■ちょっと微妙な機体たち



ノースアメリカンF-107。
以前はYF-107とされる事が多かったのですが、最近の資料を見るとF-107が空軍の正式呼称で、
YF-107は一部のマスコミで使われていたもの、という事らしいです。
よって、この記事でもY抜きのF-107としておきます。

第二次世界大戦が始まった時はまだ駆け出しの新人戦闘機メーカーだったノースアメリカン社も、
大戦終了後は押しも押されぬ戦闘機の名門となっていたのですが、
残念ながらその遺作となってしまった戦闘爆撃機です。
1956年9月に初飛行、後にマッハ2超えの飛行にも成功しましたが、ライバルのF-105に敗北、
正式採用には至らなかったのでした。
以後、二度とノースアメリカン社製の戦闘機は制作されてません。

F-105がライバルという事から判るように戦術核爆弾の搭載を前提にした戦闘爆撃機でした。
このため胴体内に大きな爆弾庫を入れてしまった結果、エンジンの空気取り入れダクトを取り廻す余裕が無く、
その結果、コクピットの真後ろの上、という変な場所にこれを置いたとされます。
が、これだと緊急脱出時に吸い寄せられる恐れが強く、これがパイロットの不評を買って
F-105に敗れる原因の一つになったようです。
(ジェット戦闘機の吸引力はスゴイ。F-16などは雨の日に地上の水たまりから水を吸い込むことがある)

展示の機体は3機製造された内の2号機だそうな。



先にチラッとだけ触れたベルXGAM-63 ラスカル。
これまた空中から発射する空対地の核弾頭ミサイルでした。

ちなみに日本じゃラブリーなアライグマの名前にもなってるラスカルですが、
本来の意味はゴロツキとかチンピラとかそんなニュアンスですから、
ペットの名前には向いてないんじゃないでしょうか…
まあ、あれは原作者の責任なんですけど。

1953年には発射試験を行って、それなりの成功を収めた、とされるのですが、
射程距離がせいぜい100マイル(160q)とやや短く、実用性は低いと見られてました。
その結果、同時期に開発に成功していた例のAGM-28ハウンド ドッグ空対地ミサイルが
正式採用となってしまい(こっちは射程720qだ)、こちらはキャンセルされてしまってます。



リパブリック XF-91 サンダーセプター。
実はこれも直線翼F-84を基に開発された機体なのですが、
例によって原型をとどめてませんね…

補助ロケットとターボジェットエンジンを混載した高速迎撃機で、
通常のターボジェットエンジンの他、尾部に4発のロケットエンジンを搭載、
これによる加速でマッハ1.7前後と当時としては驚異的な速度で飛行が可能でした。
量産はされなかったので最初の超音速戦闘機にはなれませんでしが、これはF-100より早い記録です。

機首部が長いのは後から追加されたレーダードームのせいですが、
この機体、全天候型迎撃機には分類されておらず、
なぜここまで巨大な電子機器を積んだのかはよく判りませぬ。

試験でも成績は悪く無かったようですが、価格が高くなりすぎたようで、
最終的に計画はキャンセルされてます。



この機体、ごく初期の後退翼機でもあり、このためちょっと妙な構造を持っています。
この写真ではやや判りにくいですが、外側に行くほど主翼の前後幅(翼弦長)が伸びる、という
通常の主翼とは全く逆の構造になっています。
つまり主翼が胴体に接する根元部分の面積が一番狭く、翼端側が一番広いのです。

なんで?というと後退翼の特徴である翼端失速対策で、より大きな揚力を翼端で稼ぐようにして
これを防止する、という設計となってます。
(ピッチアップ対策、失速対策とも説明されるが、両者は翼端失速の結果起こるものだから同じ事)
が、当然、細い根元で主翼全体を支える必要から、構造的には不利で、
通常より頑丈に造る必要から、重量増にも直結してます。
この機体の主脚が車輪二つでやけに大きいのは、おそらくその辺りが原因の一つかもしれません。
(ただし主脚は胴体では無く主翼に収納)

後の機体では境界板を主翼上に付けたり、主翼前縁に切り欠きを付けて渦を起こし、
気流が翼端に流れるのを防げば翼端失速は簡単に防げる、と判明したため、
この妙な設計は以後、他の機体で採用される事はありませんでした。


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