■連合軍の落穂ひろい



お次はちょっと変り種、ケレット(Kellett)XO-60。
偵察用として1943年に試作されたオートジャイロです。

オートジャイロは主翼の代わりにヘリコプターのような回転翼を積んだ飛行機です。
その仕組みは単純で、機体正面にあるプロペラで前進し、風を受けると、
機体上の回転翼が回って揚力を産み、これによって浮き上がるわけです。

この場合、揚力は機体速度ではなく、回転翼の速度に依存するので、
極めて低速で飛行、さらには短距離離着陸が可能になってます。
が、通常のオートジャイロは回転翼本体に動力がないので、
ヘリコプターのようにその場でホバリング、は出来ません。
(高度を失いながらほぼ同じ位置を保つ、は可能かもしれない)
あくまで、主翼の変わりに回転翼を積んだ飛行機、と考えるべき機体ですね。

ただし、この手の機体としてはかなり後期に開発されたこのXO-60では、
ジャンプ離陸用クラッチと呼ばれる機構を搭載し、
クラッチを介して、動力の一部をローターに伝える事ができ、
速度ゼロでもこれを回せたようです。

ただ、そうなるとエンジントルクの作用反作用の力で、機体側も回されるはずで、
ヘリコプターのようなテールローターがないこの機体では
おそらく機体を安定させる事ができなかったはず。
実際、操縦が困難だった、とされていますから、実用性は低かったでしょう。

それらに加えて、すでにこの段階では
ヘリコプターの実用化のメドが立っていたため、
結局、採用されずに終わったようです。



でもってこちらが、そのアメリカ軍の初期のヘリコプター、
1942年製のヴォート・シコルスキー XR-4C。
後にアメリカが最初に量産する最初のヘリコプター、R-4の試作型となります。

例によってヴォートの長い会社名は気にしないでください(笑)。
ただし、この機体に関しては、シコルスキー部門の開発です。
実はこのヘリコプター、太平洋戦争開戦直後、1942年の1月には初飛行しており、
アメリカのヘリコプター開発は意外に早かったりします。

量産型のR-4も1943年には製造が開始され、最終的に130機前後が造られ、
そのうち55機が陸軍、52機がイギリスへ貸与、
残りが海軍と沿岸警備隊に納入されたそうです。
それらは主に太平洋戦線で救難、輸送に使われたそうな。



でもって地上展示の小型機の最後には、二機目のイギリス機、
ホーカー ハリケーン Mk.IIのC型を。

ハリケーン、正直、戦闘機としては完全にダメな機体で、
イギリスは戦争に勝ったから誰も文句を言いませんが、
これ、日本とかで造ってたら、いまごろ戦犯扱いされてたでしょう(笑)。
もう一つのイギリスの主力戦闘機、航空宇宙本館でみたスピットファイアと
ほぼ同期の機体なんですが、確実に10年は古い設計だと思います。

よって、あらゆる面で凡庸な機体で、特に書くことが思いつきませぬ。
それでも、イギリス人は誉めますけど(笑)。
あの国の連中の兵器愛国心は明らかに間違ってますよ…。

ちなみに、某日本の有名航空機設計者の方が言ってるように、
戦闘機の性能の多くはエンジンで決まります。
これは後にボイドが示す事になるエネルギー機動理論からも
明らかなんですが、だからと言ってエンジンだけよければなんとかなる、
というものでもありません。

この機体はスピットファイアやP-51ムスタングに搭載されていた
マーリンエンジン搭載ですし、さらにアレなフェアリー フルマーなんて機体も
これまたマーリンエンジンを積んでおりました。
それでも、ダメなものはダメなのです(笑)。
やはり、設計者のセンスってのは重要だと思います。

ちなみに展示の機体は1944年製造で、
これもイギリス国内で訓練用に使われていたものだとか。



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