■試しに購入してみたブラザーズ



TH-115 デ・ハビランド ヴァンパイア。
なんとイギリス機の登場です。ここの目玉の一つでしょう。
少なくとも、アジアの博物館では他に無い機種ですし、
アメリカあたりでも、私は一度しか見た事ないです。
まあイギリスやフランスに行くと、普通にありふれてますけどね(笑)。

当然、自衛隊は採用してない機体ですが、
1956年1月に1機だけ、国産練習機開発の研究用として購入したものです。
1960年まで、岐阜基地の実験航空隊(現 飛行開発実験団)が試験してたようですね。

ちなみにヴァンパイア T -Mk.11じゃないの、と思ったんですが、
輸出用の機体は名前が変ってTH-115になるんだそうな。



後ろか見ると、なんとも変わった機体という感じがします。
こうなったのは遠心圧縮エンジンの排気口をなるべく短くするため、
胴体を短くしてしまう、という豪快な設計によるらしいです。

右上に見えてるのが、そのゴブリンエンジン。
これがジェットエンジン?という感じですが、イギリス、アメリカの初期のジェットエンジン、
(あとソ連も)遠心圧縮エンジンは全てこんな感じです。
そういった意味では、現在のジェットエンジンと同じ構造を持つ
軸流式の圧縮をユモ004の段階からやってたドイツってすごいよね、と思ったり。

この機体はほぼ第二次大戦中に開発されたジェット戦闘機の練習型で、
教官と生徒の2人が横に並んで座る並列型の座席になってます。
日本の航空自衛では、複座機のほぼ全てがT-4のような縦並びの直列(タンデム)座席なので、
何か変った印象を受けますが、アメリカのF-111などを始め、
世界的に見れば意外に多いタイプの座席配置です。

ちなみにP-51の設計責任者、シュムードが戦中にイギリスに情報収集に行った際、
既に現地でこの機体の原寸大モックアップを見てますから、1956年当時としても
決して新しい機体ではありませんでした。

そもそも、この機体、写真では判りにくいですが、機首部、コクピットから前は
木製、一種のべニア製だったりします(笑)。
木製機が得意なデ・ハビランド社らしいですが、なぜジェット機で…
という気はしなくもなくも無く…。
まあ、ドイツのHe162とかもほぼ木製という豪快な内容ですが、
あれは大戦末期の断末魔ですから、理解できるんですけどね。



こちらが、そのゴブリンエンジン。
遠心圧縮のため、饅頭みたいな形になってます。
遠心圧縮ジェットエンジンについては、また後で少し詳しく見ます。

ちなみにあくまで“聞いた話では”ですが、試験機とはいえわずか4年しか使われなかったのは、
整備中にエンジンの中に部品を落としてしまったのがどうしても見つからず、
次にエンジンを回したら破損の危険が出て来たため、以後、飛行中止になった、という話もあり…。



ノースアメリカンがT-6の後継として開発したT-28B トロ―ジャン(Trojan)。
トロ―ジャンはトロイア人の事ですが、T-6のテキサス人(Texan)からいきなり既に滅亡した国、
古代トロイアに名前が飛んだのは、練習機を示すTの頭文字にノースアメリカン社がこだわったから(笑)。
まあTrojanには勇者、というニュアンスもあるんですが、これは後付けの理由でしょう。

妙に縦に間延びした胴体は、機首の星型エンジン下に前脚を付けてしまったため、
この収容スペースを稼いだ結果でしょう。

世界中の航空博物館の常連さんの一人ですが、
これも自衛隊では正式採用はされておらず1956年の研究用購入の1機です。
こちらは試験終了後は偵察部隊の訓練用に使われたそうな。



B型はエンジンをR1820の1425馬力に出力向上させた機体。
大戦中の戦闘機並みのエンジンですから、
後にこれを攻撃機に改造したものなどが登場する事になります(主に輸出用だが)。

が、そんな大型エンジンを積んだ上に前輪まで付けてしまった結果、
ご覧のようにオイルクーラー部は機首斜め下、という変な位置に付くことに。
よってこの機体、正面から見ると左右非対称です。

ちなみにこの機体のカウルフラップと排気管処理はかなり工夫がされてるんですが、
今回、そこまで脱線してる余裕はないので、解説はパス。

NEXT