■戦後レーサー
てなわけで、戦後に登場した大戦機の改造レーサーを見ておきましょう。
まずは戦後に再開されたナショナル エア レースの中の
長距離レース、ベンディックス トロフィーに参戦するために
ノースアメリカンP-51ムスタングのC型から改造された機体。
必要の無い装備は全部外され、機内燃料タンクが増設されてますが、
外見的にはほぼC型のまま保たれてますね。
とりあえず後年のレーサー機のように、
何がどうなったらこうなるの、といった改造はされてません(笑)。
で、この機体はハリウッドのスタントパイロットとして有名で、
さらに戦前と戦後の一時期、長距離レースに参加していた
ポール・マンツ(Paul
Mantz)の機体でした。
戦後再開されたベンディックス トロフィー レースに参戦するため、
映画撮影用に買い集めた機体から選んで改造したものだとか。
で、彼は戦後のベンディックス トロフィーで三連覇(1946〜48)してるんですが、
このうち、1946、47年のレースをこの機体で戦って優勝しています。
よって、ベンディックス トロフィー連覇機なわけです。
ちなみにマンツはこの機体にBlaze
of
Noon 燃えあがる正午、
という変な名前を付けてるんですが、この時マンツは43歳、
Noonには40〜50代の壮年期といった意味があるので、
ひょっとして、オレはやるぜ、燃える壮年期だぜ、という意味でしょうか?
が、その後マンツはこの機体をチャールズ・ブレアなる人物に売り飛ばしてしまい、
そこではエクスカリバーIIIという名前に変更されます。
展示されてるのは、その状態のものなので、この赤い塗装も、
ひょっとするとその時に再塗装されたものかもしれません。
で、このエクスカリバーIIIは、そのチャールズによって
1951年1月にロンドン〜ニューヨーク間を8時間未満の新記録で飛行、
さらに同年5月にはノルウェーからアラスカまで、北極点通過飛行にも成功と、
なんとも波乱に飛んだ経歴を持つ機体となっています。
でもって、こっちが何がどうなったんだ系の(笑)戦後レーサー、
グラマンF8F-2 ベアキャットから改造されたコンクエスト1。
ちなみに解説によるとリノ エアレースの無差別級で、
ダリル グリ-ナマイアー(Darryl
Greenamyer)さんの
操縦により6度の優勝をした機体とされてましたが、どうも記録を見る限り、
この名前になってからは2回しか優勝してないような…。
残りの4回は、同じ機体でも改造前の別の名前の時だと思われます。
でもって、まあ、究極の改造と言っていい感じの機体でして(笑)、
主翼は左右で2mほど短くされ、尾部には尻尾が付き、
トドメとばかりに、コクピットのキャノピーはスズメの涙クラスに小さくされてます。
これ、私だったら乗るの絶対やだなあ…。
その結果、コンクエスト1はドイツのMe209が持っていた
ピストン機による速度記録を1969年に30年ぶりに破ってるのですが、
その時の記録が777q/h。
F8Fは最低限の武装と燃料だけ積んだ通常状態で670qは出たとされますから、
約100q/hのスピードアップに成功した事になります。
やはり700qあたりからは、相当苦労しないと速度が上がらないようですね。
(ちなみにレシプロ機の記録はその後さらに更新されてしまった)
とりあえず、レーサー機としても優秀で、
速度記録まで達成してしまった機体として展示されてるようです。
ついでにパイロットのグリーナマイアーさんは、
ロッキードのスカンクワークスでテストパイロットをやっていた人だとか。
で、どっかで聞いた名前だと思ったら、
グリーンランドに残っていたB-29を回収しようとして、
最終的に焼失させてしまった計画の首謀者の人ですな。
かなりカッコイイ複葉レーサー、ベック・マホニー ソーサリス(Sorceress/女魔法使い)。
ちなみに名前のベックとマホニーは、この機体のパイロットだった人達らしいです。
全身全霊で、アタシってばレーサーだしー、
という感じの奥まった位置にあるコクピット、そして複葉の主翼が、
戦前のレーサー機を思い出させますが、1970年に製作され、
1983年まで活躍した複葉機レーサーだそうな。
ちなみに固定脚を最大限短くするため、下翼は逆ガル翼になっており、
おお、こういうのカッコええやないの、と思いました。
とりあえずリノのエアレースに、複葉機によるBiplane
Goldという階級があるそうで、
そこで1972年に初優勝、さらに1975年と76年にも連続優勝してるとか。
こちらはシャープ DR90 ネメシス(Nemesis/天罰)。
なんだかスゴイ名前のレーサー機ですが、これもカッコイイですね。
この機体も名前のシャープはパイロットから取られてます。
で、1991年から1999年までInternational
Formula
1 という階級で
48のレースに出場し、その内45勝した、という恐るべき機体だそうな。
ちなみに、このレースはアメリカ各地で行なっていたようですが、
詳しいところはようわかりません。
ちなみに戦後の無差別級は大戦時の戦闘機ばかりで創意工夫がないぜ、
ホントのアメリカのエア レース魂を受け継いでるのは俺たちだぜ、
というような事をこの階級のパイロットは言ってるそうですが、
なるほど、そうかも知れないなあ、と思ったり。
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