■見事なコレクションざんす
さて、お次はアメリカを代表する傑作戦闘機、
ノースアメリカンのP-51Dムスタング。
これもどこにもである機体、と思ってしまいますが、
アメリカ人の適当な性格が災いしてか(笑)、
あれだけ現存機がありながら、資料性のあるコンディションのいい機体は
ほとんどない、という変な機種になっています。
A型、B型、C型に至っては、機体そのものが少なかったりしますし。
ムスタングのD型の場合、とりあずコクピット周りを見れば
大筋でその機体のコンディションがわかります。
で、私がこれまで見てきた機体の中で、製造時の状態をほぼ維持してる、
と見ていいのはスミソニアンのこの機体と、韓国ソウルの戦争記念館で
野ざらしにされてる(涙)機体のみです。
ただし、かなりキチンとレストアされてる、と思われる機体が
ロンドンの帝国戦争博物館、空軍博物館にそれぞれある他、
アメリカ空軍博物館の機体も、それなりのレベルにあります。
ついでに、フランスの航空博物館の機体も、いろいろ無くなってるものの、
余計なものを取り付けられたりしてない、という点では比較的まともです。
そういった意味では、さすがにゼロ戦よりは恵まれてると言えますが、
それでも、資料に出来る、というレベルだと、
この機体がもっとも信頼できると思います。
わざわざ見に来る価値はあるでしょう。
展示の機体は1945年7月ごろの生産型であり、
1946年の6月まで軍に所属、211時間だけ飛行して、
以後、退役扱いとなったようです。
そもそも、博物館の保存用に確保された、とされていますので、
おそらく終戦時の平均的なムスタングの装備を残してると思われます。
ちなみに、スミソニアンに寄贈された時、機体の両脇には
“陸軍航空軍に入ろう!”と大きく書き込まれていたそうで、
終戦後、ムスタングがどんな使われ方をしていたか、
なんとなく、想像ができますね。
後に朝鮮戦争が始まると、そんなムスタングの生き残りを
あわててかき集める事になるのですが。
で、最後はイタリアのマッキMC.202。
この機体はイタリア本国にあと1機あるのみで、非常に貴重なものです。
これもゼロ戦と同じぶら下げ展示になっていました。
第二次大戦に飛び込んだ国の中でイタリアは、
日本と同様にフォードの大量生産システムの
洗礼を受けてない国の一つです。
このため、どの機体も1000機前後造られて終わり、
という変な空軍となっています。
他の国の主力機は軒並み1万機単位ですから、
これでは勝負になりません。
(日本ではゼロ戦のみが1万機越え)
この点、ドイツ、イギリスはもちろん、
ソ連でさえフォードの技術を取り込んで(ソ連の場合は強奪して…)
大量生産のやり方を身に着けていたので、日本とイタリアは、
確実に2世代古い産業体制で近代戦に飛び込んだことになります。
その結果は、皆さん、ご存知の通りですね(笑)。
このためイタリアは何種類かの戦闘機が、いろんな場所で少しずつ使われた、
という感じになっており、どれが主力戦闘機なのか、
そもそも主力戦闘機という概念を持っていたのか(笑)
よくわからない部分があります。
とりあえず性能的に見れば、このMC.202は
イタリアの主力“級”戦闘機、という事になると思われますが…。
ちなみに、展示の機体の来歴はまったく不明で、
気が付いたら例のライト・パターソン基地に置いてあったとか。
それがいつスミソニアンに寄贈されたのかもはっきりしません。
それどころか、機体のサブタイプも不明で(涙)、
後期生産型、VI(6)番台からIX(9)番台のどれか、としか判別できないそうな。
さて、では機体以外の展示も見て行きましょう。
各地の博物館でよく見かけるパイロットの服装展示。
これはイギリス軍のものですが、誰も見てない展示となっておりました(笑)。
かく言う私も、この手の衣装展示はほとんどまともに見てません…。
欧米の航空博物館のありがたいところは、
現物を使って、丁寧な説明があるところで、ヘタな本を読むより、
よほど勉強になったりします。
写真はアメリカ軍が使っていた主要な爆弾。
左から500ポンド(LB)爆弾、250ポンド爆弾、そして100ポンド爆弾で、
kg換算だと、それぞれ227kg、113.5kg、45kgとなります。
ちなみに左端の色が白いのは焼夷爆弾(Incendiary
bomb)という種類だそうな。
通常の焼夷弾とはあきらかに形状が異なるんですが、
何に使うものなのかは説明がありませんでした。
それぞれの爆弾の先端に点いてるのは信管で、
右端の100ポンド爆弾を見るとわかるように、
先端に竹とんぼのようなプロペラがついてます。
爆弾が投下されると、これが風を受けて回転、設定された回数を
回転した後、狙った高度で爆発するようになっています。
当然、飛行中は安全ピンで固定されており、
投下時にはワイアがこれを引っ張って引き抜き、
プロペラ信管が作動するようになっています。
その信管の横にはダイヤルのようなものがあり、
そこには数字らしきもの(よく見えなかった…)が
書かれていたので、ここで高度の設定をするのかもしれません。
こちらは航空機機銃の展示。
上からドイツのMG-15 7.92mm機関銃、
アメリカのイヤンてなくらいにおなじみのM2 12.7mm機関銃、
一番下がわが日本のホ5 20mm機関砲です。
MG-15は爆撃機などの銃座に使われていた銃で、
第二次大戦期初期のみに使われていた印象があります。
M-2はもういいですね(笑)。
空から海まで大ヒット作となった機関銃で、
大戦期のあらゆるアメリカ機はもちろん、
21世紀になった今でも陸上自衛隊の戦車や、
海上自衛隊の護衛艦などが積んで居たりします。
最後のホ5は陸軍機によく使われていた機関砲だったと思いますが、
こうして見ると、意外に銃身短いし、コンパクトですね。
全体的にも、上の12.7mmのM2と比べて、
それほど大きくないのにちょっと驚きました。
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