■覗き覗かれ妨害し



航空宇宙本館にもあった偵察衛星、コロナのフィルム回収用カプセル。
地球周回軌道上の衛星から、これに撮影済みフィルムを入れて投下、
パラシュートで空に浮いてる所を飛行機で回収、という豪快なシステムでした。

えらくキレイなので未使用品かと思ったんですが、
1972年、コロナ計画最後のフィルム投下に使われたものだそうな。

ちなみに、コロナ偵察衛星も、先に見たRM-81 アジェナ最上段部を
改造したものだそうで、あの本館で見たのは
アジェナを抜いた部分だったようです。



MLT 1540 ライト デーブル。
なんだこりゃ、という感じですが、SR-71偵察機や、コロナ偵察衛星からの
撮影フィルムを見るための専用の機械で、CIAで使われていたものだとか。
中央やや上あたり見える顕微鏡の接眼部のようなところから写真をチェックしたようです。

ちなみに接眼部が二つあることからわかるように、多くはステレオ写真で、
地上の物体の大きさや高さの、大雑把な見当がつくようになっていました。
ついでに、フィルムの巻上げは電動化され、
最大で同時に4本のフィルムが装填できたのだとか。

たかが写真を見るだけで大げさな、と思ってしまいますが軍用のフィルムは
かなりの幅があるので、これを巻き取ったロールはかなり巨大なものとなり、
そこから見たいところを探すのは結構大変だったようです。



これも写真分析の機械で、IDEX II ワークステーション。
コンピュータですから、当然、デジタル化された画像の分析に使われてました。
なんとも時代がかったコンピュータですが、意外に新しく、
1991年から2003年までCIAで使用されていたようです。
ちなみに、これロッキード社製だそうな。
やはりCIAと妙に縁が深いですね、ロッキード…。

画面が二つあるのは、左が通常のカラー画面、
右がより高解像度にできるモノクロ画面用だったとのこと。
で、先に説明した立体写真を見る場合は専用の3Dゴーグルを使うようです。

ちなみにCIAでは早くも1981年から画像のデジタル化を進めていたそうで、
それによって大幅な作業効率の上昇があったとか。

余談ですが、アメリカのコンピュータ技術ではGPSやネットワーク技術を生み出した
軍によるのものと、NSAによる盗聴、データ収集技術が有名ですが、
CIAも常にコンピュータ技術の最先端を走っている組織でした。

少なくとも、1980年代後半から1990年代前半にかけて、
アメリカ最強と言っていいコンピュータ施設を持っていたのは、
アメリカ軍によるコンピュータ技術の中心地フォート・ミードと
CIAのラングレー本部のコンピュータ室だったはずです。

ここで、ちょっと脱線。
初期の伝説的なハッカーの一人、クリフォード・ストール(Clifford Stoll)が
1980年代後半にCIA本部に招かれた事があります。
彼はローレンス・バークレー研究所のメイン・コンピュータの使用履歴が、
1ヶ月間に約8秒分だけ狂ってる、という極めて小さな発見から、
アメリカの軍事技術を盗もうとしていたドイツ人ハッカーの存在を突き止めており、
それへの対価として見学を許可されたものです。

彼によるとCIA本部のコンピュータ室は野球のグランドほどの広さの部屋に
IBMのメインフレームがずらりと並んでおり、
学術計算に使われるレベルだった、ローレンス・バークレー研究所の
コンピュータですらオモチャみたいだったと述べています。
ただし、アレは膨大なデータ処理用で、学術計算には向かない、
と負け惜しみも述べてますが(笑)…

ちなみに1980年代後半に登場する人工知能プログラムにもCIAは絡んでおり、
おそらくこの分野では今でも最前線にいるはずです。


NEXT