■車が社会なのだ



その66号線のジオラマに展示されていた1929年、
大恐慌の年製の(涙)オークランド セダン。
オークランドも聞かない名前ですが、戦前のゼネラル モーターズ(GM)
のブランドの一つで、シボレーに次ぐ、下から二番目だったものです。

かつてのGMブランドは露骨な階級制となっており(笑)、
値段が安い順に、シボレー、オークランド、オールズモービル、
ビュイック、そして最高峰がキャデラックでした。
ククク、シボレーから乗り始めた俺が、ついにキャデラックか…
というのが、単純明快な、かつてのアメリカンドリームだったわけで。

ちなみに、展示の解説によると、1930年代の大恐慌時期に、
第二のゴールドラッシュのごとき西部への大量移民が起きたそうで、
これはカリフォルニアに向う家族が、荷物を全部車に積んで移動中、
という設定の展示だそうな。
言われて見ると、中には例の石膏像が乗ってます。

しかし前輪のフェンダーの上の荷物箱、
こんなとこにまで積んでたんでしょうか。



こちらは1931年製のフォードAA型トラック。

この国道66号によって、アメリカの物流にもトラック輸送が加わり、
1930年代からすでに長距離輸送トラックが登場していたそうな。

ちなみにあのソ連国内ですら大量生産をやっちゃった(笑)
ヘンリー・フォードの置き土産というか、
無理やり持っていかれた資産というかが、このフォードAAトラックの量産ラインでして、
それを引き取ったソ連のGAZはこれをガンガンに量産しまくります。
(いわゆるGAZ-AA/NAZ-AA)

第二次大戦中、東部戦線をやたらとソ連のフォードAAが走ってるのは、
レンドリースの結果ではなく、
スターリンがフォードのソ連工場を乗っ取っちゃったからなんですね。
そもそもアメリカ本国では1932年に生産中止になってますから、
輸出しようにも現物がないわけで。



こちらは戦後、1949年のオレゴン州の道路のジオラマ。

右には1930年代に流行が始まった
ホットロッド スタイルの車が見えてますが、
これエルヴィス プレスリー主演の1957年の映画、
ラヴィン ユー(Loving you)で彼が乗っていた
フォード ロードスターの改造車だとか。

このころには、それまでのT型、そしてA型と単純明快な
ラインナップで、大量生産、格安販売で鳴らしたフォードも、
消費者のニーズに合わせ、多様な車種の開発に移行していました。

1932年、T型、A型と続いたフォードの主力車種の新型としてデビューしたのが
B型だったのですが、これは普通の4気筒シリンダーエンジンで、
後は従来通りのロードスターや、トラック型のバリエーションがあるのみでした。

が、フォードは同時にエンジンだけをV8に置き換えてしまった高級タイプ、
18型フォード(Model 18)という新しいタイプの車種を投入したのです。
これが若者に受けたようで、V8エンジン搭載の18型だけで、
デビューの1932年に30万台近くを売り上げます。
前の型であるA型の売り上げが年間100万台以下だった事を考えると、
この差別化による新しいV8エンジンの車は、
かなり広く受け入れられたと見ていいでしょう。

で、このV8エンジン搭載フォードはホットロッドの改造車のベースとして
大人気だったようで、上の車もそういった一台だったみたいです。

この車輪のフェンダーとエンジンカバーがないのは
お金が無くて買えなかったからではなく、
軽量化と出力を上げたエンジンの冷却が目的。

が、ここら辺りはだんだん手段が目的化して(笑)、
フェンダーを外したなんだか妙なスタイルの車がホットロッドスタイル、
という事になって行くのは、どこの国でも大衆文化の宿命でしょう。

一番奥はアメリカの長距離バスとしてお馴染みの、1947年製グレーハウンド。
アメリカの長距離バスは、終戦直後から運用が始まっていたそうで、
この銀色の車体に横のラインが入ったデザインは
シルバーサイド バスと呼ばれ、当時最先端のモダンなデザインだったそうな。





こちらのバイク軍団はインディアン モーターサイクルの 1941年型(手前)と、
ハーレーダビッドソンの1942年型(奥)だとか。

ちなみに、奥のハーレーに乗ってるお兄さんは、
当時流行っていたドイツ軍人みたいな帽子を被っており、
現在のセンスだとハードゲイの方かしら、
と思っちゃいますが、あれは不良のシンボルです(笑)。
このハーレーもよく見るとライトが左右に増設されてる改造車ですね。
ちなみに上がライトで、下の丸いのは多分クラクション。

ここら辺り、さっきのホットロッドといい、日本だと佐倉の国立歴史民族博物館が
暴走族のヤンキー車を維持保存してるようなものですから(笑)、
アメリカという国の懐の深さは驚きです。

ついでながら、1942年型だと、戦争中にアメリカ陸軍が使ってたのと
ほぼ同じタイプのはずですが、確証はなし。

こんな感じにアメリカでは大戦後にバイクのブームが訪れ、
このハーレーとインディアンが二大メーカーとなるのですが、
さらに当時はまだまだメーカーが健在だったイギリスからも輸入されて
それなりの数が売れたとのこと。


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