■魚雷はロマンでできている
お次はドイツの潜水艦用魚雷。
見学の人と比べると、いかに大きな兵器か、がわかると思います。
ドイツのUボート用魚雷は、だいたい7m前後の全長がありました。
ここではドイツ海軍が使ってた二種類の魚雷が展示されてまして、
左の白っぽいのが、主力と言っていい魚雷の一つ、電気モーター駆動のG7e。
ただしこれはその訓練用魚雷で、このため弾頭などは模擬弾頭で、火薬は積んでません。
それでも駆動用の電気モータは付いてるので、整備、装填、発射までは一通りできました。
最後は浮いて来るので、回収して再利用されます。
そして右の黒いのが、ドイツが誇った音波追尾魚雷、G7es
T-5ですね。
目標艦のスクリュー音目掛けて向かって行く、というものでしたが、理屈はすごいものの、
その精度はいまいちだったらしく、当時の潜水艦乗りの手記を見ても、あてにならん、と書かれてます。
ちなみにU-505はこれを3本搭載、うち1本を鹵獲された時に海防艦に対して発射してますが、
やはりという感じで(笑)、外れました…。
G7型を元に造られてますから、これも電気モーター駆動です。
電気モーターなら製造は簡単だし、コストも安く済み、しかも航跡を示す泡がでません。
ただ射程距離が7q〜5qと短かったものの、潜水艦の潜望鏡から見える水平線の距離はその程度ですし、
そもそも当たりにくい魚雷をそれ以上の遠距離から撃つのはバカげてます。
ドイツが日本から酸素魚雷の情報を得ながら(ちなみに最初に開発したのはイギリスだ)
、これを無視したのは、こんな面倒で高価な装置を積んでも意味が無い、と判断したからでしょう。
酸素魚雷では電気モーター魚雷に比べて、その利点は航続距離だけであり、
実戦でそんな遠距離から撃っても、半分も当たらん、というのがよく判ってたのだと思います。
弾頭部。
一応、信管らしいものが付いてますが、当然、ダミー…と思ったんですが、なんか変だな。
ひょっとして回収時に引っ掛けるフックか?
その前に付いてるのは距離測定用のプロぺラで、一定距離を走ると弾頭の火薬代りに積まれた空気タンクに
圧縮空気が流し込まれるようになっており、これで浮くようになってました。
赤白の変な塗装も、おそらく練習用のためでしょう。
後部は二重反転スクリュー。
1度角度がズレただけでも数q先では百メートル以上の誤差になってしまうので、
キチンと狙った航跡で進んでくれる直進安定性は重用で、トルクの反作用を抑え込む
二重反転スクリューは魚雷には必須でした。
ちなみに単純なモーター駆動なのにギアが噛まされてるのは、一本の駆動軸で二重反転スクリューを回すため。
でもって、こちらが音波探知魚雷の弾頭部。
ここに弾薬は無く、水中聴音器が入ってました。
理論上は(笑)極めて敏感なセンサーなので、発射した母艦を追尾してしまわないよう、
発射後、400mほどはこの聴音機は作動しないで進みます。
(さらに発射後はより深い深度に急速潜航し、モータを切る、あるいは低速に切り替えて騒音を抑えたらしい)
その後ろのここが弾薬部。
信管は接触式、ぶつかって爆発するのと、磁気感応式、接近を感知して爆発するのが
両方、搭載されていたようです。
尾部。
当然、こちらも二重反転スクリューです。
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