■これもドイツ



ドイツと言えばこれ、対空、対戦車に大活躍の88o FLAK 36。
ちなみにドイツの対空砲はドイツ語の対空砲の頭文字を取ったFLAK+数字の名前を持ちますが、
この88o砲は、18、36、37、41と複数の番号を持ちます。
最終型の41は500基前後しか造られず、初期の18も対空砲にはあまり使われてないので、
対空砲はなら36か37のどちらかと思っておけばいいのですが、ややこしいので、
通常は88o FLAKとだけ呼ぶことが多いです。

アメリカの戦略爆撃が飛ぶ高度8000m以上まで弾を届かせる事ができ、
(ただし1万メートルを超えるともう無理)
半自動化された装填装置により1分間に15発(4秒に1発)撃てました。
が、数で勝負の対空砲ではそれでは遅すぎ、このためドイツでは当初4門、
1941年からは6門、後に終戦間際には8門を1組にして一個中隊とし、
中隊全部で同一の目標に対して対空砲火を撃つシステムになってました。
すなわち個別に照準とかはやりません。

さらにその中隊は3個で一つの集団を造っており、
これがレーダーを持つ中央指揮所からの指揮にを受け、そこから指示されたとおりに撃つ事になります。
なので12〜24の対空砲が一機の敵に狙いをつけて撃ちまくり撃墜の可能性を上げるのです。
(この中央管制装置との連絡装置の搭載が36以降の特徴で、その機能が強化されたのが37)

ちなみに1942年のデータだと、ドイツの高射砲がアメリカの爆撃機を1機撃ち落とすのに
3300発以上の射撃が必要で、その中からようやく命中弾が出る、とされています。
となると1942年の対空砲陣地は18基が一つの単位でしたから、
各88mmが180発以上撃って、ようやく1機撃墜、となります。
つまり10分近く射撃を続けて、ようやく1機撃墜であり、相当な効率の悪さです。
それでもアメリカの爆撃機乗員から、88oは極めて恐れられていたので、
十分、割にあう数字だったのでしょう。



ここはちょっと珍しい88o砲の砲弾の展示もあります。
意外に小さい、でも微妙に持ちにくそう、という感じです。
半自動装填でなければ、面倒ではあると思います。
戦争後半には、これを戦車の中で人力で取り廻してたんだから、ドイツ人すげえ、とも思いました。

ちなみにこれ、黄色で塗られてるので恐らくHE弾頭、すなわち榴弾。
この色が黒いのが徹甲弾なんですが、そちらは基本的には対戦車用で、
対空砲ではこの黄色いのが主力だったと思われます。
薄い外板の爆撃機相手に徹甲弾使ったら、突き抜けて飛んでゆくだけですから。

ただし、この砲弾、弾頭部に時限信管が見えないので、練習用の模擬弾の可能性もあり。



でもって今回の驚き、88o砲の中央指揮所で照準手が使う計算尺。

…どうやって計算するんだこれ、という感じのもので、よくこんなので戦争やってましたね。
さすがはドイツ人。
当時のレーダーから判るのは目標までの距離だけなので、
高度と速度を知るには最低でも二回のレーダー計測と、
そこからの三角関数の計算が必要になるんですが、それだけならここまで複雑になるとは思えず、
各砲の迎角とかも計算してたのかなあ…。

私だったら、道の向こうからこんなの手に持ったドイツ人が歩いてきただけで、
土下座して謝っちゃいそうですが…。

ちなみに右上の7番は先に見たFlak38で使われてた20o弾。



天井からぶら下げ展示となっていたフィゼラー Fi156Cシュトルヒ

強い向かい風があればその場で離陸してしまう伝説がある多用途機ですが、
ぶら下げ展示で、脚が伸びた状態を観れるのがここの展示の特徴。
主脚が下にビヨーンと伸びており、この飛行状態のシルエットから、ドイツ語のコウノトリ、
シュトルヒの名が付いた、と言われてますが、どうなんでしょう、
私はコウノトリの飛行形態を見た事ないので似てるのか見当がつきませぬ。

展示の機体は北アフリカのロンメル機の塗装を再現してますが、
実際は大戦中にスウェーデンへ輸出された機体で、1948年に退役したようです。
ただしこの機体、妙な記録を持っており、1973年、この博物館に寄贈される前に、
ドイツのスーパーエース、撃墜数史上最多のハルトマンがアメリカに招かれ操縦したのだとか。
さらに、この博物館に空輸される時に操縦したのは、あの音速野郎、“チャック”イェーガーで、
なんかすげえ、という感じになっております。

そんな経歴を経て、1974年にカリフォルニアの退役軍人さんから寄贈された機体だそうです。



最後はこれ、昨年台湾でも見たイギリスの.ウェルロッド(Welrod)製32口径サイレントピストル。
第二次大戦時のアメリカの軍事情報機関、OSSも使ってました。
こうして見ると、台湾のも米軍が持ち込んだような気がするなあ…
ちなみに台湾編では3000丁が製造された、と書きましたが、ここの解説によると2800丁ではないか、との事。

「指パッチンと同じレベルの発射音」というキャッチコピーは初めて聞きましたが、そうなの?
ちなみに32口径だけでなく9oパラベラムバージョンもあったとの事です。
大戦中、ヨーロッパ中ので特殊部隊やレジスタンスが使ったそうで、展示のは
デンマークのレジスタンスが使っていたものとされています。

といった感じで、今回の本編はここまで。


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