■火力は正義
ロッキードAC-130Aスペクター。
Aが頭に付いてる事から判るかもしれませんが、いわゆるガンシップ、大量の火器を横向き積み込んで、
上空で旋回しながら地上を射撃、敵の陸戦部隊を制圧するための機体です。
機首部に色々ついてるのは夜間襲撃のための航法用レーダーなどらしいです。
この機体の場合、武装は7.62oミニガンと20oヴァルカン砲(両方とも多砲身の高速銃)、
そして40o機関砲となってますが、同じA-130でもE型以降は
105o砲りゅう弾砲を横向きに積んでる機体があります…。
この手の機体としては、当初アメリカ軍の空飛ぶ軍馬、C-47を改造したAC-47があったのですが、
さすがにベトナム戦争時代では時代遅れで、このC-130からの改造機が登場する事になります。
1968年夏ごろからベトナムで実戦投入され、後に1991年の湾岸戦争でも使用されました。
写真の機体は湾岸戦争に派遣された機体の一つのようです。
余談ながら基になったC-130は自衛隊でも使ってるごく普通の輸送機ですが、
ご覧のような脚の短さから判るように、これも分類上は強襲輸送機(Assault
transport)だったりします。
ついでにプロペラのピッチ(回転方向の迎え角)を変える事で、地上で後進もできる、という
その気になれば縦列駐車も可能、というスゴイ機体でもあります。
フェアチャイルド リパブリック A-10A サンダーボルトII。
アメリカ空軍史上唯一の(笑)まともな陸上攻撃であり、同時に史上最強の近接支援機(CAS)となった機体です。
(陸軍から独立した後、空軍における最初で最後の対地攻撃機)
既に書いたように、ベトナムで空軍の対地攻撃能力のお粗末さに愛想をつかした陸軍が、
独自の固定翼(つまりヘリコプターではない)攻撃機を持とうとしたことが開発のきっかけでした。
当然、それは航空用予算の一部が陸軍に持っていかれる事を意味したため空軍は猛烈に反対、
最終的に陸軍は回転翼(ヘリコプター)以外の航空攻撃兵器は持たない、という決定を勝ち取りました。
勝ち取ったんですが、だったら責任もって陸上部隊の支援をやれよ、という事で
シブシブ造ったのがこのA-10だったと思ってほぼ問題ないでしょう。
そもそもアメリカ空軍が陸上攻撃機の開発、運用に真剣だった事は21世紀に至るまで一度も無いのです(笑)。
ところがその開発に、F-15とF-16開発で主導的な働きをしたボイド率いるファイターマフィアの主要メンバーの一人、
スプレイが関与してしまい、やる以上は完全を目指す彼はこれを傑作機にしてしまいます。
タフで修理も容易な構造、パイロットを徹底的に防護する装甲、そして無駄を省いて軽量、安価な機体、
というこれがアメリカ空軍の機体とは思えない傑作機となったのです。
ただしアメリカ空軍は採用まではしたものの、もともと対地攻撃何て興味がないので、
このA-10は冷や飯を食わされ続けます。
1972年5月に初飛行、1977年には部隊配備が始まったものの、
早くも1990年代には退役を予定してたと言われてます。
ちなみにパイロットからも人気は無く、この部隊に配備が決まった人物が
当時は心底がっかりした、といった証言も残ってます。
最高速度もレシプロ機並みの700q/hに過ぎなかったため、
「A-10では飛行中のバードストライクに気を付けろ、特に後ろからの追突に」
といった冗談まで空軍内では流布していたそうな。
ところが1991年の湾岸戦争で実戦投入されると、その評価は一変します。
どんなに攻撃を受けてもパイロットを守り抜く頑丈な装甲、長時間戦場に滞空可能な航続能力、
そして戦車を含むあらゆる敵を粉砕可能なその兵装から、地上部隊から熱狂的に歓迎され、
さらにその信頼性と操縦しやすさが改めてパイロットから高く評価されたのです。
当時の空軍の将官のひとりが、戦争に行く前はろくでもない機体だと思ったが、俺が間違っていたよ
といった証言をしてるのが、当時の評価をよく表してると思います。
この結果、空軍は退役を中止、以後21世紀に入るまで未だ現役、という機体になったのです。
F-15、F-16、そしてA-10を次々と生み出したファイターマフィアとジョン・ボイドという男の存在は
大したものだなあ、と改めて思いまする。
ちなみに展示の機体は湾岸戦争に参戦したものだとか。
A-10の主要武装である、GAU-8/A 30mm
ガトリング式砲、アヴェンジャー。
A-10のために開発された兵器で、当時の戦車の装甲までも撃ち抜ける高速連射砲として開発されました。
当たり所にもよりますが、T-62辺りまでの比較的脆弱な上面装甲なら実際、撃ち抜けたようです。
(逆に言えばそれ以外の箇所は撃ち抜けなかったらしい)
A-10の機首からはチョコンと砲身が出てるだけなので判りにくいですが、極めて巨大な兵器であり、
実際はA-10前半部、主翼前縁部辺りまでの殆どの空間がこれの搭載のために割かれており、
パイロットはバスタブ型の防護壁に入って、この上に乗っかてるような状態になってます。
開発は20oヴァルカン砲と同じGE(ゼネラルエレクトリック)社ですが、
共同開発でフィルコ フォード(Philco
Ford)社が参与したらしいのです。
ただしこの辺りの詳細は私は知りませぬ。そして調べるのも面倒なのでパス(手抜き)。
つーか、ホントに高速回転するもんならなんでも来いだな、GE社。
そのルーツは発電用の高速タービンで、そこから排気タービン、ジェットエンジン、
そして高速ガトリング砲まで造ってしまったんですから、どんな技術が商売のタネになるのか
簡単には想像できないのがアメリカです。
ちなみにヴァルカン砲というのはM-61A 20oガトリング式砲の固有名称であり、
この30oガトリング砲はアヴェンジャーの名称を持ちます。あまり知られてませんけどね…
ついでに何度か登場してる7.62oバージョンはミニガンという名が付いてます。
シコルスキー MH-53M ペーヴ ロウ
IV。
これも先に見たオズプレイと同じく、空軍の特殊部隊用に配備されたヘリコプター。
機首部に戦争でもやる気か、という感じのレーダードームと空中給油用の管が飛び出してるのが見て取れます。
コクピット後ろの窓からは7.62oミニガンが突き出ており、そういった任務に投入されるんだろうなあ、という感じです。
ベトナム戦争時代から使われていたHH-53ヘリを改造したもので、退役まで38年間飛び続けたのだとか。
その間に、1991年の湾岸戦争や2003年のイラク戦争に参加してるそうな。
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