前回、正面方向からの写真が無かったクーパー・クライマックスのT53。 ホンダが1964年のF-1参戦のために参考用に購入した車です。ただしホンダは最先端のモノコック車体を採用したのに対し、これは鋼管フレーム構造ですから、やはりそれなりに独自の道を進んでるのが当時のホンダなのでした。 この車はエンジンルームまでカバーで覆ってるのですが、モヒカン刈りのようにその中央に凸部があります。 写真で白く見えてる部分ですが、これの存在理由がよく判りませぬ。キャブレター周りの機材、吸気筒などがカバーの中に収まり切れなくて凸部ができたのか、と思ったんですが、カバーを外した写真を見ても、この部分には特に何もないのです。 この時代、リアウィングも無いのにここに空力的なパーツを置いても無意味ですし、どっちにしろ気流の安定を狙ったにしては太すぎます。…うーむ、なんでしょうね、これ。なんかカッコいいから、というオシャレさん設計ですかねえ… これもまともな写真を載せて無かったホンダ第一期F-1最後の車、RA301。 この1968年からF-1は空力による設地圧力、カタカナ英語で言う所のダウンフォースを稼ぐ工夫が投入され始め、ホンダもリアウィングと車体前方のクサビ板を取り付けていました。 このため、なんとなくイカっぽい印象があって、正直、あまりカッコいい車では無いですね。 ちなみに今回も展示が無かった空冷F-1、RA302は問題だらけの殺人マシンですが、カッコだけは良くて、一度は現物を見てみたい所。この博物館、持ってるはずなんですけど。 フロントの接地圧力、ダウンフォースを稼ぐのは後年のような翼断面を上下逆にしたいわゆるウィングではなく、ただの板です。 これを斜めに傾けて取り付ける事で真正面からの風圧を受けて車体を下に押し下げタイヤに接地圧を与えてます。当然、空気抵抗もデカいので、後にウィングが主流になるとその後ろに取り付けられる逆フラップに進化して単体ではほとんど見られなくなります。ただし先端部をクサビ型に傾けて接地圧を稼ぐ機首部などは、かなり後の車でも見られた設計です。 でもって、こうして機首部に空力パーツを付けるなら、ラジエター用の空気取り入れ口を塞いで、なるべく大きなウィングを取り付けたいわけです。この結果、F-1のラジエター用空気取り入れ口は胴体横に移動することになりました。 この機首部から胴体横への空気取り入れ口の移動は、それ以前に戦闘機の世界で機首部へのレーダー搭載によって起きていた現象であり、その影響があったんじゃないかと思ってるんですが、確証は無いので断言はしないで置きます。 |