■さらなる奥へ



さて、どんどん進みますよ。
水兵用食堂の先は寝室です。
ちなみに、この辺りの床下も、全てバッテリーで、
潜水艦の乗員はバッテリーの上で暮らしている、という感じになってます。

ここは3段ベッドの詰め込み式で、
現役時代は真ん中にも、もうニ列ベッドがありました。
なので、一応30人が寝れたのですが(3×3が左右2列+3×2が中央2列)、
67人の水兵が2交代だとすると、
34人分のベッドが必要ですから、足りませんね。
よって、残りは魚雷室送りとなるわけです(笑)。

奥に扇風機が見えてますが、巨大なディーゼルエンジンを
狭い艦内に積んでしまった潜水艦の艦内は常に暑かったようで、
これは必需品でした。
第二次大戦時でも空母や戦艦にはエアコンがあり、
図面で見る限り、一応バラオ級にもエアコンがついてるんですが、
これがどの程度のものだったのかはよく判りません。

ちなみにUSSパンパニトでは、
ここにアイスクリーム製造器があったんですが、
このUSSベキューナではそれはなし。
が、アメリカ人がアイスクリーム無しで戦争できるはずがないので(笑)、
多分、どこかには設置されていたはずです。
実際、食事メニューにも入ってましたしね。

後で見るように、ここは機関室の直ぐ横で、かなりうるさかったはず。
普通に考えると設計ミスで、食堂の位置と、
この寝室の位置は逆にすべきでしょう。

食堂から直ぐに前部魚雷発射室、あるいは管制室に行ける、
というメリットがあったのかも知れませんが、
後部にも機関室、推進室、魚雷室があり、
通常、多くの水兵が配置されるのはそちらですから、
その配慮はあまり意味がないです。



さて、その先はこれ。
水兵用のトイレとシャワーコーナーです。

たしか左がトイレで、右がシャワーだったかな。
両者とも、2つずつありました。
ついでにこの辺りに洗濯機があったはずなんですが、
展示では見当たらず。
この辺りの床がタイル貼りなのも見といてください。

アメリカの潜水艦は、日本やドイツのUボートに比べると、
住環境はホントに恵まれてるんですよね。



こちらはトイレ。
当然、現在は使用禁止ですが、なぜかこの手の展示には必ず
トイレットペーパーがついたままになっております、アメリカの場合(笑)。
空母USSホーネットでも、使用禁止の展示トイレ全てにトイレットペーパーが
取り付けてあり、なんでなんだろう、と思った記憶があります。

シャワーについては、これまたこちらでも公開されてませんでした。
…なにか人に見せられない理由でもあるんでしょうか。
USSパンパニトでは公開してたのに。



さてその先が機関室、エンジンルームです。
ただし、先にも書いたようにこれは発電用で、
これで推進力を得てるわけではありません。

バラオ級の場合、前後に分かれた部屋に2基づつ、
計4基のディーゼルエンジンを積んでおり、
こちらは前部エンジン室となります。

ちなみにドイツのUボートは通常2台しか
発電用エンジンを積んでいなかったのに、
基本的にアメリカの潜水艦は4台積んでいました。

これはアメリカの潜水艦は、通商破壊用ではなく、
艦隊決戦用兵器として考えられ、
戦艦や空母に付いてゆける速度で
長時間の運用可能な能力が要求されたからです。
この点は日本の海軍と基本的な考え方は一緒でした。

実際、先にも見たようにグッピー改造前なら
浮上速度で20ノット(37q/h)出て、長時間運行も可能だったようで、
巡航速度の空母や巡洋艦になんとかついて行くことができる、
という能力を持っていました。

逆にグッピー改造で浮上速度が落とされたのは、
戦後にはもはや艦隊決戦に使おう、
という考えはなくなったからかもしれません。




で、軍艦の機関室にある重要な装備がこれ。
蒸留水製造機、つまり海水から塩分を抜いて、真水にする装置です。

水の中に居る潜水艦が水不足、と聞くとなんだか妙ですが、
塩分を含む海水は飲料水に出来ませんし、
塩分による腐食増進効果があるため、エンジンの冷却用にも使えません。

このため、こういった蒸留水製造機で塩分を抜く必要があり、
それを動かすのには当然、動力が必要で、
これは燃料の余計な消費を伴います。

この結果、海の上の軍艦も、海の下の潜水艦も、
その中では真水は貴重品となるのです。
艦内にシャワーがありながら、
その使用が制限されてるのは、このため。

蒸留水製造機は、エンジンとは独立した機関なんですが、
なぜか潜水艦では常に機関室にあり、
イギリスのHMSベルファストでも機関室に置かれてましたから、
エンジンと連動するような何かがあったんでしょうか。

上のシャフト(軸)を接合するっぽい部分も気になりますが詳細不明。
右にはさらに変なパーツがつていますが…。


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