■ソ連もヨーロッパもあり



ソ連の機体の展示もあり。まずは可変翼の戦闘機、
ミヤコン グレビッチ MIg-23MS。

2017年の2月に展示が始まったばかりの機体です。
ちなみにMig-25もこの博物館は持ってるんですが、今回の訪問では、まだ展示は始まってませんでした。
MSは海外輸出用の型で電子装置の性能がソ連国内で使われていたのより若干落ちたようですが詳細不明。

本来はMIg-21の後継機だったんですが、いつの間にか地上攻撃機にもなっていた機体。
高速性能を活かすための可変翼で攻撃機って何?って思ってしまいますが、
まあその点はアメリカのF-111も後で登場するトルネードも同じですからね…
個人的にはこの現象を可変翼の呪いと呼んでます。
この呪いに引っかからないで済みそうだったF-14も最後の最後で爆撃能力を付与されてますしね…

車輪に付いてるカバーは前線の不整備滑走路から運用を前提としたものらしいですが、
これむしろ泥がここに詰まってしまって危なくないんでしょうかね。
あるいは車輪の泥をこれでこそぎ落とす構造なのか。

ちなみにF-111に手を焼いてたアメリカ空軍関係者の一人が、
F-111の最大の功績は何でもアメリカの真似をするソ連にMig-23を造らせちゃったこと、
と言ってるのを見たことがあるので、まあ、そういう機体なんでしょう。
ただし、アメリカ空軍が実際にこのMig-23を入手して飛ばしてみた所、
意外に性能は悪く無く、後に評価はやや変更されたようです。
といっても傑作機というほどのものでは無く、機動性などではMig-21の方が上だったとされたみたいですが。

展示のMig-23はアメリカ空軍、海軍、海兵隊の共同秘密計画、
実際のソ連機を飛ばし、空中戦の訓練をするために使用された機体で、
どうも1970年代後半、ソ連と手を切ったエジプトから入手したもののようです。
機体の運用は空軍の第4477試験評価部隊(4477th Test and Evaluation Squadron)が行っており、
1977年から1990年ごろまでMig-17、Mig-21、Mig-23を使って空戦訓練を行っていたとされます。
(試験評価部隊という実際の任務と異なる名称はおそらく機密保持のためのもの)
この部隊は現在のアメリカ空軍が運用してる仮想的部隊、
アグレッサー部隊のルーツでもあるようです。



こちらはそのMig-23の後継機、ミヤコン グレビッチ Mig-29A。
冷戦真っただ中の1977年10月に初飛行したのですが、
その直後、11月には早くもNATOはその存在を掴んでいたそうな。

F-15、F-16という、制空性能、つまり空中戦の性能が強化された機体の登場に驚いたソ連が開発した戦闘機で、
同世代のSu-27と並び、ボイドのエネルギー機動理論の影響を受けた機体でもあります。
ただし海軍も空軍もSu-27の方を高く評価したため、やや日陰な存在になってしまった機体でもあります。
ついでにSu-27より小型なため、ミグ戦闘機にはお馴染みとも言える航続距離の短さ、という欠点を持つようです。

ソ連がどうしてエネルギー機動理論を知っていたのか謎ですが、
西側の航空ショーにデモフライトに来た当時のパイロットのインタビューなどを見ると、
明らかに重量とエンジン出力の比を強く意識してますから、知っていた、と考えるべきでしょう。
それでも最初から対地攻撃機としての運用が考えられていたので、
微妙に中途半端な部分があるのですが。
ついでにその登場はF-16より数年後ながら、当初はフライバイワイアの搭載も無く、この点は完全に旧世代機でした。
(後の改良型から搭載されてる)

展示の機体は初期型のA型で、ソ連で迎撃戦闘機として使われていた機体。
1986年、フィンランドで初めて行われた国外での公開デモフライトに使われた6機の中の1機でもあるらいしんですが、
どんな経路でこの博物館に持ち込まれたのかはよく判らず…。



イギリス、イタリア、西ドイツの三か国共同開発のパナヴィア トーネードGR-1。
1960年代の流行だった可変翼機ですが、この機体の場合、
1974年初飛行と、やや流行に後れた感じではあります。

この機体も開発は迷走し、そもそもは迎撃戦闘機だったはずが、攻撃機としても使われる事になり、
後の湾岸戦争ではイギリス空軍の主力攻撃機として参戦してます。

展示の機体は実際に湾岸戦争に投入されたイギリス空軍のもので、
2002年にこの博物館に寄贈されたのとの事。

NEXT