■アメリカンな文明生活



左はマーテル社のバービー人形ですが、おそらく1号機、
初代バービーでしょう。

1959年3月に発表された着せ替え人形ですが、
当時としては画期的なハイティーン、
10代後半の年齢設定を採用、大ヒットを飛ばします。
オシャレもすればドライブもする、デートだってOKよ、という、
文字通りママゴトはもうオシマイ、という
世界観を産み出したお人形さんで、
アメリカの女の子から圧倒的な支持を受けるのです。

で、その右は男の向けのお人形さん(ハズブロー社は否定(笑))、
あしたのジョー、姫路城と並ぶ世界三大ジョ−の一人、G.I.ジョーさん。
ちなみに首からぶら下げてるのはスマートフォンでも
成田山の巨大お守りでもなく、認識票(Dogtag)です。

日本ではイマイチ人気が出ないジャンルですが、
ハズブロー社が1964年に発売した12インチ(30.5cm)アクションフィギュアは
さまざまな武器を持たせて遊べたため、
アメリカでは大ヒットとなりました。
ちなみに、ハズブローによると、これは人形ではない、
アクションフィギュアなのだ、という事です。

このAction figureも日本語化が難しいのですが、
あえて言うなら動く彫像、という意味でしょうか。
あるいは、遊べる戦士の像、といったニュアンスでしょう。

1964年の発売当初は、これが大ヒットとなるのですが、
ところがドンスコイ、それはベトナム戦争真っ只中で、
戦争への嫌悪感から、間もなく人気は急降下となります。

その結果1968年から一般市民ジョー(笑)とでもいうべき
ジャンルが開拓され、写真のはその中の一人、
1970年に発売された探検家(land adventurer) ジョーなんだそうな。

ちなみにオモチャが先にあって、それを宣伝するための
アニメや漫画を造って商品の宣伝を行なう、
という展開を世界で最初にやったのがおそらくハズブローでした。
このG.I.ジョーは1967年のコミックブックの展開から始まり、
後にはアニメにもなって、商品販売を大きく支えて行きます。
日本では1970年代後半から取り入れられる手法です。

ただし、この話は少々ややこしくて、そもそもG.I.ジョーのキャラクターは
戦争中の初代と戦後のハスブロー世代で、大きく二つに分かれます。

初代は大戦中にアメリカ陸軍公認キャラクターとしてDave Bregerが
執筆していたものですが、これは後のGIジョーとは全く別物。
そもそもギャグ漫画(カートゥン)ですし、メガネを掛けて、
なんとも頼りない小柄な人物がジョーなのです。
このGIジョーは、名前が同じだけで、ハズブローのものとは何の関係もありません。
この辺りは、アメリカ人でも勘違いしてる人が多いので要注意。

その後、ハズブローが自社のオモチャの売り出すために
1967年から展開を始めたのが、現在のGI ジョー コミックとなります。



こちらは大恐慌直前、1927年ごろの電気掃除機。
ただし、これは業務用の大型のもので、家庭用ではないようです。

アメリカでは最初、業務用の清掃機器として電気掃除機が登場、
その後、家庭にも普及して行ったのだそうな。



お次はこれ。
女性が熱心に見てるのはドールズ ハウスです。
1/12スケールの巨大なもので、
フェイス ブラッドフォード(Faith Bradford)さんという女性が、
子供の頃から作り始め、大人になってから手を入れ続けたものだとか。

これがスミソニアンに寄贈されたのが1951年、彼女は1880年生まれですから、
実に71歳になるまで維持管理していた事になります。
ちなみに彼女はアメリカ国会図書館に勤めていた地元の人で、
寄贈後もしょっちゅう博物館に来ては状態をチェックしていたそうな(笑)。

ちなみに屋根裏部屋を入れると5階建て全23室ですが、
あくまで個人邸宅の設定で(笑)お父さんとお母さんのほか、
10人の子供に、遊びに来ているおじいちゃん&おばあちゃん×2セット、
使用人が5人にペットが20匹居るそうな…

ちなみに私は両親と子ども8人までは見つけたものの、
残りの2人がどうしても見つからず。
使用人とペットに至っては全くよくわかりませんでした…。



中はこんな感じ。
バービーがアメリカを乗っ取るまで、
アメリカの女の子の正統派人形遊びがこんな感じだったのでしょう。

ちなみに基本的に家具も人形も市販のものを使ってるようですが、
一部はブラッドフォードさんが独自のチューンナップをしてるみたい。
部屋に張られてる縮小絵画とか、今ならパソコンとプリンターで
一発製作ですが、当時は相当手がかかってるはず。

で、各部屋の前には解説の文章が貼られており、
中央のデカイ部屋がパパとママの部屋で、奥に見えてるのがママです。
で、あれ、今読んでみたら、奥に揺りカゴがあって、
そこに双子の赤ちゃんがいるそうな。

なるほど、これで子供は10人だ。いや、わかるか、そんなの…。

余談1 なぜかは知りませんが、日本語ではドール ハウスと
書かれる事が多いものの、正しくはdoll's house、ドールズ ハウスです。
ドール ハウスだと典型的なアタマの悪い連続名詞型の
日本語英語に聞こえるので、あんまり使わない方がいいような。
まあ、意味は通じるでしょうけどね。
(ちなみに文法が日本語と同じ韓国の皆さんもよく連続名詞をやる)

余談2 女の子のオモチャで1/12という
正確な縮尺があるのが意外な上、中途半端な縮尺に見えますが、
これは長さが英米式のフィート、インチのためです。
インチ(2.54cm)は12進数で、12インチで1フィート(30.48cm)なので、
1/12にすれば1インチが1フィートとなり、計算が速いのです。

ついでにプラモデルで1/12、1/24、1/48、1/72と
12の倍数が多いのも同じ理由です。
1/24なら1インチが2フィート、1/48なら1インチが4フィートとなります。

ついでに英米がインチ・フィートを完全に捨てられないのは、
モノを造る時の計算がとても楽だからです。
例えば1mをキレイに分割しようとしたら、
2分割(50cm)が普通で、後はちょっと無理をして4分割(2.5cm)と
8分割(1.25cm)がせいぜいでしょう。
それ以外の分割は計算が面倒どころか、
正確な数字は無理数になってしまいますから、
図面に起こすことができません。

ところがフィートだと12インチですから、
2分割(6インチ)、3分割(4インチ)、4分割(3インチ)、
5分割(2.4インチ)、6分割(2インチ)、8分割(1.5インチ)、
10分割(1.2インチ)とやりたい放題になります。
とくにキレイに3分割できる、というのはモノを設計する場合、
かなり強力な武器になるのです。
私だったら、迷わずインチフィート法を採用しますね。

逆に言えば戦車系の模型に多い1/35というのは、
英米の規格ではない、とわかるわけで、
興味のある人は、その歴史を調べて見てください。


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