■ベトナムの忘れ物



ちなみにF-111もこの博物館のお気に入りのようで、これまた3機あります。
こちらがベトナム編に次ぐ2機目、F-111のF型ですね。

F型は全天候型戦闘爆撃機が生きる道と決めたF-111のため、
レーダーを含む最新の対地攻撃用電子装置を搭載した機体です。
さらにエンジンが強化され、より強力な武装搭載のため、主翼構造も強化しているようです。

F型は1991年の湾岸戦争にも投入され、悪天候だろうが夜間だろうが確実に攻撃を行える
全天候型爆撃機として高い評価を得ています。
まあ、確かにその通りなんですが、再度書いて置くと、本来は戦闘機だったんですよね(笑)…



でもってこれが3機目、EF-111Aレーヴェン。

Raven(ワタリガラスの事だが漆黒の、といった意味もある)の
公式名称よりもFat tail、太尾の愛称の方が通りがいいと思われます。
Eの文字から判るように電子専用の機体で、戦術電子欺瞞機、最前線に出て敵のレーダーを潰す
電磁妨害機(Electronic jamming aircraft)としてF-111A型から改造された機体です。

ちなみに改造を担当したのはメーカーのジェネラルダイナミクスではなく、なぜかグラマン社でした。
(後に電子装置の強化改造を再度行った時はジェネラルダイナミクスも参加したらしいが)
電子戦用の装備を積むため、前輪からうしろの胴体下にアンテナ用の出っ張りが追加され、
ファットテイルの名の元になった垂直尾翼上のアンテナも追加されています。
これらの電子装置だけで4トンも重くなったとされてますから、相当な装備を積んでいたようです。

その複雑な電子装置を搭載できる大型機、さらに専任の電子操作員が乗れる複座の機体、という事で
F-111に改造母機の白羽の矢が立ち、使い道が無くなっていた初期の戦闘機型、
F-111Aが改造されたものらしいです。



でもってこの機体もB-58のようなカプセル式脱出装置が装備されておりました。
ただしF-111の場合、コクピット丸ごと射出される、というもので、このような形でボーンと撃ち出され、
このままパラシュートで地上まで落下して行きます。
実際はこの下に衝撃吸収用&水上で浮くための空気入りバッグがあったはず。

ちなみに他のジェット機と比べても、そこまで高速ではないF-111になんでこんな脱出装置が、
というとおそらく横並びの複座だからでしょう。
自動車の運転手席と助手席のように横に二人並ぶという変なコクピットのため、
緊急脱出時は完全なタイミングで同時に射出されないと、残った一人が
相方の脱出システムの噴射火炎で焼かれることになるからです。
このため脱出する時も君とずっと一緒だよシステムが採用されたものと思われます。

ちなみに展示のこれは、まだF-111がテスト飛行中に操縦不能に陥って脱出した時に使われたもので、
博物館の説明だと、唯一の使用例だと書かれてましたが、それは唯一の成功例、の間違いですね(笑)。
先にも書いたように、F-111は実戦投入から三連続出撃で行方不明になる
というとんでもないデビューを飾ってるので、この時の乗員も多分使用したはずで、
その上で生きて帰ってこれなかったのだと思われます。


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