■航空機ファイナル
なんだこりゃ、と思うでしょうが、気嚢部が失われた状態の飛行船で、
グッドイヤー社のコントロール カー C-49。
ずっと旅行記を読んで下さってる方はわかると思いますが、
この場合のCarは、こういった箱状の乗り物を指すCar ですね。
軍が第二次大戦前に飛行船の導入に積極的だった事はすでに説明しましたが、
一部は民間でも導入され、グッドイヤーは
そんなアメリカの飛行船メーカーとしては最大手の一つでした。
後に第二次大戦中、グッドイヤーは、
先に見たF-4Uコルセアの製造を海軍から請け負うのですが、
これは“一応、航空機メーカーで(笑)ジュラルミンの加工に慣れてる”
といった理由があったようです。
(F4Fのところでも説明したように、需要に応じきれない開発メーカーを支えるため
さまざまな会社が第二次大戦期には航空機の生産を行なっている)
この1934に初飛行したC-49は、同社の宣伝用、
さらにゲストや幹部社員の移動用に使われていた、とのこと。
その後、1942年に海軍が徴用してL-5の名前で使ったようです。
ちなみに、例の大型空母飛行船はあきらめたものの、
それとは別に海軍は大戦中に100機以上の飛行船を、
主に沿岸警備用、対潜水艦警戒用に運用していました。
これらはUSS L-Ships
とよばれ、
それぞれにLから始まるナンバーがつけられています。
これらの一部の機体はレーダーも積んでいた、という話があるんですが、
未だにこの点を確認できる写真を見た事がありません。
つーか、アメリカ本国でも、ほとんど存在が忘れられてます…。
ついでに例のドゥーリトルによる東京爆撃では、
飛行船L-8が出航後の空母ホーネットにB-25のパーツを運んでますから、
一部では連絡用とにも使われていたようです。
(USSホーネットはアラメダから出航してるので、
後で説明するモフェット基地の飛行船だったと思われる)
この任務、意外に需要があったようで、大戦中まで
海軍の気球パイロット訓練コースは残っており、
カリフォルニア州のモフェットでその訓練は続けられていました。
ちなみに、今ではアメリカ中でもっとも投資が集中する一体として知られる
カリフォルニア州のシリコンヴァレー、サンノゼ近郊にあるモフェット空港は、
当時は海軍による対日警戒用飛行船艦隊の基地だったため、
その訓練施設のほか、巨大な飛行船ハンガーが建設されていました。
(ここは海沿いなので直ぐ太平洋に出れる)
1946年ごろまでここの飛行船部隊は現役で、
全部で10機以上の飛行船が配備されいてようです。
で、この飛行船格納庫は今でも残っていたはずで
サンフランシスコからラスベガスに向う飛行機に乗ってると、
わが目を疑うような巨大構造物の建ってる
飛行場が見えて来ますが、それがモフェット空港と飛行船の格納庫です。
ついでに、アメリカ中に全部で10前後の海軍飛行船基地があったようですが、
モフェット以外はどこにあったのか、私は知りませぬ。
さらについでに1942年までは間違いなく陸軍も飛行船を運用してるのですが、
その後どうなったか、面倒でまだ調べておりません…。
お次はドゥーティ社製、R391 アドヴァンスド プロペラシステム。
プロペラ機構単体で展示とは珍しいな、という感じですが、1996年からC-130輸送機に
装着され始めたイギリス製の新型プロペラなのだとか。
プロペラ機の場合、エンジン出力は軸を回転させる回転力であり、推力ではありません。
これを機体を動かす推力にするには、基本的にプロペラを使うしかないのです。
よって、どんなにステキなエンジンでも、
プロペラがヘボだとその性能は生かせない事になります。
とはいえ、ジェット時代の到来もあって第二次大戦後大きな進化が無かった
プロペラなのですが、1990年代から新素材の登場などもあり、
その姿は大きく変わる事になったようですね。
このR391もそうですが、まずカーボンとグラスファイバーにより、
金属より遥かに軽くて頑丈な、強い回転にも耐えるブレードが登場します。
当然、同じエンジンの出力なら、軽いほうが速く回すことができ、
音速を超えない限り、速ければ速いほどプロペラの揚力=牽引力は高まります。
そこから、やや小型で枚数が多目のものが主流になって来ました。
軽量化によって枚数の増加がそれほど重量負担にならないなら、
枚数を増やしたほうが有利ですし、それと引き換えに
プロペラの長さを短くすることで空気抵抗も減らせます。
同時にブレードを短くするのは、プロペラの音速限界対策にもなります。
プロペラブレードは回転中、先端部に行くほど回転速度があがります。
(より長い円周を同じ時間で1周するのだから)
よって、長いものほど先端部が早く音速に到達してしまうため、
ブレードは長いほど回転速度に関する制約が増えます。
プロペラも翼断面を持っており、そこで生じる揚力で機体を引っ張るため、
翼面上衝撃波が発生すると、揚力=推力が得られません。
よって、回転速度(飛行速度ではない)がマッハ0.9辺りを超えると、
通常の航空機の主翼のように、もはや揚力が出ず、
それ以上回転を早くしても推力はむしろ低下するのです。
よって先端部でもなかなか高速にならない、短いブレード(=直径)の
こういったプロペラが主流になって来るわけです。
ちなみにこのR391だと直径4.1m、
元々C-130で使われていた3枚プロペラは4.6mあったとされますから、
10%以上短くなっていますね。
でもって最後の特徴、全体がナイフのよう見えるのは
先端部に後退角が付いてるからです。
ただし、この後退角はどうも翼面衝撃波対策ではないような感じが。
まあ、多少は効果があるのかもしれませんが、
ちょっと後退角が小さすぎますね。
よって、おそらく騒音対策、風切り音を低下させるのが主目的じゃないかと。
以前、タービン系の技術者の方から、
ジェットエンジンのタービンブレードの先端を少し曲げると、
騒音が減る、と聞いたことがあるので、それに似たものではないですかね。
まあ、この点はあくまで推測ですが…。
こういった展示ケースがところどころに置いてあり、これはリンドバーグの遺品でした。
どうもアメリカにおける彼の知名度というのは、
日本人が考えるよりはるかに大きいような感じがします。
こちらは前回もさっと見て終わりにしてしまった航空カメラのコレクション。
…正直、今回もよくわからんので、この写真だけ撮ってオシマイに。
という感じで、このボーイング航空ハンガーに
展示されてる機体の紹介はオシマイです。
先に書いたように小型機やらグライダーは
かなり飛ばしてしまったものの、全体の8割以上の機体は見てきたはずです。
写真は入り口から見て左側のハンガー終端部からの写真。
反対側のジェット軍用機機コーナーが
まだまだ余裕があったのに対し、こっちは結構一杯一杯な感じ。
まあ、それでも詰めればもう何機か入りますから(笑)、
こちらも今後に期待しておきましょう。
さて、展示されてる航空機紹介に関してはこれで終了とし、
次回はレストア工場と機関砲関連やらを見て行きます。
それが終われば、宇宙編突入ですね。
はい、今回の本編はここまで。
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