そしてこちらはドイツを代表する戦艦、ビスマルク。ちなみにこれも1/192ですから、Fine Art
Models製でしょう。
デンマーク海峡海戦でイギリスの戦闘巡洋艦(Battlecruiser)であるHMSフッドを速攻で沈めてしまった驚異の戦艦。 砲撃だけで巡洋艦以上の艦船を沈めてしまった戦艦はこのビスマルクとアメリカのUSSワシントン(霧島を沈めた)だけですから、大したものです。
低い艦橋からこの艦もレーダーによる砲撃戦を前提にしていたんだろうな、と思われます。アメリカやイギリスの戦艦とも微妙に雰囲気が異なりますが、欧米式のシルエットではありますね。
艦首と艦尾にあるハーケンクロイツは友軍の航空機からの誤爆防止のための識別用表示ですが、これ45度傾いてない、ただの逆卍なんですよ。同じドイツの艦でもティルピッツなんかはちゃんと45度傾いたハーケンクロイツになってるのに、ビスマルクは当時の写真で確認しても、なぜかハーケンクロイツではなく逆卍なのです。これも理由はよく判らず。ちなみにその周囲を灰色に塗ってしまってますが、実際はおそらく赤色が正解。
そして例によってこの情報密度。装甲艦橋の左右に飛び出した長い通路がキチンと再現されてますが、これが何のためのものなのか、未だによく判りません。巨大なタンカーなんかでは港湾での接岸時の誘導などでこういった通路の上に人が立って誘導してますが、軍艦ではあまり見た事が無いものです。
追記*****
ドイツ海軍の大動脈、狭いキール運河を通過する時の見張り用、とうの情報を読者の方からいただきました。
艦橋の上、測距儀の前にある黒い焼き肉用の網板のようなモノは射撃管制用レーダーのアンテナ。光学天国のドイツなのに、大和などに比べると測距儀が小さいのは、ドイツも既にレーダー砲撃戦に頼っていたからです。
ただし、最後の追跡戦の最中に、本国宛にこのレーダーは頼りにならん、とグチを打電してたりするので、その性能は微妙な所だったようですが。
ちなみにドイツ側ではこのビスマルク追撃戦の時までイギリスも射撃管制にレーダーを使っているとは知らず、戦闘中にこれを初めて探知して驚いています。実際は、高周波マグネトロンで優位に立っていたイギリスの方がすでに優れた射撃管制を行えるようになっていたのですが。
でもってこちらが、ビスマルクに速攻で沈められてしまった悲劇の船、戦闘巡洋艦 HMSフッド。この模型は縮尺の表示がなく、なぜか出来もイマイチでした。
ちなみにヨーロッパ海軍の軍艦に見られる艦種、Battlecruiser
は戦闘「巡洋艦」であり、戦艦ではありません。実際、イギリス海軍も、イギリス人のマニアも艦隊の編成でBattlecruiserを戦艦に数える事はありません。日本では巡洋戦艦という変な誤訳が長年、通用してしまっており、HMSフッドも戦艦だ、と言う変な誤解が生まれてますが間違いです。ちょっと原語で確認しようよ、と思う所ですね。ちなみに中国語では戦闘巡洋艦と正しく翻訳されてました。
その名の通り、主砲は15インチ砲(38.1p)
8門と戦艦並みに強力なんですが、高速性を得るために装甲は薄く軽量化されており、本来なら戦艦との正面からの殴り合いは避けたい船でした。引き換えに高速で巡行でき、最高速度は重量が増加した改装後でも30ノット、約56km/hと武装の割には高速でした。といっても生粋の巡洋艦に比べると鈍足ですから、どこか中途半端な船ではありましたが。
この艦がビスマルク追撃戦の初戦、デンマーク海峡戦に投入されたのですが、不幸な事にドイツのビスマルクとプリンツ・オイゲンの両者から一斉に狙い撃ちされてしまいます。まずはプリンツ・オイゲンからの第二斉射の砲撃の一発が艦中央部に命中、これで火災が起きたとこにビスマルクからの第五斉射が一発命中、これが薄い装甲を全て貫いて艦底にある主砲弾薬庫でさく裂、主砲用の装薬、あるいは弾頭の炸薬を発火させ、大爆発を引き起こします。この結果、ほぼ一瞬のうちにフッドは真っ二つに引き割かれて轟沈してしまったのです。
この時は大爆発のうえに一瞬で沈没してしまったため、生存者はわずか3名という悲劇となりました。ちなみに遺体すらほとんど発見されない、という不思議な沈没で、余りに急に沈んだため、ほとんどの乗り組員は内部に閉じ込められて脱出できなかったと見られています。
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