■造ったのはドイツだ
さて、実は宇宙別館には
第二次大戦時のドイツ秘密兵器が満載だったりします。
アメリカ人はドイツが宇宙にあると信じているためか、と思ったんですが、
どうもロケット、ミサイルはまとめてこっちに放り込んじゃえ、
という展示の区分けらしいです。
ここの展示品については、既にアメリカ空軍博物館、
そしてドイツの花園ことコスフォードのRAF博物館の1番ハンガーなどで
全て一度紹介してるものばかりだったりするのですが、
おそらく誰も覚えちゃいないでしょうから(涙)、
ここで再度、ざっと見ておきましょう。
ライントホター(Rheintochter)
R I 地対空ミサイル。
1945年に造られた、ラインメタル社の製のリモコン式誘導対空ミサイルです。
ちなみにドイツは大戦中に多くの誘導ミサイルを造っているのですが、
基本的には操縦者がリモコンで誘導する、というタイプばかりで、
ここら辺りは鉄人28号を完成させていた日本陸軍と同じレベルと言えましょう。
ちなみにライントホターというのは、ワグナーのオペラ、ニーベルングの指環
に登場する水の妖精らしいですが、よう知りません…と、
3年前のロンドン周辺旅行記でも書きましたが、今でもやはり知りません(笑)…。
この時代からすでに2段式で、後部の翼がある部分が2段目ロケットになってます。
それだけ先進性があるのに、かなりのパーツが木製、というあたりが、
末期のドイツ軍を象徴していてなんともはや…。
ちなみに当時の対空ミサイルにしちゃデカイな、という感じですが、
この時期のドイツは、アメリカの戦略爆撃を何とかすることしか考えてませんから、
B-17、B-24といった大型爆撃機を一撃で落とせる設計になってるのです。
ちなみに連合軍はかなりこれに興味を持っていたようで、
82発製造されたのを確かめた上で、片っ端から押収して持ち帰ったみたいです。
あちこちで現物を見かけるのは、そのためでしょう。
ちなみにさらに高性能になったR IIIが試作まで行ってたんですが、
これはロンドン周辺旅行記でも触れたように、エンジンの一部を除き現存しません。
コスフォードではなぜかヤケに見づらい展示だったので、
キチンと紹介できてちょっとウレシイHs293A-1空対地 誘導ミサイル。
その名の通り、ヘンシェル社製のもので、
爆撃機から投下され、これも機上から目視でリモコン操縦するもの。
1943年とかなり早い時期から実戦投入され、
当初は対艦ミサイルだったのですが、後には橋などを狙い撃ちにする
対地攻撃型も使用されました。
もともとはドイツ空軍が使っていたSC-500という爆弾があり、
それに主翼をつけてリモコン操縦で滑空させると
命中率がグーになるんじゃないの、と開発され、
さらにその下に10秒前後だけ使用できるロケットをつけちゃったのがこれらしいです。
とりあえず、この誘導ミサイルは、ある程度の数が実戦投入され、
これによる撃沈とされる輸送艦や駆逐艦がいくつかあるらしいので、
それなりに有効な兵器だった、という感じでしょうか。
ついでに、この存在を知ったアメリカ海軍は、早い段階から
操縦用の電波妨害、ジャミングによる誘導阻止を試みていて、
後の電子戦争のハシリともなってます。
さらに、おそらくこれの影響でアメリカが開発を始めた
同じような兵器が後で登場します。
HS 117
シュメタリン(Schmetterling) 地対空ミサイル。
Schmetterlingてのは蝶の意味。
これまた、目視のよる無線誘導で飛んでく地対空ミサイル。
航空機から発射する空対空型も開発が行われていましたが、
それはまた後で登場。
戦略爆撃機に朝から晩まで悩まされていたドイツは大戦末期に
誘導地対空ミサイルの開発に邁進するのですが、
全て、ものにならずに終わります。
その中では、このHS
117だけが実用化一歩手前まで行っていたそうな。
そもそもヘンシェルは1941年ごろから、
社内で独自に研究を行なっていたワグナー技師を中心に
地対空ミサイルの開発を空軍に提案していたらしいのですが
これをドイツの帝国航空省(RLM)が不採用としてしまいます。
が、アメリカンな戦略爆撃に驚愕した(開戦前に情報入ってたのに…)
帝国航空省は1943年になって、ようやくこれを採用、
その後、開発が進んで1944年12月に量産が決定となったようです。
ただし、その後キャンセルになった説と、
終戦間際の混乱で量産できなかった説があり、ようわかりませぬ…。
先端部の付け根に見える小型プロペラで
発電機を回し、無線装置そのほかの電力をまかなってます。
ついでにその回転数で速度も計測してたんじゃないかと思いますが、
その点の確証はなし。
ちなみに、上のHS 117はどう見ても地上から高高度まで到達できる
ロケットモーターが積んであるようには見えません。
なんで、というと本体の上と下に、このBMW109-558ロケットを装着して
打ち上げるようになっているからです。
ただし、展示のロケットは本体のみで、カバーが失われてます。
とにかくこの時代から2段ロケット、あるいは補助ロケットで高高度を稼ぐ、
というほとんど以後のミサイルの原型を造り上げてしまっていた
ドイツって国は凄いなあ、と思ったり。
ちなみに、この地対空ミサイルに補助ロケット、ブースターをつける、
というアイデアを、何を血迷ったか戦後のイギリスでは
空対空ミサイルで採用、ひどい迷走を経て開発は中断に追い込まれてます…。
いったい何度目の解説だろう、という感じの、
誘導爆弾SD1400XことフリッツX。
投下後、無線誘導で目標に突っ込んでゆく爆弾で、
これも比較的多くの数が実戦に投入されてます。
ちなみに、これも開発の大本となった
PC-1400という爆弾がありにけり。
ついでに、この弾頭は普通に爆発して損害を与える榴弾ではなく、
装甲を貫いて内部で爆発する徹甲弾になっており、
基本的には戦艦、巡洋艦といった対艦専用誘導爆弾となっています。
ただし、最大の戦果が1943年9月のイタリア降伏後、
連合軍に投降しようとしていた元友軍の
戦艦ローマ撃沈だったりするのが、ちょっと微妙ですが…。
ついでに、これも目視誘導なので、投下した爆撃機(Do217)は
投下後も上空に留まらざるをえず、
先にそっちが撃墜されて命中しない、というケースもあったらしいです…。
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