■アメリカの絵



まだしばらく肖像画の陳列が続きます。
どうも積極的に購入したというより、寄贈された作品が肖像画ばかりだった、
という事情によるらしいですが、見ていてあまり楽しいものではありまぬ。

ただ各展示室壁の内装の配色は、
どれも見事でしてアメリカの美術館恐るべし、と思いました。



美人三姉妹、という感じですが、肖像画は大抵本人かその関係者が
画家に発注するものですから、商売のルール上(笑)、
3割方は美人に描かれてると思っておくべきでしょう。

21世紀に入って普通に行なわれるようになった
画像加工ソフトによる顔色の修正と欲望のベクトルの向きは同じでしょうか。



なんだかよくわからんが、個人的には好きな絵。

てっきりアフリカ辺りの光景だろうと思ったら
、左奥にアメリカン インディアンの皆さんと、
イギリス殖民地の住人らしき連中が見えてますから、
ひょっとしてこれ、アメリカ大陸でしょうか。

作者はアメリカ人のエドワード ヒックス(Edward Hicks)さんで、
平穏な王国(Peaceable kingdom)という題でした。
題名と絵柄からして、作者の人柄が伺えます(クェーカー教徒らしい)。

1834年の作品とされてましたから、その時代にこんな絵を描いていた、
というのはスゴイ時代の先取りのような気もします。
ただし半分は宗教的な意味あいの絵らしく、
言われてみればロシアの宗教画、イコンに描画手法が似てなくもないような。
もっともロシア正教のイコンにライオンやヒョウは出てこないでしょうけども…。

あれ、となるとあのイギリス人の集団はクエーカー教徒か。



静寂に沈む美しい空間。




さて、いよいよ私の好きなアメリカ近代絵画の間にやってきました。

まずは近代アメリカを代表する画家の一人、
トーマス・モラーン(Thomas Moran)の作品、
ワイオミング州グリーンリバーの岸。
1870年ごろの作品らしいです。

モラーンは、当たり外れの大きい人で、大抵は安っぽくてケバケバしい、
21世紀の日本でもその亜流が掃いて捨てるほど見られる
ファンタジーっぽい絵を描く人なんですが、
時として大ヒットホームランハットトリックを決めてきます。

ちなみに、この人も同じような構図の作品を乱発する
典型的な商業画家&版画家で(笑)、
この場所を題材にした、同じような絵が複数存在してますね…。

そんなモラーンは日本ではほとんど無名ですが、
(というか19世紀末から20世紀初頭のアメリカ画家は日本じゃ人気が無い)
アメリカでは人気の高い人でして、ニュースなどで登場する
ホワイトハウス内の写真を見ると、
いくつか彼の作品が架かっているのが確認できます。

この絵は知らなかったのですが、とても光の美しい作品でした。
ちなみにモラーンはこういったアメリカの大自然の絵を多く残してますが、
イギリスからの移民で、さらにはニューヨーク在住だったようです(笑)。


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