■独立は大変だ



こちらは軍の太鼓打ち兵が使っていた太鼓。
ただし1790年代製との事なので、実際は独立後の製品です。

無線も拡声器も無かった時代には、
太鼓の音とリズムで部隊全体に指令を伝える、という役目があったそうで、
おお、8ビートのしびれるリズムだ!了解、波動砲発射!
といった感じに使われてたんでしょうかね。



こちらは非常に判りやすかったライフル銃身の展示説明。
左側のツルツルの内部構造のが従来の銃身で、
右の細かい線が入った方がライフル入り銃身です。
両者の外壁の暑さの違いにも注目。
強度の問題ではなく、おそらく当時の製法の関係から
ライフル銃身の方が厚めになったんじゃないかと思われます。

ライフル(rifle)は銃口内をグルッと回転するように薬室から銃口まで繋がる
何本かの線状の溝の呼称で、これを彫ることによって、
発射されたマスケット球に回転が与えられます。
この結果、弾の直進性が上がり、
狙った方向にキチンと弾が飛んでゆくようになるわけです。

ただしこれ、あっさり説明してますが、なんで回転を与えるだけで
直進性が上がるのかを厳密に説明しようとすると、かなり面倒です。
一応、ジャイロ効果でそうなる、と考えておけば問題ないのですが、
本気で説明するなら、ライフルの無い弾の動きと、
ライフルからの弾の動きを比べ、両者の持つ進行方向軸に対する慣性、
“動かしにくさ”の量を比較しないと理解できません。
さすがに大脱線になってしまうので、今回は見送らせてください…。

ちなみにライフルの歴史は意外に古く、マスケット時代からあるのですが、
球状のマスケットの弾では回転が小さい、つまり効果がそれほどでもない上に、
銃口から弾を押し込む先込め式の銃でこれを掘ってしまうと
弾を装填するのに抵抗となる、それでいて造るのは手間がかかる、
という事でそれほど普及しないで終わってしまったようです。

本格的に普及するのは現代のような
どんぐり型の小銃弾(ミニエー弾)が発明された19世紀以降となります。



こちらは独立戦争時代の大砲、フランス製の4ポンド砲。
1発撃った後、位置を戻して、清掃して、火薬と弾を込め、
再度狙いをつけて発射するまで、だいたい90秒前後かかったそうな。

ちなみにこの砲はフランスのいろんな意味で暴れん坊将軍、
ラファイエットが持ち込んだものらしいです。

フランス貴族だった彼は本来アメリカ独立とは縁もゆかりも無い人でした。
ところがアメリカ政府(仮)の対ヨーロッパ外交を任されていた
ミスター100ドル札ことベンジャミン・フランクリンにパリで会って話を聞いた後、
突然、自費で船を手配、義勇兵としてアメリカに渡り、戦争終結まで、
指揮官の一人として戦い続けます。
ちなみに、後にフランスは公式に参戦しており、
アメリカ独立戦争は厳密にはイギリスVSアメリカ&フランスの戦争でした。

この活躍から、今でもアメリカでは人気の高い人物なんですが、
基本的にはやや目立ちたがり屋で、
それほど有能というわけでもない人だったように思えます。

実際、フランスに帰国後、今度はフランス革命にも乱入、
貴族なのに革命側に回ったものの、
アメリカ人より、はるかに複雑な精神構造の(笑)
フランス人による政治的な駆引きについて行けず失脚、
ナポレオン登場後は隠居生活に入ってしまうのです。



最終的に独立戦争の決着をつけたヨークタウンの戦い前後の説明なんですが、
どうも地図が大雑把でよくわかりませんでした…。

おそらく右奥のチェサピーク湾にいるのが、
イギリス地上軍の救援に向っていたイギリス艦隊で、
これを防ぎとめてる左側がフランス艦隊、
その奥のヨークタウン周辺で戦ってるのが、
イギリスとフランス&アメリカ連合軍の地上軍でしょう。

ちなみにこの時の海戦、チェサピークの戦い(Battle of the Chesapeake)で、
フランス艦隊は、珍しく(笑)イギリスに艦隊に
優勢勝ちといっていい勝利を収めています。
双方致命的な損害は無かったのですが、
イギリス艦隊は最終目標の地上軍の救援に失敗、
この結果、救援も無ければ脱出も出来ない状態のイギリス地上軍は
降伏をよぎなくされるのです。

後にフランス革命後のナポレオン戦争で、
ネルソン率いるイギリス艦隊に散々な目にあわされるフランス艦隊ですが、
この段階では実力は互角だったんでしょうかね。

さらにちなみに日本人にはお馴染みアメリカ空母ヨークタウン1号&2号の名は、
この古戦場から取られています。

といったところが、独立戦争までの展示です。


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