■最後はこれ



さて、最後はこれ。
アメリカの最終兵器、日本人には忘れがたき機体、B-29です。
真性16:9カメラでようやく画面ギリギリ、という巨大な機体。
もっとも、後のB-36やB-52はさらにデカイんですが…。

個人的には、主翼下、巨大なフラップにも注目していただきたいところ。
ついでにB-17以来の伝統、ボーイングの巨大な垂直尾翼も、
横からだとよくわかるかと。

アメリカの戦略爆撃の最終回答がこのB-29でした。
開戦時の1941年末には既に開発が始まっていたものの、
機内の完全与圧、極めて大きな爆弾搭載量といった野心的な設計がタタリ、
その実用化は大幅に遅れてしまい、対ドイツ戦には間に合いません。
結局、日本相手に大量投入され、その息の根を止めてしまうわけですが…。
(日本は主要4島で陸上戦が行なわれる前に降伏している)

でもって、困ったことに、この機体はエノラ・ゲイなのです。
あの広島に原爆を落とした機体でして、
日本人としては実にコメントが書きにくかったり…

とりあえず、ここでは一歩引いて、歴史的な機体である、
とだけしておきましょう。
原爆を落としたのはこの機体ですが、落とさせたのは軍人と政治家ですから、
いたずらにこの機体を取り上げても、本質を見失うだけですしね。

ちなみに、以前にも書いたように、エノラ・ゲイというのは
機長のお母さんのあだ名で、陽気なエノラ、と言う意味です。
エノラは同性愛者、の意味ではありませんし、
当時の英語のゲイに同性愛的な意味はないでしょう。
単に派手で陽気、キラキラした人、といった意味で、
男性同性愛者にそういった傾向が強い人が多いことから、
そっちの意味にも使われるようになったものです。

GAYの単語は時代と共に意味が変わってる、典型的な単語です。
そこら辺りを無視した怪しい解説も多いので、ご注意アレ。



機首部のアップ。
パッと見るとどこに運転席があるんだ、というB-29ですが、
この機首の2階部分に操縦士と副操縦士、
前面のちょっと下がった位置に爆撃手が座ってます。

反射で見づらいですが、白いシートベルトを探してもらえれば、
その位置がわかるはず。

当時の爆撃機はもちろん、現代のジェット機とも異なる、
操縦席の出っ張りがないこのデザインは、
空気抵抗の低下を狙うと同時に、与圧コクピットにしたため、
可能なかぎり胴体全体を円形に収めたい、という要求によると思われます。

B-29は、空気の薄い、すなわち気圧が低い高高度を飛ぶため、
与圧無しでは酸素が足りないと同時に、人体内のガスが膨張して、
強烈な苦痛が加わる事になります。

このため、胴体内部に隔壁を作って密閉空間を造り、
その中では常に空気を加圧して地上並の環境を作る、という
与圧機能がB-29からは搭載されていました。

現代のジェット旅客機なみの装備です。
が、内部から圧力を上げれば、胴体が破裂する可能性もあり、
その制御が問題になってきます。
(戦後のイギリス旅客機コメットの連続墜落はまさにそれが原因)
このため、可能な限り均一に圧力が分散できる
円形の胴体が選ばれ、コクピットまでこういった構造になったのでしょう。

ただし、こういった爆撃機の操縦デザインはドイツが最初で、
おそらくボーイングはそれを参考にこの形にしたはずです。

はい、と言う感じで、初回からなんだか予想以上の密度になってますが、
ウドヴァー・ハジー第一回、英米編の本編はここまで。



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