周囲は真っ暗。ヘッドランプの灯りを頼りに進みます。日の出前に山に入るのは20年ぶりくらいでちょっとワクワクしますね。昔は豆電球で直ぐに電池が無くなる、あまり明るくない、無駄にデカい、といったヘッドランプしか無かったのですが、今の時代はLEDのおかげで戦争でもやる気かという明るさで小さくて軽いヘッドランプが簡単に確保できます。いい時代です。 大清水口から一ノ瀬までは建設放棄された尾瀬に向かう自動車道の一部が今も残されており、このため4m以上の幅の整備された砂利道が続き、灯りさえあれば夜間でも危険は無いでしょう。この間の西表島のジャングル散策みたいなもので、全体の半分近い距離は極めて歩きやすいモノとなっております(あくまで距離で。この後から一気に高度を稼ぐので時間で見ると全体の1/3程度)。この整備された道を利用してシャトルバスが走ってるわけでです(ここも自家用車の進入は禁止)。 ちなみに建設放棄された後もここは群馬県の県道1号の一部のままとなっています。さらに言えば山道に入った後までも書類上では県道1号として続いています。これは例の沼田会津街道に沿って自動車道を造ろうとしていた名残でしょう。ただし自動車道の建設が放棄された後もなぜか県道の指定は生きており、このため一ノ瀬休憩所から沼山峠に至る約6qの旧街道区間は登山道&木道による岸辺の遊歩道しか無いのにこれも県道1号なのです。登山道が県道になってるのって極めて珍しいと思われ、少なくとも私は他に例を知りません。ついでに言うと登山道のままの旧街道部分は恐らく東京電力の土地だと思うんですが、その辺りが法令上どうなっているのかも謎です。 **追記 後ほど登山道を県道としてしまう例は他県でもある、との指摘を受けました。いろいろ調べてみた所、確かに他にも例がありました。どうも計画途中で建設が打ち切られてしまった道路にこういった「負け惜しみ県道」のような物が多いみたいです。 出発から約1時間ほどで一ノ瀬の休憩所に到着。既に空は明るくなって来ました。もうヘッドランプは不要でしょう。左に看板が見えるようにシャトルバスが1時間に一本前後の頻度で大清水との間を往復してます。全体の半分近く約3q以上の距離、高低差では1/3を移動出来てしまうのでこれを使えば多少は楽ですが、先に述べたように本番はここからなのです。 ちなみに自販機があるので、飲み物はここで買えば荷物を少なくできるでしょう。私は知らなかったのでここまで1.5リットル分の飲み物を持って登って来たのでした…。 その先でかなり本格的なコンクリート製の橋を渡ります。尾瀬沼のすぐ横までブチ抜く予定だったこの道路は自然保護の観点から最終的に計画が放棄されるんですが、実際はかなりの所まで建設が進んでいました。田中角栄の大蔵大臣就任に始まる日本が最大級に馬鹿だった時代の負の遺産でしょう。あの時代のど真ん中を生きる羽目になった司馬遼太郎さんの苦労が思い出されます。 その先から左の山中に入る細い道が尾瀬沼に向かう登山道。というか、例の沼田と会津を結んでいた旧街道でしょう。ただしここ、先の自動車道のなれの果ての周囲には何の案内も無く、一瞬、見落としそうになりました。既に明るくなっていたので気が付きましたが、真夜中に来てたら見失って迷ったかも。 ちなみにこの奥に入山者を数える赤外線探知機らしきものがあったのですが、良く見れば太陽電池駆動。この時間帯だと数えられずに入山しちゃった可能性あり。あるいは夜間は充電池駆動?赤外線センサーなら夜でも反応しますからね。 そこからは整備された登山道が続きます。尾瀬一帯は東京電力の努力もあって、どこもかしこも整備された登山道となっており、靴さえしっかりしたものを履いていれば、それほど苦労無しに登れます。そして先に述べたように、こうして完全な登山道になった後もここは群馬県県道1号なのです。すげえぜ群馬県。 |