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![]() そしてベンツが1894年から本格的に販売を始めた四輪量販自動車、ヴェロシィピード、通称ヴェロ(Velocipede/Velo 英語読み。ドイツ語発音は不明。本来は動力が無い車輪付の乗り物を意味する名詞。手漕ぎ式のトロッコやペタルの無い子供の三輪車なども指す)、エンジン排気量は1045tと僅かに大きくなり、前輪にはサスペンションも入って近代的な車の構造にさらに近づいています。プーリーベルト駆動ながら二段変速だったとされますが、ギアの構造はよく判らず。その先は相変わらずデフを介してチェーン駆動ですけど。ちなみにベンツは四輪自動車のハンドル構造でも特許を取っています。展示の車両、レプリカの表示は無かったのでオリジナルでしょうか。 ベンツはその前年、1893年からヴィクトリア(Victoria/これも英語読み)と言う1730ccの大形エンジンを積んだ四輪車の製造を開始していたのですが(市販で量産された最初の四輪ガソリンエンジン車)、高価であまり売れなかったらしく、以後、このヴェロがベンツの主力商品となって行きます。後に1898年にエンジンの大排気量化に伴う大幅な改良があり、以降のモデルはヴェロ コンフォータブル(Velo Comfortable)の名で販売されたようです。こちらは1901年まで生産が続き、初代ヴェロと合わせて1200台前後が生産されました(ただしこの辺りは諸説入り乱れてる部分があり。当記事の記述はメルセデス・ベンツの公式ホームページによる)。 ちなみにエンジン周辺とか結構、形状が異なりますが、宮崎駿監督版名探偵ホームズで、ホームズが乗っていた車のモデルは多分これだと思うんですよね。縦回転に変更されたフライホイールでエンジン始動してますし。 ![]() こちらはフランス製の三輪車、ド・ディオン-ブートン(De Dion-Bouton tricycle) 。安価な事もあって大ヒットしたらしく、最終的に1万5千台以上が販売されたようです。 解説板には1 3/4HP トライサイクルなる名前が入ってましたが、トライサイクルは単に三輪車の意味で1 3/4HP はエンジン出力の数字。これは後で詳しく見る徴税馬力の数字の可能性が高いですが、確認できず。ちなみに一人乗りですが、これにリヤカーのような牽引荷車を連結、そちらに二人程度まで人を乗せて走る、というのが一般的だったとか。 展示の車両は1897年製ですが、ド・ディオン-ブートンの三輪車は1894年から発売が開始されており、徐々にエンジン馬力を上げながら1901年まで製造が続きました。この間、エンジン以外には大きな変更は無かったと思われます。ちなみによく見ると足漕ぎ用のペダルがあり、ひょっとしてガソリンが切れたら人力でも走れたんですかね。 ![]() 1898年のフランス製自動車、パナハード・エト・レヴァッソー 6HP(Panhard et levassor/英語読み/フランス語発音は不明。展示板にはパナール エ ルヴァッソールとなっていたが、恐らくパナール イー リヴェソールといった辺りかと)。 この6HPは徴税馬力でしょう(後述)。2012年にルノーに吸収合併されたパナールの前身となる自動車製造会社で、当初、ダイムラー・ベンツと提携、フランスにそのエンジンをもたらし、車体を独自開発していたようです。 現在の円環式のハンドル、クラッチを伴うギアボックスとシフトレバー、そして前部エンジン&後輪駆動(FR)といった構造はこの会社の発明によるものです。フランス、ホントに技術的に初期の段階では革新的なものを次々と生み出すんですよね。その後、航空機、自動車ともに平凡になっちゃうのはなんで。 展示の車も前部エンジン、後輪駆動と言うパナールの先進的な構造を引き継いでいるのですが、見れば判るように後輪はチェーン駆動。エンジンの回転はギアボックス(当然運転席のシフトレバーの真下にある)まではシャフトで、その先はデフを介してチェーン駆動となっていました。その辺りはさすがにまだまだでしたが、邪魔なエンジンを前部に搭載する事で、キレイに四座席を確保できる構造は画期的だったと思います。 ついでに言えば、パナール社は1894年に開催されたパリ・ルーアンラリーで優勝、以後、当時大流行となった長距離レースで勝ちまくっています。 ![]() 1902年製のオールズモビル カーブド ダッシュ(Oldsmobile curved dash)。量産化によって1907年までに19000台以上を生産、その低価格化によって人気となった車です(翌1908年にオールズモビルはゼネラルモーターズ、GM傘下に入る)。原始的ながら生産ラインも造られており、最初の大量生産自動車、とも言えるでしょう。1908年にT型でフォードが殴り込みをかけるまでは、この車がアメリカを代表する車だったと思われます。ただしT型は1500万台(やや自称あり)造られたので、まさにケタが違うんですけどね。 ちなみにほぼ同期であり、フォード社を立ち上げる前のヘンリー・フォードが設計したキャデラックのモデルAをこの博物館、持っているはずなんですが、今回の見学では見つけられず。なんで? |