■ドイツのあれこれ



でもって、こちらはキチンと全部揃った状態で
ぶら下げ展示されてたホルテンのグライダー、H-III f。
これも木製機です。

ホルテンはグライダーだけで18機前後の無尾翼機を造ったらしく、これもその中の一つ。
下の人と比べると、あまりにコクピットが狭いという印象ですが、
どうもこれ、うつぶせに寝て操縦するようですね。

この機体は終戦直後にアメリカ軍が接収したようですが、
詳細な来歴は不明です。
1944年製とされてますが、とてもキレイで、かなり手をいれてるはず。
1994年にドイツ送り出し、現地でレストアされた、との事なので、
おそらくその時、大幅な補修が行なわれたのでしょう。



よく見ないと分からないと思いますが(笑)、画面中央にひっそりぶら下げられてるのが、
もう一つのホルテン グライダー、H-VI(6) V2だそうな。
こちらはさらに小さく、コクピットは筒の中に人間入れて飛ばしてる状態です。

当然、これも木製で、そして1944年製。
エンジン無しとはいえ、ホルテン、
どれだけのハイペースでグライダー造ってるんだ、という感じですね…。



ドイツの最後はこれ。
ドイツお得意の回転翼なビックリドッキリメカですが、
今回、2台に増えてました(笑)。

手前のは主翼の代わりに回転翼を搭載したグライダー、
フォッケ-アハゲリス社のFa330Aで、これは何度か紹介してますね。
前回見たオートジャイロからエンジンを外してしまったような機体です。

グライダーですから、牽引してもらって、
その力で上の回転翼を回し浮き上がる、という機体。
無動力なので、エンジントルクの作用反作用の力で
機体が回転することもないため、
尾部にテールローターなどは無しという単純な構造です。
ただし回転翼ですから単にぶん回せばいい、
というものにはならず、翼の取付部は意外に凝った構造になってます。

ちなみにフォッケ-アハゲリスのフォッケは
Fw190のメーカー、フォッケ-ウルフのフォッケさんと同じ人。
彼がナチスに目をつけられて、フォッケウルフを追い出され、
1937年に新たに造ったのがこの会社らしいです。
(すなわちFw-190開発以前に既に会社を去っていた)
この会社はヘリコプターの開発を目的として造られたのですが、
その設立にはこれまたナチスが絡んでると言われ、
どうもここら辺り謎が多いですねえ…。

で、この機体は主にUボートに搭載されており、
浮上中に海上で牽引されて飛行し、視界の効く上空から周囲を偵察、
敵の輸送船を発見するぜ、というものです。
前回書いたように、海面高度からではせいぜい5q先しか見えないため、
こういった対策が考えられたんでしょうね。
Uボートのような潜水艦は、特に艦橋の高さが無いですし。

でもって4人がかりなら3分で組み立てられたそうで、
飛ばした後はパイロットは電話線を通じて、偵察報告を行なったそうな。
が、遠くまで見えるという事は、逆にUボートにとっても見つかりやすくなるわけで、
現場ではイマイチ不評だったらしく、実際はあまり使われなくかったようです。



で、今回初めてみた奥に見えてるイス無しの機体は
ナグラー ロルツ(nagler rolz)なる
聞いたこともないメーカーのNR54 V2 なる機体。

当初、これも無動力グライダーと思ったんですが、よく見ると、
回転翼のローターに横向きにプロペラが付いてます(涙)…。
まさか、と思ったんですが、そのまさかで、
この横向きのプロペラでローターを回して浮きます。
そのローターの上にある円錐形のものは燃料タンクだとか。

スミソニアンの解説によると“携帯用バックパック型回転翼機”だそうで、
その名の通り、あの背もたれのとこにパイロットが搭乗というか、
貼り付けられて操縦するのでした…。
ある意味、第二次大戦時代のドイツにおけるタケコプターと言えなくもないような。
ただし、全体で140kgあるそうなので、持ち歩くのは無理でしょうね。

とりあえず1945年に地上テストまで終わらせたものの、
一度も飛ばずに終わった、とのこと。
それは何よりだったと思われますが、解説板によると
ケータイヘリコプターの魂はNR54 V2と共に死せず、という事だったらしく、
(Idea did not die with the NR54 V2)
1950年代になってアメリカ軍も同じようなの造ってます、
と詩的に述べておりました。

ちなみに、どうもアメリカ人パイロットらしい人物が、
とても困った顔をして、これを装着(?)してる写真が残っており、
ひょっとして、アメリカ軍、戦後に飛行テストをやろうとしたのか?

さらにちなみに、ちょっと方向は違いますが、一部で有名な
アメリカのフライング プラットホームはまた後で登場いたします…。


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