■甲殻移動体

最初に断っておくと(予防線とも言う)、枠台/フレーム(Frame)、車台/シャシ―(Chassis/フランス語)、車体(Body)、モノコック/単体構造(Monocoque/フランス語)、ユニボディ(Unibody)といった自動車用語には厳密な定義が無く、英語圏の連中とラテン語圏の連中が同じ言葉を別の部品に使って居たり、英語圏の中でも専門家と自動車会社では違う意味で使っていたりします。さらに言えば何も考えずにカタカナ英語を連発する日本の自動車評論家さんなどもあって、かなり混沌とした状況になっています。

そもそも自動車は非英語圏で発明され発展しました。そして初期の自動車はほぼ馬の無い馬車として造られており、その構造と部品名称に強い影響を受けています。よって各部の名称は基本的に非英語圏の馬車から取られたものです。ところが戦後、英語圏が自動車文明&文化の中心になり英語が流入、そこに航空産業で使われていた構造や用語が乱入して来て、一気に混沌化します。よって筆者ごときには、この混乱に対し打つ手がありませぬ。このため用語の正確な意味、各部の呼称が決めにくいので、この記事ではWeb版ブリタニカの記述(さすがに15版は古すぎるので)を基本とします。そもそも工学的に意味のある名称でも無いし。

では本題に入ります。
そもそも馬の無い馬車であった自動車の設計は当然、馬車の構造から強い影響を受けています。このため当初は枠台車体構造(Body on frame)が一般的であり、これは戦後、1970〜80年代辺りまで多くの自動車の基本構造になっていました。下の図では左側の構造がそれです。車体強度の維持は底に置かれた枠台(Frame)が受け持つので一種の脊椎動物のような構造であり、筆者は内骨格構造と呼んでおります。



この構造では車両の骨格と言うべき枠台(Frame)が最初にあり、必要な部品は全てこの枠台に取り付けられます。この枠台に車体以外の必要な部品を付けた状態を車台、シャシー(Chassis)と呼ぶのです。そのシャシ―に車体(Body)を上から被せれば完成です。枠台(フレーム)、そして車台(シャシ―)が基本部品としてあり、その上に単なる箱の車体を載せる構造は大型の四輪馬車(Coach)そのままですね。まあ馬車にエンジンは無いですけど。

当然、車体は只の薄っぺらい箱であり、車両の外観を決めるだけの部品に過ぎません。よって車体を変えるだけで、幾らでも違う形の車が造れるのです。さらに車体は車体強度に関係ないので屋根をぶった切ってオープンカーにしちゃうとかも簡単に可能となるのでした。このためその手の商売大好きだったアメリカ車ではかなり後になるまで採用され続けました。アメ車でよく見るシャシ―が共通、というのはそういう意味です。

対してモノコック(Monocoque)構造、英語圏では主にユニボディ(Unibody)と呼ばれる構造では車体(Body)そのものに車体強度を持たせています。すなわち枠台(フレーム)も車台(シャシ―)も持ちません。先に見た枠台車体構造が脊椎動物なら、こちらはカニなどの甲殻類に近い物だと思っていいでしょう。よって個人的には外骨格構造と呼んでいます。箱型の構造のため強度的に有利であり、上手く設計すれば要らぬ物をどんどん減らし軽量化の面でも有利となります。このため軽くて頑丈な構造が必須だった航空機で広く採用されていた構造でした。

でもって読みやすさを優先すると言う名目で詳細は省きますが(明確な手抜き)、基本的に車体強度は高い方が安全性でも性能面でも有利に働きます。よってこの点で有利なモノコック/ユニボディ構造が20世紀末以降、主流になって行くのです。ただし従来の車体設計のノウハウが通じないしその製造は大変だしで、主流になるのに時間が掛かりました。それでも安全面の強化の問題などから、現在生産される自動車のほとんどはモノコック/ユニボディ構造になっています。

ただし例外もあり、本気で走る四輪駆動車では未だに枠台車体構造が主流です(通常はラダーフレーム)。これは車体が悪路などで振動を受け続けた場合、モノコックだと車体全体が歪んで来ますが、枠台構造だと力を適度に逃がせるためダメージが一定内に収まるからだと思います。実際、世界最強の軍用車、ランクルは未だにラダーフレームで世界中を走り回ってますし。

では脱線はここまで。本題に戻りましょう。


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