■なぜかここに展示されてる機体たち

さて、といった辺りが朝鮮戦争の機体ですが、ここにはなぜか
無人機とステルス機、さらにはライト兄弟の機体まで、入り口付近に展示されています。
最後にそれらも紹介して置きましょう。

ただし、この辺りになると私にはよく判らんので、解説は最低限とします(手抜き)。



前回訪問時には無かった無人機YMQ-9 リーパー(Reaper)。
よく知られている米軍の無人機、MQ-1プレデターの後継機MQ-9の試作バージョンのようです。
2機だけ造られた試作型ながらアフガニスタンに送られて実戦投入されてるそうで、
その後、2009年にこの博物館で展示されるようになったのだとか。



こちらはジェットの無人機、YRQ-4グローバルホーク。
今回の記事を書くのに確認したら、これ、日本でも導入が決まったんですね。

1998年初飛行ですから、すでに20歳近い無人機です。なんか最近の機体、という印象が強いですけども。
ジェットエンジン搭載に、この高アスペクト比の主翼、という外見から判るように高高度の長距離飛行と
安全高度からの無人偵察を狙って開発された機体らしいです。
約2000qの後続距離を持ち、高度2万メートル(!)で24時間の持続飛行が可能だそうで、
そりゃスゴイ、という機体ではあります。
2万メートルだと、多段式の高高度対空ミサイルじゃないと、確実には落とせないんじゃないでしょうか。

展示の機体はその試作3号機だそうな。
でもって、これも試作機ながらアフガニスタンに持ち込まれ、実戦を経験してるとの事。
ちなみにオーストラリアからカリフォルニア州までの無着陸飛行にも成功してるらしいです。



おそらくこの博物館の展示機の中で、最強の異形の機体、
ボーイング バード オブ プレイ(Bird of prey)。
(Bird of prey=猛禽類だが、実際はTVドラマ スタートレックの宇宙船名から取ったもの)
展示機の社名はボーイングですが、実際の開発は吸収合併される前のマグダネル・ダグラス社でした。

マクダネル・ダグラスが自己負担の資金で勝手に作った技術開発機で、
このためX-あるいはY-形式の機体番号は存在しません。
ただし、こっそり別予算から空軍が資金援助していた、という話もあり。

それでも670万ドル、約7億円という1990年代の機体としては、
驚異的な低予算で開発されており、これはおそらくステルス軍用機における
史上最低予算記録ではないかと思われます(笑)。
下手をすると映画1本すら作れない予算で、ステルス機を開発して
飛ばしてしまったんですから、ある意味すごいですね。

ちなみに、予算削減の一環として、着陸用の脚は民間機である
ビーチクラフトのキングエアから流用してるそうな。
ついでに現在公開されてるボーイングの資料では、低コストで高性能な機体を設計する、
という試験も兼ねていた、という事になっています。
…モノは言いようだ。

ただし、そのボーイング社の資料によると、これはステルス技術の検証機ではなく、
Low-observable technologies、低観測性技術という名称の技術の実験機である、としています。
どうもレーダー電波、赤外線に加えて、薄くて小さいから、目で見る視認性も低い、という事らしいです。

1992年末ごろから計画がスタート、1996年の9月には初飛行にこぎつけてますから、
先行していた新型ステルス戦闘機、X-35(後のF-35)、X-36を完全にブッチギってしまっての初飛行でした。
軍が余計な口を出さないと、開発は順調に行く、という事なのかもしれません(笑)。

ちなみに、ロッキードのスカンクワークスに対抗して
マクダネル・ダグラスには幽霊製作所ことファントム ワークス(Phantom works)という
設計チームがあり、こういったステルス機の設計開発は、連中の仕事でした。
このチームも謎が多く、記録に登場するのはYF-23辺りからで(ただし公式にではない)
基本的に機密保持が必要とされる機体の開発に当たっているようです。

この折れ曲がった翼にうっすらと見えてるマークが(この写真では見えないに等しいが)
ファントムワークスのマスコットキャラ、ファントムさん(命名:私)ですが、
日本のマンガやらゲームやらでいろいろパクられた光る眼の三角帽子さん、
F-4ファントムIIのあの幽霊キャラ(本名:The Spook)ですね。



正面方向から見るとこう。
正直、どうやって三軸のバランスを取っているのか、そして操縦できるのか、全くわかりません。
胴体でもある程度、揚力を稼いでるのかなあ…。
飛行テストの映像が残ってるから、ホントに飛んだんだ、と納得できますが、
今でも半分くらいは、実は特撮フィルムじゃないのか、と思っております(笑)。



下から見るとこうで、これが飛んだとか言われても、普通は馬鹿にするなと怒って帰ってしまうんじゃないかと。
結局、1999年の試験終了後、2002年にボーイングはこの機体の存在を明らかにして、
空軍博物館に寄付してしまったんですが、実験データ、レポートの類は
未だ社外秘、ということらしく見かけません。
よって、どれだけのステルス性、そして低視認性だったのかは、よくわからないのです…。

ちなみに、アメリカ空軍博物館の資料によると完全手動操縦で、
フライ バイ ワイアは採用してない、としています。
ちょっと信じられませんが、事実だとすると、
見た目以上に実は安定性の高い機体なんでしょうかね。

ついでに飛行試験の動画を見ると、この胴体下後部、主翼の折れ曲がり部分に挟まれてる場所に、
小さい安定板がついてるはずなんですが、
この展示ではそれが見当たりません。
後に必要なしとして外されてしまったのか、それともウッカリ無くしてしまったのか、
どちらだかは判りませんが…。

NEXT