■まだまだドイツ空軍



ユンカースJu88D-1。D型は長距離偵察型。
レプリカなどではない現存機としては、おそらく世界唯一の機体。
大戦中に連合軍に投降のため飛来して来たルーマニア人パイロットが持ち込んだもの。
つまり完全な状態で鹵獲された機体で、最初はイギリスが保有してたようですが、
飛行試験のためアメリカに渡り、どうもそのままこの博物館に入ったらしいです。

ドイツ空軍の軍馬とでもいうべき機体なんですが、あまりに普通過ぎて誰も保存しようとせず、
この結果、これしか残って無いという機体になってしまいました。
ちなみにドイツ機はそういったのが意外に多く、He-111、Bf-110なども
何処にでもあった普通の機体なのに、まともな現存機は1機しかありません。
むしろ大戦末期に少数生産されたジェット機の方がよく残ってたりするのです。

1936年12月初飛行と、大戦期の機体としては旧世代機なのですが、終戦までがんばった多用途双発機で
全部で約15000機と、ドイツの双発機としては最大の生産数を誇る機体でもあります。
そもそもは三度のジャガイモより高速機が好き、というユンカース社長の好みにあった
高速爆撃機だったのですが、それ以外にも急降下爆撃機、偵察機、夜間戦闘機と、
思いつくものは全部造ってみたんじゃないか、みたいな機体になってます。

機首下の出っ張りは銃手が乗るゴンドラで、あの後部が下にパカっと開いてそこが搭乗口になってます。
他にドアは無いはずで、脱出は結構、大変だったような気もしますね。
機銃は後ろ向きについていて、その機銃手が後ろ向きに寝そべってここに乗ります。
爆撃手がここに寝っ転がりながら爆撃照準をやるのではないのに注意。
爆撃手はゴンドラの上にある座席座って、ゴンドラの下の窓を見て照準する形になります。

ちなみに一見するとこの機体、空冷エンジンに見えますが、
これがドイツのユモエンジンの特徴で、実は輪っか状のラジエターをエンジン正面に積んでいるのです。
すなわちこれ、液冷エンジンなり。



ドイツの断末魔、有人ロケット戦闘機Me163B。
ついでに後ろのJu88、他にあまり見ない胴体が四角い断面になってるのも注目しといてください。

言わずと知れたヴァルターロケットエンジンを積んだ迎撃機で、
グワーッと上昇して、アメリカの戦略爆撃機に一撃だけ加えたら、さっさと逃げ去る、という兵器です。
そんな戦法でまともな空戦はできませんから、あくまで目標はB-17などの戦略爆撃機のみ、
このためそれらを一撃で仕留める事ができるように先に見たMk108  30mm機関砲を2門、
主翼の付け根に積んでいます。

ちなみに大戦末期の機体、という印象が強いですが、実は1941年に初飛行は済んでおり、
そこから実戦投入まで3年かかってしまったわけです。
ついでに主翼を始め、あちこちが木製の機体でもあります。
鼻先についてるプロペラはドイツが極秘で開発していたタケコプター…ではなく、
発電用のプロペラで、飛行中、必要な電力はこれで発電してました。

ロケット機という点ばかり注目が行きますが、
無尾翼で後退翼、というとんでもないデザインの機体でもあり、
おそらく実戦投入された機体としては唯一ではないでしょうか。
実戦投入されてなけばアメリカのXP-56が似たような事やってますけども
(ただし主桁は普通に正面を向いてるので翼面上衝撃波対策には全くなってない後退翼。
ジェット機世代の後退翼、そしてMe262の後退翼とは全く別物。
最大時速は950q/h前後で音速以下だが、翼面上衝撃波は発生する速度だ。
なので、どうやって操縦していたのか、全く見当がつかない)

ドイツなんだからデルタ翼にすりゃいいのに、と思うんですけどね。
安定性も、高速飛行性能も、はるかにマシになったと思いますよ。
鋭角デルタなら、迎え角デカくすれば渦が出ますから、
減速も揚力確保も同時に出来て、着陸はもう少し容易になったんじゃないでしょうか。



そのMe163のエンジン、HWKヴァルターロケットエンジン。
驚くほど小さなもので、これで最大推力約1.7t を発揮したのだから大したものです。
ただしMe163は離陸重量で4t近いので(木製であんだけ小さいのに意外に重い)、
エンジン推力だけで上昇はできません。

となると、やはり主翼の揚力で飛ぶ必要があり、なんであの後退翼で飛べたのか謎です。
時速900q以上というのは速度記録用の水平飛行で、通常の急上昇出撃ではもっと速度が落ちていた、
帰りもゆっくり降下しながら降りて来た説に一票。



これもドイツの秘密兵器、メッサーシュミットMe262A
まあ、あまりに有名で、リンク先の記事で一通りの解説はやってますので、ここでは詳細は省きます。
先にも書いたように、ドイツ軍機は当時普通にどの戦線でも見られた機体より、
こういった大戦末期の秘密兵器系のほうがよく残ってます。
なんかすごそうだから大事にしとけ、って感じなんでしょうか。
Me262も英米ではよく見れる機体の一つですが、ここのはコンディション的にイマイチな部分が多く、ちょっと残念。

終戦時にドイツで押収された機体で、1945年7月に飛行テストのためにアメリカに持ち込まれたもの。
その後も空軍が保管してたようで、1976年から3年かけて、
なぜかテキサス州のケリ―空軍基地の移動整備部隊がレストアしてます。
なぜ、そんな人たちに…という気がしますが、やってしまったものはしかたない。



フォッケウルフ FW-190D-9。
Me109に続く、ドイツの二代目主力戦闘機、Fw190の最終進化型ですが、
エンジンは水冷になってる、尾部は延長されてると、その外見は大きく変わってしまってます。
性能的に大きく改善されてるとされますが、この機体の時期だと敵はマーリンエンジンのP-51、
そしてスピットの最強バージョンMk.IX(9)ですから、正直、シンドイでしょう。

展示の機体はアメリカ軍が完全な状態で鹵獲後、試験飛行で使われたもので、
戦後、スミソニアンに寄贈された後、この博物館が借り受けて展示してるもの。
レストアをやったのが、スミソニアンなのか、この博物館なのか微妙ですが、
現存する液冷Fw-190としてはベストは状態を維持してる機体だと思います。


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