの間に吊り下げ展示されてる機体を。
まずはロッキードの問題児、F-104A戦闘機をNASAが使っていた機体。
実験以外にも、他の実験機を後ろから観察して撮影したり、
異常を知らせたりする追跡機(Chase
plane)として19年間使ってたとのこと。
1975年に引退後、この博物館に寄贈されたのだとか。
とりあえず、NASA専用の特殊改造とかは無い、普通のF-104のようです。
ただし、こうういった塗装で見ると、ちょっと斬新です。
お次はダグラス D-558-2 スカイロケット。
一瞬、木製かプラスチック製か、と思うほど
滑らかに磨き上げられた機体表面が印象的です。
1953年11月、世界で最初にマッハ2を超えた機体ですが、
名前の通りこれまたロケット推進で、B-29を改造した母機から
空中発進する機体でした。
ちなみにこれ、ライト兄弟の初飛行からの50周年記念も狙っていたようです。
ついでに-2というのはD-558の第二段階、の意味だそうで、
D-558-1はジェット推進の機体で開発され、
-3はさらなる高速実験機を目指していたそうですが、
最終的にキャンセルされてしまってます。
これは珍しく海軍の運用による実験機ですが、
海軍もB-29を持っていたのか、と変なとこで驚いたり。
ついでに3機造られた内の1機をNASAが購入して、
実験機として使ってるみたいですね。
ちなみに設計の責任者は前回見たA-4スカイホークと
同じエドワード・ハイネマン。
彼は航空機設計の入門書を後に書いており、
その中で丸ごと超音速飛行の部分を省いてしまってます。
A-4スカイホークの印象が強かったので、
てっきり超音速機は知らなかったのだろう、
と思ってたんですが、この機体を設計した、という事は、
むしろかなり詳しかったはず。
…書くのが面倒だったのかなあ(笑)。
はい、というわけで、なんだか異常な密度となってしまいましたが、
今回の本編はここまで。
NEXT