■ミサイルへの道
あっさり展示されてますが、アメリカの核戦略の一端をになっていた
潜水艦発射式弾道核ミサイル(SLBM)のポセイドン C3です。
ちなみにロッキード社の製品で、大気圏外まで行く弾道ミサイルですから
ご覧のように2段式ロケットになってます。
潜水艦から宇宙まで飛んでいってしまうのですから、ある意味凄いんですが、
これ、何か別の利用法ないですかねえ…。
さて、戦後に空軍が核兵器を独占した結果、予算取り放題、笑いが止まらん、
将軍どころか大佐クラスでも、空軍なら退役後の再就職先は掃いて捨てるほどあるぜ、
という状態だったのが1960年代前半までのアメリカ軍の状態でした。
何度も書いてますがアメリカ軍の最終目的はお金です(笑)。
軍人さんだって人間であり、生活がありますから、
いかにそれを安定させるか、より多くの関連企業を囲い込んで、
我々の面倒を見させるか、が最大の関心となります。
(日本なら自衛隊と三菱重工の関係を見ればわかりやすい)
ソ連や中国なんぞは、それを確保するための大義名分にすぎません。
で、空軍の予算独占が極めて面白くなかった海軍がひねり出したトンチが、
この潜水艦発射型の弾道核ミサイルでした。
これで予算をふんだくるぜ、と考えたわけです。
連中の主張は単純で、地上の核弾道ミサイル基地は敵から監視されてるから、
完全な先制攻撃は不可能だし、逆に先制攻撃を受ければ反撃が不可能になる。
その点、世界中の海のどこかにひっそりと潜行している潜水艦からなら、
核弾道ミサイルを至近距離から不意討ちで叩き込める、というものでした。
完全な先制攻撃ができるし、反撃を受けることも無いという理屈ですね。
確かに発射から着弾まで30分前後かかる本土からの
大陸弾弾道ミサイルと違い、ソ連近海に潜んでる潜水艦からなら、
素早く、先制して敵のミサイル基地を叩くことは可能でしょう。
そして居場所のわからない潜水艦なら(発射後、移動してしまうから)
反撃を受けなくて安全だ、というのは筋が通った主張ではあります。
が、どちらにしろ弾道ミサイルである以上、盛大に上昇するため、
あっさりレーダーに捉えられてしまうのです。
で、ソ連だってバカじゃないですから、弾道ミサイルの飛翔が確認できたら、
アメリカ人以外にそんな事するやつは居ない、とわかってます。
となると、やられる前に撃っちまえ、という事で
可能な限り、あらゆる基地のICBMを発射させてくるはずです。
よって潜水艦が生き残ろうが、先制攻撃に成功しようが、
どっちにしろアメリカ本土は廃墟になるわけで、意味がありませぬ。
そもそも、アメリカ本土が先制攻撃を受けたって、
これまたミサイル着弾までの時間で反撃できてしまいますし、
本土中の核ミサイルをソ連に撃ち込んでしまったら、
後はもう、破壊するような目標は何も残りません。
ソ連本土も、アメリカ本土も灰になっておしまいで、
弾道核ミサイルを積んだ潜水艦が生き残ったところで、
悪い冗談でしかないでしょう。
まあ、こういった兵器は予算確保が目的であり、
理屈は二の次、という事なんでしょうね。
でもって、そういった理屈で予算確保に成功した海軍は
1960年代にポラリスミサイルの配備を開始、その後継となったのが、
このポセイドンで、1971年から配備が開始され、
1990年ごろまで一部が残ってました。
ちなみにポセイドンの弾頭は分離式のものですから、
これ1基で最大14の別々の目標に分離した核弾頭を落とせました。
まあ、ムチャクチャですね…。
UUM-44サブロック誘導対潜ミサイル。
潜水艦から発射される対潜ミサイル、というスゴイしろものです。
ちなみにサブロックはサブのアニキは今日もロックだぜ、という意味ではなく、
潜水用ロケット(Submarine
rocket/この場合はMarine(海)のSub(下)の意味)の略。
潜水艦から撃たれる対潜ミサイル、ってのもすごいですが、
さらに弾頭に核機雷を標準で搭載が前提となっていました。
これによって着弾地点の半径数qを核爆発の水中衝撃波で覆ってしまい、
その中に敵の潜水艦がいれば、水圧で圧壊されるでしょ、という豪快な兵器。
当然、そんなのを至近距離で使ったら自分も一緒に沈没ですから、
40q〜80qといった遠距離からの使用が前提でした。
まあ、アメリカの1950年代の狂った兵器の一つですが、
1980年代後半までアメリカの潜水艦に搭載は続いていたようです。
後部胴体がやや太めなのは、これ、魚雷発射管から撃つためで、
後部はその直径に合わせてあるようです。
発射後、水中からロケット推進で海面を目指し、
空中に飛び出した後は放物線を描きながら飛行、途中でロケットは切り離され、
後は慣性で弾頭が飛んで行き、目的地に着水するようになっているそうです。
しかし、誘導ってどうするんでしょう、これ。
いくら大雑把な照準でもいい、といっても、
そんな遠距離から狙えたもんなのかなあ…。
水温によってはその程度の距離なら音は届くので、
方位の特定はできるでしょうが、距離は測りようがない気がします。
航行しながら何度も方向を見て、距離を三角関数で計算したんでしょうが、
1950年代の技術でどこまで可能だったやら。
そもそも、相手も移動してるわけですから。
誘導にしても、水中では通常の周波数の電波は吸収されてしまうので、
レーダーも無線も使えませんから、どうしようもないでしょう。
(極めて長い波長は使えるが、そんな長いアンテナは積みようが無い。
そもそも波長がのびると情報量が落ちるのでリモコンには使えん)
おそらく、大雑把な座標をあらかじめ入力して、
その方向に飛んでゆくよう撃つだけ、という感じなような気がしますが、
それだけ先の相手だと、先読みで未来位置予測をしないと、
まず当たらないでしょうし、全速でジグザグ航行とかしてたら、
ナンボ核機雷でも、あっさり逃げ切られそうな気がしますよ。
ついでにこれを空中で爆発させて、対空兵器として使う、
という豪快な使用法も考えられていたそうな。
その場合、ソナーじゃどうしようもないですから(笑)、
一端浮上してレーダーでわざわざ敵機を探して攻撃するのか、
あるいは対潜哨戒機がすぐ上空にいる、という前提で
誘導無しでとにかく打ち上げるのか…。
あんまり頭のいい兵器には見えませんねえ…。
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