■さらにそれから
お次は2014年現在、アメリカの最新鋭機であるF-35B、
その試作型であるX-35B。
F-35は全部で3機種あります。
空軍向けのF-35A、垂直離着陸が可能な海兵隊向けのF-35B、
主翼が大型化され、通常のエルロンによる機体コントロールになってる、
もはや何がなんだかよくわからんF-35Cですね。
(A,BはF-16と同じフラッペロンと前縁フラップによるコントロール)
で、F-35の試作機はなぜかYFナンバーではなく、実験機のXナンバーなんですが、
全部で二機造られ、そのうちの1機がこの機体。
(ちなみにXナンバーの機体が量産に持ち込まれるのはこれが初めて)
当初はF-35Aの試作機、X-35Aだったのを、垂直離着陸用のエンジンに換装、
X-35Bとしたものだとか。
2001年の6月に改造が終了、そのままテストに入ったのですが、
わずか2ヵ月後の8月にはテストが終了、
これは軍用試作機の中では最短記録との事。
ちなみに、そのテスト試験中に、垂直離着陸した機体による、
初めての超音速飛行に成功してるようです。
この機体、よく見ると前脚の収納部に関係者のサインがたくさん入ってます。
同じ試作機でも、YF-22にはこういったものが見られなかったので、
この機体の開発チームの暴走でしょうか(笑)。
ちなみに最低限の開口部にして、レーダー反射を抑えよう、というF-22に比べ、
かなり盛大な脚収容部なんですが、ここら辺り、私の知らない新技術とかで、
ステルス対策が取られてるんでしょうかね。
そのエンジン。
B型は垂直離着陸が可能なんですが、速度0から垂直に上昇する場合、
当たり前ですが、機体を浮かすのに主翼の揚力が使えません。
となると機体を持ち上げる力は、純粋にエンジンの推力のみに頼る事になります。
が、究極のデブと言っていいF-35は、武装して一定の燃料を積んでしまうと、
軽くエンジン推力を上回る重量となってしまうため、
エンジン出力だけで機体を浮かべるのは不可能です。
離着陸中、常にアフターバーナー全開とかならなんとかなるかもしれませんが、
そうなると離着陸だけで燃料の大半を使ってしまう事になりかねませんし、
そもそも、空母の甲板だろうがアスファルトの滑走路だろうが、
そんな高熱には耐えられません。
じゃあどうするか、というのに対する回答がこの形なのでした。
左半分がエンジン本体で、とりあえずノズルを曲げて、推力を下向きにします。
が、先に説明したように全然、持ち上げる力が足りませんから、
これだけでは未来永劫、機体は浮きません。
なので、右側の怪しい装置が登場するわけです。
エンジン回転軸からシャフトで繋がってるのがわかりますが、
それによって中にあるファンを回転させ、上向きの揚力を発生させます。
エンジンの駆動力を使ってファンを回転させる、というのがポイントで、
小さな力でも速度に変換して運動エネルギーの形で蓄積してゆけば、
そこから再度力に変換した場合、つまり揚力として取り出したときに、
より大きな力となります。
通常の航空機やヘリコプターが機体重量より小さな推力のエンジンで
空に浮かべるのはこの理屈によります。
つまり右側のファンでヘリコプターの回転翼のように揚力を生む事により
F-35Bでは垂直に機体を持ち上げる力を稼いでいるのです。
よってF-35Bの機体前半は小型のヘリコプターになってる、
と考えて大筋で間違いではありません。
これなら、エンジン推力を上回る力を得る事が可能となりますから、
機体を持ち上げるのに十分な力を確保でき、
なおかつ燃料の消費も抑えられます。
よく考えられてはいますが、当然、通常飛行中はファン部分は、
単なる重量物で邪魔モノでしかなく、性能低下に直結します。
そこまでして垂直離着陸にこだわる理由がある、
という事なんでしょうが、個人的にはどうかなあ、という気がしますね。
ただでさえ重いF-35に、さらに重量物を加えるわけですから…
ちなみに、ちょっと見づらいですが、エンジン左右に腕が伸びていて、
その先には圧縮空気を噴出すようなノズルが付いてます。
おそらく、垂直離着陸時のバランス取り用でしょうかね。
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