■ベトナムにおける誘導弾
朝鮮戦争ではイマイチに終わったアメリカの誘導爆弾ですが、
ベトナム時代には一定のレベルに達し、一定の戦果も挙げてました。
まあ、ダメなのは相変わらずダメだったので、必ずしも大成功ではないんですけどね…。
完全な完成型になるのは1991年の湾岸戦争からでしょう。
その進化の例の一つ、レーザー誘導爆弾BOLT-117。
誘導爆弾は正規名称の頭文字を取る、という妙な伝統はまだ生きていて、
BOLTはBOmb
Laser
Terminl(レーザー端末爆弾)の略だそうな。
ただし、後にGBU-1に名称変更されてますけども。
世界初のレーザー誘導爆弾で、ベトナムではF-4ファントムIIがこれを搭載出来ました。
ちなみにアメリカの誘導爆弾らしく、これも本体は通常のM117 750ポンド(約340kg)爆弾で、
そこにレーザー誘導器具のKMU-342を取り付けたモノです。
そのKMU-342は例のシュライク空対地ミサイルから尾部の可動フィン部などを流用してるとの事。
1968年に実戦投入して試験され、十分な性能を示したとされますが、
間もなくより強力なGBU-10 ペーヴウェイが採用されたため、
どうも本格的にはほとんど使用されてないみたいです。
ついでにレーザー誘導というのは母機から目標に照査されたレーザーの反射を追いかけて突っ込むもので、
当然、反射するレーザーは常に目標を捕らえてる必要があります。
これはファントムIIの後部席に座った火器管制士官(Weapon
system
officer/WSO)の仕事で、
携帯式のレーザー照射装置を積んでゆき、これで爆弾が突っ込むまで照射を行います、。
ちなみにこれは投下する機体が自分でやる事もあれば、照準専門の機体が別に飛んでゆく事もあったそうな。
テレビ誘導爆弾、AGM-62 ウォールアイ。
ちなみにAGMはAir to Ground
Missile の頭文字なので、本来は空対地ミサイルの型番なんですが、
ウォールアイは無動力の滑空式爆弾となっています。なんでこの型番なのかはよく判らず。
頭に埋め込まれたテレビカメラで目標を捕らえて、これを機上の装置でロックして投下すると、
以後は自律誘導で自ら目標に向かって行きます。
テレビカメラの映像をモニタで見ながら手動誘導するわけではないのに注意。
ただし当時の技術ではいろいろ無理があり、くっきりしたコントラストで捕らえられる目標以外には使用不可で、
迷彩塗装された施設、カモフラージュされた陣地などにはまず当たらなかったとされます。
ちなみに1991年の湾岸戦争で投入されたのは、これの発展型のウォールアイ II
で、
誘導装置が進化した他、より大型の爆弾にもなっています。
AGM-12B ブルパップ A。
こちらはホントにAGM、空対地ミサイルで、発射した後は機上からリモコン操作で誘導するタイプのミサイルでした。
空軍ではF-100、F-105、F-4ファントムII で運用が可能だったとされます。
ちなみにおそらくアメリカ軍が最初に大量採用した対地誘導ミサイルですが、
これも開発は海軍によります…
AGM-78 スタンダードARM。
ARMはAnti
Radiation
Missile、対レーダーミサイルの頭文字を取ったもの。
ただし対レーダーミサイルという分類ですが、要は敵の対空ミサイルサイトを潰すためのものです。
アメリカ空軍が利用した敵の対空ミサイルを潰すための兵器としては、
前回紹介したシュライクミサイルがあったのですが、
これは短い射程距離、狭いロックオン範囲、目標記憶装置の欠如といろいろ欠点の多いものでした。
その欠点を埋めるべく開発されたのがこのAGM-78となります。
ソ連製対空ミサイル SA-2の射程距離外から撃ちっぱなしにでき、ロックオンした目標を記憶するメモリを積み、
さらに180度の広い範囲で目標を捕らえる事ができました。
この結果、敵がレーダーのスイッチを切ってもメモリに記録された座標を目指して飛び続け、
さらに必ずしも機体がミサイルサイトの正面を向いて無くても撃ち出す事が可能となってます。
1968年ごろから投入され、戦争末期のラインバッカー作戦などで本格運用されたようです。
ちなみにこれも開発は海軍でして、ほんとに使えねえな、アメリカ空軍、という感じですね。
ALQ-71 ECMポッド。
主翼下のパイロン、あるいは胴体下に取り付けて使用します。
ECMはElectronic
CounterMeasures、対電子機器の頭文字。
その名の通り、電子戦に使うためのもので、主に敵レーダーの目つぶしするのに使われました。
RF-101、F-105、F-4ファントムII などほとんどの機体でこれを利用可能であり、
最初はお守りレベル以下の効果しか無かったが、後になると一定レベルの信用が置けた、
と当時のパイロットは述べてますね。
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