でもってホンダ初のF-1マシン、RA271はこちらに移動して展示されてました。まあ、この方が今回の展示の主役ですしね。
やはり小さい、運転席の解放部が広い、車輪が細い、というのが印象的。この車については前回の旅行記で死ぬほど詳しく解説したので、今回は軽く流します。



運転席周辺にはゴム袋の燃料タンクが入ってます。ここなら前後の重心位置ですから、走行中にガソリンが減っても重量バランスに影響を及ぼさず、操縦性が悪化するのを避けれるからです。
写真で見えてる楕円形の銀色の蓋がその挿入口で、現地でマシンを組み上げた後、ここから丸めた六個のゴムタンクを押し込み、中で広げて給油口につなぐのです。さらに六個のタンクのパイプ接合もここから手を突っ込んで行ったようで、あまり整備性は良くないでしょう。

設計者の佐野さんの証言によると燃料タンクにゴムを使うというのは当時の国内では前例のない設計だったため、国内メーカーに適切な素材が無く、苦労したそうな。最後の最後、戦闘機の燃料タンク内部に使われていた自動封鎖(self sealing)ゴムなら使えそうだという事で、これを製造していた横浜ゴムから購入したのだとか。これは9層もの厚いゴムだったので2層にまで減らしたのですが、それでも1p近い厚さになっていたとされます。ちなみにこれ、当時国内ライセンス生産が始まったばかりのF-104 のモノだったそうで、そういった意味では最先端の素材ではあったのですが…。

ただし佐野さんによると、全燃料タンクを合わせてもレース距離を走り切れないサーキットがいくつかあったのに、それでもいいからとにかく走らせろ、という中村監督の方針でそのまま進めたそうな。実際、デビュー戦のドイツは完走扱いになってますが実は3周残してのリタイアでしたし、以後、この年は一度も完走してません。まあ、そういった車だったのです。



今回の展示ではエンジンフードとエンジン上部のキャブレター周りまで外された状態で展示中でした。おお、初めて見ました、この辺り。

まさに精密機械であり、そしてホントに横置き1500ccエンジンでも12気筒なんだなあ、と感心する(笑)。一気筒あたり125tですから、これもまたバイクエンジンの流れだなあ、という感じのする部分です。



こちらがRA271Eエンジン単体の展示。
これも前回はまともな写真が無かったので掲載して置きます。横置きであり、手前のギアボックスまで一体化された構造を見て置いてください。ああ、バイク屋さんのエンジンだ、という感じがそこはかとなく漂います(笑)。良い意味でも悪い意味でも冒険的なエンジンではあったのです。



エンジン単体の展示にはキャブレターと吸気周りもあり。ホンダが燃料噴射装置、インジェクションシステムを装備するのはもう少し先になります。

お猪口みたいな形のがシリンダーに空気を送り込む吸気筒、ファンネルで、基本的に短いほど高回転向きの構造になります(吸入される空気に慣性が付きにくい)。とはいえ、F-1エンジンでもここまで短いのは珍しい気がしますね。ホンダらしい部分ではありますが。

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