まずは以下の地図を見ながら話を進めましょう。



2017年の札幌旅行記で述べたように、日本の100万都市において札幌は極めて特殊な街となってます。
2020年現在、東京まで直結された新幹線が無い、そして半径500km圏内に別の100万人都市が無い、それどころか約530q離れた仙台に至るまで人口50万人を超える都市すらない、という完全に孤立した100万都市であり、これが札幌の街の特殊性を生んでいます。そして、その次に特殊なのが、今回の目的地である仙台なのです。

まず東京以西の100万都市では、直線距離で半径200km以内に必ず別の100万都市を持つのに、仙台の場合は最も近い大都市である東京まで約300q近い距離があります。さらに言えば、半径150q以内に人口50万人以上の街も無く、最も近い都市である新潟(約160q)は山脈に遮られ、直接の往来が出来ません。よってこの孤立から独自の文化圏、商業圏を持つことになりました。

そもそも日本の大都市は東京から北九州、博多の間に集中しており、そこに属さない仙台と札幌は極めて特殊なのです。特殊である、という事は見て面白いものが多い、という事でもあり、実際、仙台はとても興味深い街でした。

ここで仙台と筆者の居住地である東京の位置関係を確認して置きましょう。直線距離では先に述べたように約300qほど、新幹線の営業キロはそれより少し長い約352kmほどです。これは東北本線と新幹線が山間を縫いながらも極めて効率よい経路を取っている事を意味し、並行して走る古代からの奥州街道が、長い年月をかけ、もっとも近距離で効率よく仙台に至る道を探し当てた結果でもあります。

ちなみに首都圏の西隣の大都市、名古屋は直線距離だと仙台より近く約265qほどなんですが、こちらはグルっと海沿いに大回りする東海道沿いの経路なため、新幹線の営業距離は100km以上長くなって366km、すなわち仙台までとほぼ同じになってしまうのです。このため、新幹線で移動の場合、東京から名古屋、東京から仙台はほぼ同じ時間感覚になります。

余談ですが、この東海道の遠回りを避け、より最短距離に近い経路で東京と名古屋を結ぶのがリニア線の計画です。あれ、いかにもリニアが高速みたいな話ですが、実際は営業距離も約80q短くしている(約286q)という反則技を使っての時間短縮です。80q距離が短縮されるなら、普通に新幹線でも30分近く時間短縮が可能なのですよ。男だったら、新幹線と同じルートで勝負しろよ、と個人的には思ってます。まあ、リニアの性別は私も良く知らんのですけども。

さて、その仙台ですが、首都圏に生まれ育って未だにしがみ付いてる人間の感覚だと、東北の首都であり、こここそが東北であり、東北である以上、街を出て自転車で5分も走れば津軽海峡冬景色で、ヒグマがクロールで泳いでるのが見れる、と思ってしまいます。
が、実際は仙台から青森まででも直線距離で280q、東京〜名古屋に匹敵する距離があり、ヒグマがバタフライで泳ぎながらニシンを獲ってるのが見れる(筆者の個人的願望を含みます)下北半島先端までは300q以上、すなわち東京〜仙台間とほぼ同距離なのです。

すなわち仙台といってもまだまだ東北の入り口に過ぎず、その先、津軽海峡までさらに長大な国土が広がっていることになります。こういった事実に驚愕する度に日本って広すぎ、というか細長すぎと思うところですね。実際、鹿児島〜札幌の直線距離、約1600qはヨーロッパにおけるベルリン〜モスクワとほぼ同距離です。すなわち戊辰戦争で鹿児島を出て函館まで行った黒田清隆とかは、ちょうど第二次大戦におけるドイツ中央軍団と同じような距離を移動して戦争したことになります。逆もまた真なりで、ソ連軍も同じ距離を移動してベルリンに殺到したわけですが。

こうして見ると東北の広さが今さながら痛感され、そしてこの一帯の人口の少なさもまたちょっと驚異的な数字になってます(青森、岩手が共に130万人弱、秋田県は100万人を僅かに切っている。ちなみに仙台市の人口が約108万、周辺部を合わせた都市圏でなら約150万だから、最北端の三県は、仙台都市圏より人口が少ない事になる)。

これは関東平野から西に住んでいる人間にとっては別世界と言ってよく、いずれ機会があれば、一度秋田県辺りを車で南北に走ってみたい、と思ったりしております。そもそも私、地上から日本海を見たことが未だ無いですし。

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