■潜水艦の整形手術



見学乗船用の橋は船体後部にあるので、そっちにまわりましょう。

大雑把に言って、この写真で灰色の部分が、
先に説明した船首部と同じ、薄い鋼板で出来たカバー、上部構造ですね。
その下の黒い部分が本体で、ここは耐圧船体(Pressure Hull)と
鞍型タンク部(Suddle tank)が合体して構成されています。
また、特に指令塔部の構造としては、319の数字のあたりに
ビヤ樽のような耐圧室が別に取り付けられていて、
その上にカバーの上部構造が乗っかっている形になってます。



これはサンフランシスコのUSSパンパニトにあった解説板ですが、
判りやすいので、こちらでも再掲載。

一番上が上部構造(Superstructure)、一種のカバー部で
全体的なスタイルがこれによって決まっているのがわかります。
が、これは構造的にはほとんど強度を持たず、
下にある耐圧船体部に上からかぶせてあるだけに過ぎません。
パソコンやAV家電のケースみたいなものです。
水中の抵抗落とすために、本体にとりつけるケース部だと思ってください。
ただし前後(縦軸&横軸)の舵はこちらに取り付けられているため、
艦の操縦に必要不可欠な部位ではあります。

で、真ん中が船体の本体、耐圧船体部で、厚い外板で水圧から保護され、
司令室はもちろん、ディーゼルエンジンや発電機、
さらにはモーターや船員の居住区がある部分。
戦艦で言えば心臓部(ヴァイタルパート)にあたる区画です。
ついでに司令塔部分が上に取り付けられた
別パーツになってるのも注意しておいてください。

その下が鞍型タンク(saddle tank)部で、上の耐圧船体の中心部、少し凹んだあたりに
パカッとはめ込むんですが、右下の図のように耐圧船体部を取り囲む形で付けられます。
鞍型といっても、上下逆さまなんですね。
その名の通り、潜水浮上に使うバラストタンク、そして燃料タンクがある部分です。

このタンク部がグルッと本体周囲を取り囲んでしまう、
という構造のため、アメリカの潜水艦の見取り図を描くのは、
かなりやっかいな事になるのです(笑)。



指令塔部を後ろから見る。
その下、本来は鉄板の甲板のはずですが、
保護用らしいゴムマットが敷かれてますね。

この角度から見ると、司令塔がいかにも滑らかなラインで
まとめられてるのがよく判ると思います。



参考までに、似たような角度から
もう一度USSパンパニトの司令塔を。
もはや完全に別物です(笑)



真後ろからみるとこんな感じ。
ちょっとスゴイな、という形になってます。

まるで航空機の主翼を縦にしたみたいな形状ですが、
主翼と違って左右の曲面は完全に対象で、
このため、ここを通った流れは大きな渦を起こさないはずです。

渦があまり起きなければ抵抗も低くなるので、
その分、高速化できる、という事なのでしょう。
(全く起こさないわけではない)
この後部の整流構造を追加したため、
従来より指令塔(Sail)は長くなっています。

その後部の一番上に見えてるヒサシのような部分は、
おそらくシュノーケルの排気口の保護板で、
潜水中に使うときはあの下にある排気用の管が上に伸びて行くはず。

ついでにいかにも薄っぺらな鉄板にどう見ても水圧に耐えられなそうな
ドアが見えてるのは、この外板はあくまで本体のカバーで、
潜水中は中に海水が入り込んでしまう構造だからでしょう。
完全に水密が保たれてるのは耐圧船体部と鞍型タンク部だけで、
ここが水圧に耐える必要はないのです。

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