■はやくも終盤戦



こちらはフランス生まれの発明家、
ヴェルロイ(Brutus de Villeroi/フランス読みだとヴィルファかな)が
1861年にフィラデルフィアで製作した、引き上げ作業用潜水艦の1/7模型。

ヴェルロイはフランス生まれの発明家なんですが、
その潜水艦の設計をフランス海軍に売り込んで失敗、
1853年にアメリカに渡って来た人物でした。
その後、アメリカでも潜水艦の売込みには失敗するのですが(涙)、
南北戦争が始まると、これは大チャンスとその売込みを再開します。

ちなみにヴェルロイは国勢調査の職業欄に
“産まれながらの天才(natural genius)”と
自ら書き込むような人物だったそうで、なんとなく、その、イタタタというか、
あまり関わりになりたくない人のような…。
こういうタイプの人って自分の失敗を
世間の無理解のせいにして、要らんウラミツラミを抱えるんですよね。

ちなみにサルベージ船なのに特にクレーンも何もないのは、
あくまでこれは水中の探索用で、実際の引上げ作業は
ここから潜水夫が水中に出て行って行なうため。
…あんまり、意味がないような…。

もっとも、これはあくまで北軍海軍の気を引くための試作機だったようで、
その試みは成功、見学に来ていた北軍海軍はこれを気に入ったようで、
ヴェルロイに一隻の潜水艦の試作を発注します。

これが南北戦争中の1862年に完成した
アメリカ海軍最初の潜水艦、アリゲーターでした。
(有名な独立戦争の潜水艦タートルは海軍設立前の艦。
どっちにしろ動物好きだな、アメリカの潜水艦…)

とはいえ、動力は人力で(涙)櫂を漕ぐ、というスゴイ構造の潜水艦でした…
さすがにそれでは、という事で後に人力スクリューになったのですが、
いずれにせよ、時速は7ノット、約13q、しかもおそらく浮上中の速度で、
潜水中はさらに低速になったと思われ、実用性は低かったでしょう。
つーか、潜水中に櫂でどうやって進む気だったのやら…。

この結果、最後まで正式採用扱いにならず、
しかも実戦参加前の運搬中に悪天候で沈んでしまったため、
USSの呼称がついていません…。

ついでに、この潜水艦も武装は無く、水面下からこっそり敵艦に近づいてから、
潜水夫が出撃、艦艇に機雷を設置してスタコラ逃げてくる、というものでした。
当然、停泊中の艦にしか攻撃できませんでしたから、
あくまで奇襲攻撃専用でございました。



詳しい説明を撮影してくるのを忘れたのですが、
確か19世紀初頭くらいの造船所風景。

右側の建造中の船の模型から艦底の中央を貫く背骨にあたる竜骨と、
そこからあばら骨のように連なる桁が船体を形づくってるのがわかるかと。

この構造は近代の船でもほぼ変わってません。
この上から甲板でフタをして密閉空間を造るのが
近代外洋船の特徴的な構造です。

司馬遼太郎さんは、この構造を酒樽のようなもの、
と説明してますが、竜骨の存在を別にすると、
確かに両者は似てるかもしれません。



その先にはシャレた展示空間が。
ただしカッターやら小型ヨットやらの展示ばかりで、
見てどうこう、というものではありませぬ。



こちらは移民船、というか大西洋横断船の二等船室の再現。
微妙に軍艦の水兵さんより扱いが悪い気も…。

まあ19世紀から20世紀初頭のヨーロッパからの移民は、
本国での生活が苦しくてアメリカ行きを決めた人たちやら
とにかく新天地で一旗上げてやろうといった連中ばかりですから、
この程度は織り込み済みなのでしょう。



そういった船で使われていた道具の数々。
意外と生活感あふれております。


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