ちょっと渋い選択、アメリカの戦艦USSアリゾナ。これも1/192なんでFine Art Models 社製ですかね。

第一次大戦中の1916年に就役した艦ですから、第二次大戦時には旧式戦艦でした。まだアメリカ海軍がレーダーではなく目視と測距儀による海戦を考えていた時代の船なのでカゴ型マストと呼ばれる高い位置に置かれた見張りと戦闘指揮のための塔が前後に残ってます。

真珠湾攻撃で沈められた戦艦の中で唯一、引き上げが出来なかった戦艦で、今でも湾内で沈没したまま記念館にされています。ちなみに真珠湾攻撃で沈んだ戦艦の内、最後まで修理できなかったのはこのUSSアリゾナと、USSオクラホマのみでした。でもってオクラホマは浮上回収まではされてるので、事実上、撃沈で終わったのはこのUSSアリゾナのみとなります。ちなみに沈没扱いになった戦艦は他にUSSユタがありますが、これは訓練艦に改装されていてすでに戦闘能力はありませんでしたから例外でしょう。

真珠湾で撃沈、大破したはずの戦艦は、実はほとんどが後に修復されて戦線復帰していました。
これらは大戦末期の島嶼上陸戦における艦砲射撃に投入され、さらにUSSカリフォルニア、USSウェスト ヴァージニアは修理終了後、スリガオ海峡海戦に参戦、日本の西村艦隊をほぼ全滅させるのに貢献しています。

ついでに言うなら日本海軍は不意打ちだった真珠湾攻撃以外では、すなわちまともな海戦ではアメリカの戦艦を一隻たりとも沈めていません。よって沈めたのはUSSアリゾナとUSSオクラホマの二隻のみ、引き上げもできないほど完全に息の根を止めたのはこのUSSアリゾナのみとなります。そして、そもそもそれらは全て戦力的には微妙な旧式戦艦でした。…悲しい戦争ですな。



上から見るとこんな感じ。この世代のアメリカ戦艦は結構太めです。

大戦中の偵察機からの報告は、日米ともに戦艦と巡洋艦を見間違える事が多く、これが大混乱の元になってました。実際、横から見ると両者の違いは判りにくいですが、上から見ると高速巡行に向いた細い船体の巡洋艦、重装備に対抗する浮力を稼ぐ必要から太めになってる戦艦と、結構、はっきり違いが判る気がするんですが、素人判断ですかね。



こちらも渋いな、と思った第一次大戦期のドイツの戦闘巡洋艦、SMSリッツオウ(Lützow)。これも1/192でした。
頭のSMSはイギリス艦のHMSと同じような意味のドイツ語、Seiner Majestät Schiff 、“閣下の船”の頭文字。第一次大戦まではドイツは帝国だったので艦名にはこの文字が付きます。当然、皇帝なんて居なくなった第二次大戦期のドイツ艦には付きませぬ。

伝説のユトランド沖海戦は、当初、先行する英独の偵察艦隊同士が接触、並走しながら壮絶な砲撃戦を開始するのですが、この時のドイツ側の偵察艦隊の旗艦がこのリッツオウでした(後から続く艦隊本隊の旗艦では無いのに注意)。

この時はイギリス偵察艦隊の旗艦、HMSライオンに多数の命中弾を与えてますが、撃沈には至ってません。逆にリッツオウも後に命中弾を受けて航行不能となり、最後は総員退艦後、友軍の魚雷艇によって撃沈処分されました。



この時代の軍艦をよく見た事が無かったので、かなり興味深かったです。
第二砲塔の後ろがおそらく操舵室、その後ろの装甲で固めた円柱部が戦闘指揮所じゃないかと思います。砲塔横の四角いものは救命ボートですかね。

興味深いのは砲塔上の白い丸で、普通に考えると航空機からの識別用なんですが、この時代に海軍に攻撃機なんてありません。となると砲撃観測機用かとも思うんですが、同じくこの時代のドイツ海軍が着弾観測機を飛ばしていた、という資料は見つかりませんでした。

……宗教的なオマジナイ?

*****追記

ドイツ海軍が使用していた偵察用ツェッペリン飛行船対策ではないか、という指摘を読者の方からいただきました。


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