■その宗教

インドは宗教の国です。
仏教のタイ、道教の台湾などに匹敵するか、それ以上に日常に宗教が入ってました。



インド人の約8割はヒンズー教徒とされます。
中国の道教に似た、現生利益を追求する多神教です。
当然、基本は偶像崇拝ですね。

そして異常なまでの(笑)懐の深さを持つ宗教であり、あらゆるものを神にして信仰対象にしてます。
ちなみに、仏陀、イエス・キリストもヒンズーでは神の一人です(笑)。
特にキリストは人気の神様の一人で、写真の神様、これも人気のガネーシャと
コンビを組んで祀られている事が多く、ゾウの神様と一緒にポーズをとるキリストは、
世界広しといえども、インドでしか見れない光景でしょう。

ちなみにヒンズー教は紀元前のアーリア人がインドに侵入する際に持ち込んだバラモン教が
土着の宗教と結びついて形成されたものです。
このため、支配者のための宗教であり、悪名高いインドの終身身分制度、
カースト制はヒンズー教徒のものです。
つまりヒンズー教徒以外の人間はカースト制に組み込まれてないのに注意が要ります。

余談ですが、現地でkobikkyさんから伺った話だと、現代でもカースト制は影響が残ってるようです。
現地インド人の配属、特に部下上司の関係などはこれを無視でき無い事があるそうで、
このため、インド人の人事は、ある程度まで現地インド人の責任者に任せてるそうな。

ついでに、そのヒンズー教で一番偉いとされる支配者層、バラモン、クシャトリア階級などは
当然、アーリア人が独占しています。
アーリア人は要するにペルシャ人、イラン人(Aryan、アーリアン)と同じ人種ですから、
色白な人が多く、カースト内の結婚が普通だったせいか、
いまでもこの階級の人たちは、我々がインド人と聞いて想像するような感じではありませぬ。
イラン系の顔立ちが多く、街中で会っても、意外にすぐ判ります。
(多少は混血が進んでるのか、やや色の黒い人も居ないわけではないが)

ちなみに牛を神聖視する事でも有名な宗教ですが、実際は牛以外のあらゆる生き物の殺傷を嫌います。
中には蚊にさされてもこれを殺したがらない、という人もいるそうな。
このため、熱心な信徒はベジタリアン、菜食主義者である人が多いのも特徴です。
健康のためとか、ウサギの気持ちを判るため、といった生半可な理由ではなく、
命を奪ってまで食べたくない、という魂からのベジタリアンなのです。

ついでによくある誤解、ヒンズー教徒は牛を食べない、というのはイスラムやユダヤの豚肉禁止と
同じようなレベルで牛の神聖視を勘違いしたもので、
熱心な信徒は牛に限らず基本的にあらゆる肉食をしません。
これは魚を含むようですが、卵はオッケーらしいです(人にもよるみたいだが)。



が、17世紀以降になってからインドのほとんどを支配したムガール帝国はイスラム国家でしたし、
それ以前からもインド北部にはイスラム国家が存在してました。
このためインド北部はイスラム教徒が多く、インド独立の際は
北部のイスラム教徒が東西パキスタンとして分離独立したわけです。
(東パキスタンが現在のバングラディシュ)

が、インド国内に残った信徒も多く、現在でも総人口の12〜14%がイスラム教徒とされます。
特にムガールの首都があったインド北部、デリー周辺には信徒が多く、
見た感じの印象では、この一帯の人口比では、もう少し多いような気がします。
インドは隠れたイスラム文化圏でもあるのです。

ちなみに一神教であり、アッラー以外に神は無し、のイスラム教徒が他の地域に侵攻した場合、
大抵、現地もイスラム化されるのですが、インドの場合、特にムガール帝国の場合、
意外に他の宗教に寛容で、このためヒンズー教徒は今日まで北部インドでも生き延びています。
(ただし皇帝しだいで、この辺りの政策はコロコロ変わったらしいが)

極めて不思議な地域と言ってよく、同じような歴史を持つイランが徹底的にイスラム化したのと比べ、
なんとも不思議な感じがしています。
この辺り、キチンと調べればいろいろ興味深いのだと思いますが、そこまでする気力は無いのでした…
ただし、インド仏教がほぼ壊滅したのは、ヒンズー教に負けた、というより、
どうもイスラム国家の侵入の方が影響が大きかったようです。

ちなみに絶対神の前では全員平等ですから、カースト制度など知らぬ、通じぬ、がイスラム教です。
このため、カースト制度を嫌ってイスラムに改宗する、というケースも無くはないようです。
ただしムガール帝国などはその現地支配の手段として、カースト制を利用していたようなフシがあります。



インドと言えば、もう一つ、ターバン巻いたシク教徒が居ます。
ユダヤ、キリスト、イスラムに次ぐ、四番目の絶対神を崇拝する宗教ですが、
意外に数は少なくて、人口比だとせいぜい2%、キリスト教徒とほぼ変わりません。
ちなみにこの宗教も絶対神命ですから、カーストなど知らぬ、通じぬです。

ただしこれまたデリー周辺では意外に多く見たので、
地方差はかなりある気がします。
余談ですが、ロンドンのヒースロー空港では空港の職員にシク教徒が多く、
飛行機から荷物を降ろす作業員などがシク教徒だったりします。
このため、到着した飛行機から下を見てると、作業用の車両にターバン巻いた男たちがたくさん載って
飛行機に向かって来る、という光景が展開され、ええ、この飛行機、これからどうなるの?
と思ったことがありまする。

ちなみにこれもkobikkyさんから聞いた話ですが、シク教徒はお金持ちが多いそうで、
その総本山の寺院は金箔でキンキラキンなんだそうな。
写真はデリー市内のシク教寺院で、ここでは内装だけがキンキラキンでした。

他にもキリスト教、仏教、ジャイナ教、ゾロアスター教などの宗教があるのですが、
いずれも1%以下の少数派ですから、旅行記で触れるほどのものでは無いですね。


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