お次はスチームパンク兄貴大爆発な蒸気自動車、スタンレー スチーマーE2型(Stanley steamer model E2)。1902年から1924年まで存在したスタンレー・モーター・キャリッジ社(Stanley Motor Carriage Company/スタンレー発動機馬車の意味)の製品。

すなわち電気モーターでも内燃機関でも無い、外燃機関、蒸気機関によって走る自動車です。アメリカでは19世紀後半に大型の蒸気トラクターがそれなりに普及しており、スミソニアンや大英博物館でその現物が見れるんですが(これも宮崎駿監督版 名探偵ホームズに出て来た。「青い紅玉」で教授が運転してたヤツ)、蒸気機関の乗用車まで生産販売されていたのでした。うーん、スチームパンク。ちなみにトヨタ博物館はもう一台、アメリカ製の蒸気自動車を持っているはずなんですが、これも今回の訪問では見かけず。

展示の車両は1909年製、すなわち大量生産の使徒、フォードのT型がデビューした翌年の製品で、その時代に未だに需要があったのか、という驚きがあり。 当然、水を沸騰させる火力は石炭ではなく初期にはガソリンの、後期には灯油のバーナーが使われていたようです。ボンネットが丸っこいのはここにボイラーが入っているから。前後に動いて車輪を駆動するピストン部は運転席の下にあるようです。

蒸気機関は爆発燃焼を伴わないので静かであり、ギアもクラッチも不要で操作も簡単だったため一定の需要があったとされます。さらに当初は馬力不足のガソリン車より高速だった事もあり、それなりの需要があったようです。ちなみに1906年に当時の自動車速度記録をスタンレーの蒸気自動車、ロケット号が叩き出しています(博物館の解説ではこの車が出したような書き方だが違う)。余談ながら翌1907年にあのライト兄弟の天敵、グレン・カーチスがバイクでその記録を破ったのですが二輪という事もあって非公認記録扱いとなっています。

ただし調べてみると1902年から24年まで、年間生産台数が800台を超えたことが無く、最終的に1万台の生産に終わっています。1910年代に入るとT型フォードの価格破壊が進み、約8倍の価格差となった事(最安値で500ドルvs4000ドル)、始動に必要な蒸気圧を得るのに20分近く掛ったことなどの欠点が致命的だったようです。

しかし燃焼装置を石炭から石油バーナーにするだけでこんなに小型化できるのか、蒸気機関。これは意外な驚きでした。世の中のスチームパンク、何か根本的に間違ってない?
 


ベイカー エレクトリック(Baker Electric)。その名の通り、1902年製の電気自動車です。ベーカー自動車(Baker Motor Vehicle)は1899年から1914年まで存在した電気自動車製造会社。

以前、スミソニアン旅行記でも述べましたが、20世紀に入った直後からフォードのT型が世界を席巻するまでアメリカの自動車にはかなりの電気駆動の製品がありました。これまたギアもクラッチも要らないので安価で生産でき、静かでしかも臭いガソリンが要らない、という事で女性にも人気が高かったようです。

ただしこれも蒸気機関と同じく、ガソリンエンジン搭載のT型フォードとの価格競争に敗れ消えて行く事になるのです(1910年代に2800ドルしたらしい。蒸気自動車よりは安いがT型に比べるとほぼ5倍。勝負にならないだろう)。


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