■それは意外に多彩で
LGM-118A ピースキーパー。
ミニットマン
IIIの跡をつぐ最新ICBMとして1986年から配備が開始された弾道核ミサイルなんですが、
核軍縮条約START
IIの批准などにともない2005年までには全て退役済みとなってしまいました。
空軍で最初に低温式発射装置(Cold launch
system)を採用したICBMでもあり、
地下サイロからは高圧空気で打ち出され、
サイロから飛び出した後にロケットに着火されるようになってました。
これなら発射後もサイロが熱で破壊されないため、再利用が可能となったらしいです。
ちょっと変わり種なのがチェッカー模様が入ったこれ。
実は純粋な宇宙ロケットで、下の1段目は先に見たソー弾道ミサイルの弾頭部を外したもの、
上段部分はRM-81
アジェナ(Agena)ロケット装置を乗っけたもので、
アメリカ空軍はこれで世界初の偵察用人工衛星を打ち上げたのでした。
(いわゆるコロナ計画で、打ち上げ後の衛星の運用は主にCIAが担当)
アジェナロケット装置はスミソニアン旅行記でも登場してますが、誰も覚えて無いでしょうね…
これは2段目以降の上段部専用として開発されたロケットで、
アメリカ空軍が開発したアトラスミサイルや、このソーミサイルを下段ロケットとして打ち上げられるもの。
これを使えば弾道ミサイルを使って人工衛星の打ち上げが可能になる装置、と思っておけばほぼ正解です。
ちなみに打ち上げは、これも何度か取り上げてるカリフォルニアのヴァンデンバーグ宇宙基地から行われました。
偵察衛星ですから、極軌道で打ち上げられてるわけです。
ちなみに初期の偵察衛星の打ち上げは何度も失敗しており、どうも最初に成功した1960年8月の打ち上げが
最初の偵察衛星の打ち上げ日、となってるようです。
(ちなみに13号で初めてうまくいった、というアポロとは逆のパターンらしい)
ついでにスミソニアンの記事でも書いたと思いますが、コロナ計画当時にデジカメなんてありませんから、
宇宙空間からフィルムをカプセルに入れて地球に投下、パラシュートを開いて落下するそれを
飛行機を飛ばして空中で回収する、という豪快なシステムでした。
まあ、冷戦真っただ中ですからね…
SM-78(PGM-19A)ジュピター。
これも中距離弾道ミサイル(IRBM)で1960年から3年間だけ運用されました。
というかこれ、元々はドイツのロケットの星、フォン・ブラウンがアメリカに渡った後開発していた
陸軍の弾道ミサイル、レッドストーンで、これを空軍用に転用したものです。
これは国防省が中距離以上の弾道ミサイルは空軍の管轄とする、と決定したためで、
陸軍としては極めて悔しかったところだと思われます…。
ちなみに1958年1月にアメリカ初の人工衛星を打ち上げたジュノー1ロケットは、
レッドストーンミサイルから開発されてもので、実は陸軍が打ち上げております。
前にも書きましたが、アメリカ最初の人工衛星を打ち上げたのは、NASAじゃないんですよ。
とりあえず弾道ミサイルとして配備したのですが、射程距離は1500マイル(約2400q)と
ソ連を目標にするにはやや短すぎ、イタリアとトルコの基地に強引に配備したものの、
わずか3年の運用で引退することになります。
(ただしトルコの基地からの撤去はキューバ危機の際のソ連との取引条件でもあった)
しかし配備してすぐ撤去というこのパターン、弾道ミサイルでも巡行ミサイルでも
この時期のアメリカ空軍にはあまりに多い気がしますね。
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