■いろんな生活
こちらは戦争中の家庭生活、として、例の第二次大戦における女性の社会進出の解説が。
左の女性も戦時動員で工場で働いていたそうです。
その横には、もっと女性を、との見出しの下に、
16歳以上なら既婚、未婚問わず、という募集広告が出ています。
この広告に彼女は応じたのですが、問題はその先(笑)。
全く労働経験のない彼女が造っていたのは…
なんと、これ。
当時のアメリカの最先端兵器、近接信管(Proximity
fuse)です。
ちなみに日本ではVT信管とも呼ばれますが、これは開発当初のコードネームで、
アメリカでは通常は近接信管と呼びます。
そもそもVT信管(Variable
Time
fuze)は時間変更型ヒューズの略称で、
本来はレーダー式のこの近接信管の特性を、
時限式信管に見せかけて秘匿するための名称です。
すなわち日本でこの名が広まっているのは、
見事にアメリカにだまされた、という部分もありまして…。
あんまり使わないほうがいい気がしますよ、この名称。
で、対空砲において、もっとも重要なのが信管です。
通常、高速で飛行する航空機に直撃弾を与えるのは極めて困難です。
なので、弾頭に火薬を積み込んで爆発させ、
その周囲に居る機体を損傷させます。
これには通常、時限信管を使用し、一定高度まで到達したら爆発、
衝撃波と破片を周囲に撒き散らすようになってました。
が、当然、その命中は完全に運となります。
設定された爆発位置周辺に敵が居るかどうかは、
コントロールのしようが無いからです。
下手をすると、命中したのにそのまま主翼に穴を開けただけで素通り、
何も居ないところで爆発、というマヌケな展開となります。
で、その対策として考えられたのがこの近接信管で、
これ、中に小型のレーダー装置を積んでおり、
周辺に目標を捕らえると自動的に爆発します。
これなら敵の機体に損傷を与えられる可能性は格段に上がるわけで。
低周波警戒レーダーすら満足に運営できなかった日本から見ると
夢のまた夢、という兵器ですが、この点はドイツも開発に失敗してますから、
ほぼアメリカの独壇場となってます。
これによってアメリカ艦隊の防空能力は格段に向上、
日本の神風攻撃を押し留める最大要因となりました。
展示のものはおそらく40mm砲用のもので、
なぜか先端にあるアンテナ部分が欠損した状態です。
**訂正**
記事掲載後、第二次大戦時にはまだ40mm近接信管は無かったはず、
との指摘をいただきました。
確認してみたところ、確かにその通りで、
これは3インチ(76.2mm)砲のものだと思われます。
ついでにこのタイプは、そもそもアンテナが先端にないようで、この形状で正解みたい。
とりあえず、当時としては最新鋭、まさに最先端電子技術のカタマリだった、
この近接信管を、なんの経験も無かった女性工員が作れてしまった、
というあたり、アメリカにおける大量生産マニュアル化の
底力を感じますねえ…。
これまたアメリカの余裕を感じる大戦中の品々。
左は映画のパンフレットで、上で紹介されてる女性工員の息子さんが、
留守番してる間、おばあちゃんと一緒に映画を観にいって買ってもらったものだとか。
ちなみに映画はターザン。
先に書いたようにディズニーは1942年のバンビで一度映画から撤退してしまうのですが、
他の娯楽映画に関しては、普通に公開されていました。
ボガードのカサブランカの公開は1943年ですし、
ターザンはもちろん、吸血鬼だのミイラだのといったB級映画も
掃いて捨てるほど造られております。
右の夜間消灯キットは家の明かりが外部に漏れないようにする
いろんな道具が入っており、いかにも爆撃に備えた民生品…と見せかけて、
よく見るとゲームやパーティーに使えます、との説明が。
アメリカ人にとって夜間消灯はゲームやパーティーの流れだったのね…。
ちなみに左下に“見て”、と書かれてる丸いものは蛍光塗料を塗りこんだ紙らしく、
灯りに当ててから電気を消すと、ここが光るよ、とのこと。
まあ完全に遊び感覚です…。
さて、最後はこの部屋、アメリカの物語。
これは歴史的に重要なような、そうでもないような(笑)、
アメリカの歴史の節目節目に立ち会った人物のゆかりの品、
あるいは工業製品を紹介してるもの。
中はこんな感じに年代ごとに展示がわかれてます。
でもって、今この写真を見て、左端の妙なオブジェの存在に初めて気が付いた。
なんだこれ(笑)。
しまった、完全に見落としてたぜ…。
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