■これも宇宙
ロッキード タイタン IV(4)Bロケット。
あまりに巨大な展示で、近くから見てると何が何だかよく判らんものの一つ。
ちなみに右側が上です。
前回見たICBM、タイタン IIから発展したタイタンロケットの最終進化型ですが、
左右にブースターロケットが付いてる、上の貨物室は異常にデカくなってると、
もはや原型は留めぬ進化をしています。
(タイタンIIIが最初の純粋な宇宙ロケットで、その進化型このがタイタンIV(4))
何度か書いてますがアメリカ空軍はカリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙基地のように
独自のロケット発射場を持っており、自力でバンバン衛星を打ち上げてます。
(極軌道以外の通常打ち上げならNASAと同じフロリダから打ち上げる)
その主力となったのがタイタンシリーズのロケットなんですが、大型でコストが高い事もあり、
2005年ごろまでには運用停止となってしまってます。
ちなみに巨大な打ち上げ可能重量を利用して、民間宇宙船も多数打ち上げており、
1997年10月に打ち上げられた土星観測宇宙船 カッシーニ、
さらには地球観測衛星のランドサットシリーズなどの打ち上げにも使われました。
まあ、それでも基本は軍用ロケットで、おそらく全打ち上げの8割以上は空軍用の衛星です。
参考までに私が知る限りでも、1980年代から冷戦終了の1991年まで、
空軍は年間平均で4機前後の軍用衛星を常に打ち上げてます。
日本のJAXAなんかよりもよほど強力な宇宙ロケットユーザーなのです、アメリカ空軍。
(ただし一つのロケットに複数の衛星を積むのも多いので、ロケット発射数とは一致しない)
マーティン マリエッタ X-24A。
1960年代に流行ったリフティング ボディ、胴体浮揚機の一つです。
空軍が主導して開発した機体で、1969年に落下自由飛行に成功、
1970年にはロケット動力を使った飛行にも成功してます。
ただし、あまり結果はよろしく無かったようで、1971年には早くも実験は中止になってます…
そもそも空軍はイマイチ、リフティングボディの理屈が判っておらず、NASAが設計を支援してましたし、
そして現在に至るまでもよく理解してないようで(笑)展示の説明は極めて適当でした。
リフティングボディは宇宙から帰還する機体として開発が始まったものです。
宇宙から地球に帰還する場合、着陸直前までのほとんどは超音速飛行ですから、
機体前面で生じる衝撃波を機体下面に誘導し、その高圧で機体を浮かす、というモノです。
(厳密にはもう少しヤヤコシイらしいが、大筋ではそうなる)
いわゆるウェーヴライダー、波乗り機の一種で、この場合の波は衝撃波となります。
ちなみに普通の航空機の翼は主翼上面に低圧部を作り出して浮くので、
下面に高圧部を造って浮く、というのは正反対のことをやってるのですが、
どちらも高圧部の圧力で上に持ち上げる、という点では同じ事になります。
邪魔な主翼を取り去ってしまえるので開発は容易になる、というのがメリットでしたが、
やはりその操縦は難しかった上、最終的に着陸するときの減速も難しいという事で、
スペースシャトルにはLERX付のデルタ翼が採用されてしまうのです。
そもそも着陸前には音速以下になっている以上、ほとんど揚力が無く、
進行方向への慣性の力だけで墜落を避けてますから(ピストルの弾みたいなものだ)
小型軽量なこの実験機などでも着陸速度は350q/h近かったとされ相当怖かったと思われます。
実際の宇宙船はさらに重い以上、もっと高速になったはずで、やはり無茶ではあったんでしょうね。
ちなみに展示機はいかにもそれっぽいですが、実はレプリカで(笑)、
マーティンマリエッタ社がX-24Aの飛行訓練用として開発していた
ジェットエンジン搭載のSV-5Jからロケット推進の本来の状態に改造したもの。
もともとX-24Aに近い機体から、マーティンマリエッタ社が自ら改造してるので、
その再現度は高いと思われますが…
何でそこまでしてX-24Aを再現したか、というと1機しか造られなかった機体は
その後、X-24Bというほとんど別物な機体に改造されてしまって現存しないから。
どのくらい別物かというと…
この位に。
完全に別物ですね。左奥に見えてるA型と同じ機体と言われても誰が信じるか、という感じですが、
とりあえずこれが発展型のX-24Bです。
ウソじゃないですよ(笑)、機首部の横にもそう書いてあるでしょ。
1973年初飛行ですから、2年で実験中止となったX-24Aをさらに2年かけて改造していた事になります。
ただしこれまた2年で実験は打ち切りになってしまうのですが、
空軍の主張によれば、後のスペースシャトルの設計に多くのデータを提供した、との事です。
この機体もNASAが開発に参加してますので、ありえる話かもしれません。
とりあえず上のX-24Aはさすがに無理がありすぎる、という事でもう少し常識的な設計に変更、
超音速以下、つまり着陸前後にも一定の揚力が得られるように平らな平面と、
機体周辺部の張り出し部を追加してます。
データを見て無いので断言はできませんが、ちょっとしたデルタ翼のようになってますから、
高迎え角を取った時に渦が発生して揚力を稼ぐ上に抵抗源としてブレーキにもなる、
というのを狙ってるような気がします。
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